ふざけた読書 関連リンク

豊島 与志雄 のオススメ作品

作家別索引

作品別索引

ふざけた読書 - 豊島 与志雄 ( とよしま よしお )

  • 読書の時間によむ本  中学1年生☆冬休みの読書にも!
  • +小林信彦 地獄の読書録 即決 文庫第1刷 書評 ブックガイド
  • 「植草甚一の読書誌」シリーズ植草甚一倶楽部
  • ♪♪耳で読書 音訳mp3「蜘蛛の糸」ダウンロード販売 即決!♪♪
  • ★切手可 またたび読書録 群ようこ 新潮文庫★
  • 偕成社 すてきな三にんぐみ 読書 絵本 読み聞かせ 1円~
  • ☆☆もう一度、人生がはじまる恋 恋の読書案内 齊藤 貴子☆☆
  • 『 山口瞳 / わたしの読書作法 』 河出書房新社
  • ◆新品◆LEDベッドライト 白 [長寿命] LE-H222 読書に!《税込》
  • ◆新品◆LEDベッドライト 白 [長寿命] LE-H222 読書に!《税込》
次のページ
 某氏ある時、年賀状返信を書いていた。固より、こちらから先に賀状を出すような人ではない。受取ったものに一つずつ返信を書いてゆくのである。然るに賀状の中には、往々、姓名だけで住所のついていないのがある。某氏は遂に筆を投じて、歎息して云う。「住所書きこむくらいの配慮はしておいて貰いたいものだ。人に返信を書かせるばかりか、名簿をくって住所を探し出すの労をもとらせる。こんなのは却て礼を失するものだ。」
 そういう気分の時には、賀状を書くべからずである。

 某氏ある時、数冊の寄贈書の中から一冊を選び、炬燵かなにかにあたりながら、その書物を覗こうとすると、折り畳みのまま裁断してないものだった。彼はその紙をぱらぱらとめくって、歎息して云う。「書物の縁を裁つくらいの配慮はしておいて貰いたいものだ。人にわざわざ読ませるばかりか、頁を切るの労をも取らせる。こんなのは読者に親切な所以ではない。」
 そういう気分の時には、書物読むべからずである。

 縁を裁たないもの、フランス式の仮綴の書物は、昔は甚だ少なかった。現在では非常に多くなった。高価な贅沢なものには殊にそれが多い。――そういう書物の頁を、読むに随って切ってゆくことが、得も云えぬ楽しみだった時代がある。またそういう年齢もある。(雑誌については、読むところだけの頁を切ることが、いつも変らぬやり方らしい。)けれども、読むに随って頁を切ってゆくことは、よほど堅固な製本のものでなければそれに堪えない。また物によっては、それは興味を減損することもある。
 更に、某氏の言がある。「僕は縁を裁たない書物なら、一度にすっかり頁を切ってしまう。それから先ず扉を見、序文があればそれを読み、次に奥付を見、跋があればそれを読み、そして徐ろに、全体の頁をぱらぱらめくってみる。そういう風にして書物を眺めたり弄ったりしてるうちに、大体の内容は一通りのみこめる。それによって、精読すべきかどうかを決定するのだ。」
 これは、少々ひどすぎる。書物をもてあそんでるうちに、その内容がいくらか分ってくるということのうちには、非常危険錯覚が交ってるのは、常識によっても明かである。一つの著述が種々の体裁の書物として出版されている場合には、どうなるであろうか。要するに、目にふれただけの文字とその可能延長の範囲内に於てしか、理解されてはいないのである。

 某氏ある時、一冊の長篇小説を取上げ、作者が何を本当に云いたかったのか、手取り早く知るために、先ず最後の一章を読んだ。さっぱり分らない。次にその前の一章を読んだ。少し興味が持てる。次にその前の一章を読んだ。面白い。次にその前の一章を読んだ。つまらない。変だなと思って、更にその前の一章を読んだ。……かくして、某氏は遂にその小説を一章ずつ逆に読んでしまったのである。――読後の感想を聞いてみると、極めて正しいそして鋭い意見を述べた。筋の興味に甚だしく引きずられる小説や、筋の興味が殆んどない小説などは、こういう読み方をするのもよいかも知れない。
 一読してすぐ理解されるようなものはつまらない、とは多くの読書家の持論である。順に読んでも逆に読んでも、それに堪え得るような書物は、感想集や日記の類ばかりでもなかろう。
 然し、読書の真の楽しみは、書かれている文字だけを辿ることではないらしい。行と行との間をも味読するということは、そういうところから起ってくるのであろう。更に、如何なることが云われてるかが問題でなく、誰がそれを云ったかが問題だ、ということになると、つまり真意が問題になると、一層むつかしくなってくる。人間パラドックスは、あらゆることが云われてるが何一つ理解されていないことだ、とアランは書いている。


次のページ

豊島 与志雄 (とよしま よしお) 以外のオススメ作品

ふざけた読書 (ふざけたどくしょ) のリンク元

「ふざけた読書-豊島 与志雄」の関連ページ


関連ページ
Web Services by Yahoo! JAPAN