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ソヴェトの芝居 - 宮本 百合子 ( みやもと ゆりこ )

  • 古書≪森鴎外集≫7 青年、舞姫他 【 森鴎外】河出書房 貴重 初版
  • 「森鴎外私論」吉野俊彦 森鴎外評論-批評-書籍・10冊 N21681
  • 岩波文庫1675昭和41年/阿部一族他二編森鴎外 岩波書店
  • 600円~ 岩波文庫【青年】森鴎外 (プチソフト1)
  • ◆◇森鴎外著「舞姫・山椒大夫  他四篇」(旺文社文庫)◇◆
  • ◆◇ 森鴎外著「青年」(新潮文庫) ◇◆  名著! 
  • ◆◇森鴎外著「舞姫・うたかたの記  他三篇」(岩波文庫)◇◆
  • ◆新品DVD★『NHK 名作の風景 8』森鴎外 正岡子規 夏目漱石1円
  • 森鴎外 高瀬舟・高瀬舟縁起・寒山捨得・寒山捨得縁起 CD 未開封
  • 森鴎外 舞姫 雁 井上靖 訳編 明治の古典8 初版
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 ――この頃は、ぼつぼつソヴェト映画が入って来るようだね。「アジアの嵐」なんか猿之助の旗あげにまで利用されて賑やかだった。あれはあっちでも、勿論傑作の部なんだろう
 ――そりゃそうさ。はじめてモスクワの「コロス」っていう優秀映画館公開された時は素敵だった。伴奏は特別作曲された音楽だったし。
  帝国主義植民地とがどういう関係におかれているかということの真実が堂々としたプドフキンの芸術的手腕で把握されていた。
  ところがね、面白いことには、それから数ヵ月経ってパリへ行ったら、シャンゼリゼーの目抜な映画館で、その「アジアの嵐」をやっているのだ。秋の、雨の降っている晩でね。入って見たら、タイトル英語だ。しかも、フランス旧教の国だから、「アジアの嵐」のなかの最も皮肉愉快場面、よだれをたらした赤坊のラマに帝国主義国の将軍勲章をつけてお辞儀したり、おべっかつかったりする場面、反宗教的な場面をあらかた切ってしまってあった。暖いぷかぷかな場席へ、所謂シークなパリの中流男女、金をつかいに来たアメリカ女が並んで、ソヴェトから買って来て骨をぬいた「アジアの嵐」を観ている。仏領インド支那農民が反抗すると、フランス政府は瀟洒な飛行機から毒ガスを撒いて殺した。だから原作のままの「アジアの嵐」なんぞ上映することを許さないんだ。日本だって、あの作品や「トルクシブ」は「思想善導」されてカットされているんだろう?
  ソヴェト映画だからって観る側としては無条件によろこべないんだ。
 ――それは相当みんな勘定にいれて見ると思う。ソヴェトじゃ映画製作は、計画生産だってきいたが、そうか?
 ――鉄、石炭、麦、靴のような消耗品に至るまでソヴェトはすべての生産計画的にやっている。映画みたいな芸術生産も大体一年に何本、どういう種類のものをつくると予定してやっている。
 ――芝居の方はどうなんだ? キノと同じかい?
 ――人民文化委員会芸術部が、その年の予算の中から、劇場のためにはいくら金を使うかという予算をたてる。各劇場にその予算がわりあてられる。それでやって行くんだ。――余談だが、ソヴェトでは、全露作家団体連盟に対しても、作家技術生活改善のために人民文化委員会芸術部が巨額な補助予算をもっているよ。画家だって、社会組織違うから昨今の日本みたいに大小ブルジョアが小遣緊縮しはじめたおかげで閉口するようなことはない。これも、やっぱり人民文化委員会調整して、やって行く。
 ――いやに窮屈みたいじゃないか。計画計画。それに、誰だったかやっぱりソヴェトへ行って来た人が云っていたよ、ソヴェト映画でも芝居でも、宣伝ばっかりで面白くもなんともない。一つ二つ見りゃうんざりだって。大体、お前はソヴェトびいきすぎるよ。悪口を云ったためしがないじゃないか。本当のところを云えよ! つまらないかい? 事実。――
 ――そりゃ数のなかだもの、つまらないんだって、ばからしいのだってあるさ。功績ある共産党の中にだって一人一人見ればいやな奴がいるのと同じこった。
  だがね。つまらない、下らないというのもいろいろだよ。芸術的な技術下手で、捕えた主題もヤワでつまらない。そりゃ本当につまらない。客観的につまらない。ところが、もう一つつまらないと云われる場合がある。それは、ソヴェト芸術のもっている明瞭な階級性を、観る者が理解しない場合か、意識の底でそれに反抗している場合にだ。ソヴェトプロレタリア農民知識労働者――つまり働く人民ソヴェト国家だ。プロレタリアを先頭として、真剣に社会主義社会建設に向って努力している。あらゆる芸術は、自然こういう民衆実生活を積極的に反映しているのだ。ソヴェト世界芸術史上に、全く新しい一頁を開いているのだ。
  従って、階級的にアカの他人であり、プロレタリアート目標としているものとは反対な利害をもって生きている者に、ソヴェト芝居が面白くない場合も万々あるだろう。面白くないのを通りこして、うなされちまうかもしれない。ハハハハ。そういう外国人たちは、第一国立オペラ舞踊劇場(昔の大劇場)でオペラばっかり見ているよ。「ローヘングリーン」や「カルメン」。「オニェーギン」「スペードの女王」「サドコ」はこわくないからね。


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