ジャン・クリストフ 05 第三巻 青年 関連リンク

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ジャン・クリストフ 05 第三巻 青年 - ロラン ロマン ( )

  • ソングライター ウィリーネルソン クリスクリストファーソン
  • ●新品●コミュニオン 遭遇 主演:クリストファー・ウォーケン
  • 廃盤●ジェニファー8●音楽:クリストファー・ヤング
  • 「フランス・クリストフル 銀仕上 重厚な ペーパーナイフ」 箱付
  • ★ジャンクリストフ3/ロマンロラン豊島与志雄昭和38年岩波文庫
  • ★ジャンクリストフ2/ロマンロラン豊島与志雄昭和37年岩波文庫
  • ★ジャンクリストフ1/ロマンロラン豊島与志雄昭和37年岩波文庫
  • ★ジャンクリストフ8/ロマンロラン豊島与志雄昭和38年岩波文庫
  • SAINT CHRISTOPHER セントクリストファー☆アンクレット☆ピンク
  • 【映画パンフ】スーパーマン3/クリストファー・リーブ
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ジャン・クリストフ JEAN CHRISTOPHE 第三巻 青年 ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳      一 オイレル家  家は沈黙のうちに沈んでいた。父の死去以来すべてが死んでるかと思われた。メルキオルの騒々しい声が消えてしまった今では、朝から晩まで聞こえるものはただ、河の退屈な囁(ささや)きばかりであった。
 クリストフ執拗(しつよう)に仕事のうちに没頭していた。幸福になろうとしたことをみずから罰しながら、黙然として憤っていた。哀悼の言葉にもやさしい言葉にも返辞をしないで、傲然(ごうぜん)と構え込んでいた。日々の業務に専心し、冷やかな注意稽古(けいこ)を授けた。彼の不幸を知ってる女|弟子(でし)たちは、彼の平然さに気を悪くした。けれども苦しみを多少経験したことのある年上の人たちは、そういう外見上の冷淡さが、少年においてはいかなる苦悶(くもん)を隠してることがあるかを、よく知っていた。そして彼を憐(あわ)れんだ。しかし彼は彼らの同情をありがたいとも思わなかった。また音楽さえも、彼になんらの慰謝をも与えなかった。別に喜びの情をも感じないで、義務のようにして音楽をひいていた。あたかも彼は、もはや何事にも興味をもたないことに、もしくはそう思い込むことに、生存理由をすべて失うことに、それでもなお生存することに、ある残忍な喜び見出してるかのようだった。
 二人の弟は、喪中の家の沈黙に慴(おび)えて、急に外へ逃げ出してしまった。ロドルフはテオドル伯父(おじ)の商館にはいって、伯父の家に住んだ。エルンストの方は、二、三の職についてみた後、マインツとケルンとの間を往復してるライン河の船に乗り込んで、金のほしい時ばかりしか顔を見せなかった。それでクリストフは母と二人きりで、広すぎる家に残ることになった。そして収入の道もわずかだったし、父の死後にわかった若干負債をも払わなければならなかったので、つらくはあったがついに決心して、もっと質素な安い住居を捜そうとした。
 二人は小さな住居見出した――市場通りのある家の三階で、二、三の室があった。そのあたりは騒々しく、町のまん中になっていて、河や樹木や、あらゆる親しい場所から、だいぶ隔っていた。しかし感情よりも理性に従わなければならなかった。そしてクリストフは、苦しみたいという悲痛な欲求を満たすのにいい機会を得た。そのうえ、家主(いえぬし)のオイレル老書記は、祖父友人で、クリストフ一家の者を知っていた。ルイザは、がらんとした家の中にしょんぼりしていて、自分の愛した人々のことを覚えていてくれる者をたまらなく懐(なつか)しがっていたので、右の一事ですぐそこに住もうと心をきめた。
 二人は引越しの仕度(したく)をした。永久に去ろうとする悲しいまた懐しい家庭で過す最後の日々の苦(にが)い憂愁を、彼らはしみじみと味わった。心の悲しみを言いかわすこともほとんどできかねた。それを口に出すことが、恥ずかしかったしまた恐ろしかった。どちらも、心弱さを見せてはいけないと考えていた。雨戸を半ば閉めた侘(わび)しい室で、ただ二人で食卓につきながら、高い声をするのも憚(はばか)り、急いで食事をし、顔を見合わすことも避けて、心痛の情を隠そうとばかりしていた。食事が済むとすぐ別々になった。クリストフはまた仕事に出かけていった。しかしちょっとでも隙(ひま)があると、家にもどって来て、ひそかにはいってゆき、自分の室か屋根裏かに、爪先(つまさき)立って上っていった。そして扉(とびら)を閉め、古い鞄(かばん)の上や窓縁の上など、片隅(かたすみ)にすわって、そのままじっと何にも考えないで、少しの足音にも震えるような古い家のそれともない物音に、心を浸すのであった。彼の心もその家のように震えていた。家の内外の空気流れ、床板の軋(きし)り、聞きなれたかすかな物音、それらを気懸(きがか)りそうに窺(うかが)った。どれにも皆聞き覚えがあった。彼はぼんやり意識を忘れて、頭には過去面影が立ち乱れていた。サン・マルタン会堂の大時計の音が聞えると、惘然(ぼうぜん)としていたのから我れに返って、また出かける時間であることを思い出すのだった。
 階下(した)には、ルイザの足音静かに行ったり来たりしていた。幾時間もその足音の聞えないことがあった。彼女は何の物音もたてなかった。クリストフは耳をそばだてた。大きな災いの後には長く不安が残るが、やはり彼も多少不安な気持で、階下に降りて行った。扉を少し開いてみると、ルイザはこちらに背を向けていた。戸棚(とだな)の前にすわって、まわりに種々な物を取り散らしていた。襤褸(ぼろ)や、古着や、半端な物や、形見の品などで、片付けると言っては取り出してるのだった。彼女には片付ける力も失(う)せていた。ひとつひとつの物が皆何か思い出の種となった。


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