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スワデシの誓 - ガンジー マハトマ ( ガンジー マハトマ )

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エム・ケー・ガンヂー 福永渙訳        一  現今印度大衆を皷舞しつつあるスワデシ希望は、あらゆる讃辭に値ひするが、彼等はそれが實行の途上に横はつてゐる困難を十分に認識してゐないやうに私は思はれる。誓ひはいつでも成就の困難でない事柄に關してのみなさるるものだ。何事かを爲さんとして、努力を續けた後で失敗する時、これを成就せんとの誓ひを立て、背水の陣を布くならば、吾々はその誓ひから釋放され得ないから、失敗を避けることが出來るのである。かかる斷乎たる決心に達せざるものは、誓ひと呼ぶことが出來ない。吾々が何事かを爲す場合に、出來るだけやつて見ようと云ふのは誓約でもなければ誓言でもない。スワデシの條件を出來るだけ守らうと云へば、スワデシの誓ひを立てたことになるのなら、總督から勞働者に至る大勢の人民の中で、スワデシの誓ひを立てないものは極く少數となるであらう。しかし、吾々はかかる範圍を拔け出して、一層高い目的を目指したいのだ。吾々が考へるやうな行爲と、上に述べたやうな行爲との間には、直角鋭角の相違のやうに大變な相違があるのだ。そして、吾々がこの精神をもつてスワデシの誓ひを立てるならば、大なる誓を立てることは、ほとんど不可能に近いことが明かとなるであらう。
 長年の間この問題に關して熟考した結果、私が自ら完全に論證し得ることは、吾々は吾々の衣服に關してのみ――木綿、絹、毛織物の如何を問はず――十分なスワデシの誓を立て得るといふことである。この誓ひを守るに當つても、吾々は初めの間は多くの困難に出遭はねばならぬのであつて、それは當然のことである。
 吾々が外國製織物を擁護するのは、深い罪を犯すことになるのだ。農業に次いで重要なる職業を吾々が見棄てたので、吾々はカビール印度聖典中の詩人にして紡織者)がそれがために生れ、それを潤飾したところの職業大分裂と面接しなければならぬのだ。
 私の考へによれば、スワデシの誓ひは、この誓ひを立てることによつて贖罪を爲さんとする吾々の希望や、ほとんど失はれたる手織機業の復興を計らんとする吾々の希望や、毎年外國製布との交換によつて失はるは印度貨幣一千萬ルピーの節約を計らんとする吾々の決心を意味するのだ。かかる大なる目的は、困難を伴はずには達せられないし、當然その途中障碍があるのだ。容易に手に得られるものは、實際に價値のないものである。その誓約を守ることがいかに困難であつても、吾々がわが國を十分向上せしめんと欲するならば、いつの日かその誓約をなさずにはゐられないのである。そして、純國産の衣類のみを用ひ、外國製布を用ひざることが宗教義務であると思惟する時に、吾々は初めてこの誓ひを果すのだ。
        性急な擴張
 友人たちは私に向つて、現在吾々は國産織物のみをもつて吾々の需要を充すに足りないし、現在工場は僅少で、この目的に應ぜられないと云つてゐる。私は、それは性急な擴張であると思ふ。スワデシ契約者が三億人出來るといふやうな幸運を吾々は期待し得ない。樂天家でも二三十萬人以上を期待することが出來ないのだが、私はそれ等の人々に國産織物供給することは困難でないと思ふ。しかし、宗教上の點を問題にすれば、勿論それは困難である。
 印度一般の氣候では、薄着でも差支へないのである。中産階級人口四分の三は、必要のない衣服を澤山着てゐると云つても、誇張ではないのだ。且又、多くの人々が誓ひを立てるならば、紡車や手織機が澤山作られるであらう。無數の織布者が印度に出來るであらう。彼等はただ激勵を待つてゐるのみである。重要な事が二つある、即ち克己と正直である。誓約者がこの二つの性質を有たねばならぬことは云ふまでもないが、人民をしてかかる大誓約を比較的容易に守るを得しむるために、わが商人たちもかかる性質に惠まれてゐなければならぬ。正直な克己心ある商人は、印度の綿からのみ絲を紡ぎ印度の絲からのみ織物を織るであらう。彼は印度製の染料をのみ用ふるであらう。人は何事かを爲さんと欲する時は、その道程に横はる困難を除去するに必要な能力を養成するものだ。
        すべての外國製布を破棄せよ
 吾々は成るべく僅かの衣類で濟ますだけでは十分でない。この誓ひを完全に守るには、更に吾々の所有するすべての外國製布を破棄する必要がある。若し吾々が、外國製布の使用が誤りであること、それが印度に莫大の損害を與へたこと、織布者の階級をほとんど滅したことを會得するならば、かかる罪惡の穢れに浸みた織物はこれを破棄するのほかはない。この點に關して、スワデシとボイコツトの區別を理解する必要がある。スワデシ宗教的な觀念である。それはすべての人に課せらるべき當然の義務である。スワデシの誓ひを懲罰、若くは復讐精神ととつてはならぬ。スワデシの誓ひは、外面的な幸福目的とするものではないが、ボイコツトは全然世間的な、政治上の武器である。ボイコツトは惡意と責罰の願望に基くのだ。そして私は、ボイコツトに依願する國民は終局に於て損害を受けるほかないと思ふ。永久に|眞理の把持者(サチヤグラハ)たらんと欲する者は、いかなるボイコツト運動にも參加し得ないのであつて、|眞理の把持(サチヤグラハ)はスワデシなくしては不可能である。私の考では、それがボイコツトの意義であると思ふ。從來の意見では、ローラツト法案が撤去せらるるまでは英國製品をボイコツトしなければならぬのであつて、同法案の撤去と同時にボイコツトは終結すべきやう考へられてゐた。かかるボイコツトの計畫では、日本や他の外國の製品は、たとひそれが品質の惡いものでも、これを用ひてもいいことになつてゐる。外國製品を用ふべきであるとすれば、私は、英國政治的關係をもつてゐるのだから、英國製品のみを用ひるであらう、そしてその行爲を正當だと考へるだらう。
 英國製品のボイコツトを宣言する以上、吾々は英國人を罰したいといふ願望をもつてゐると云はれても仕方がないのだ。しかし、吾々は英國人と爭つてゐるのではない。


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