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ドン・バス炭坑区の「労働宮」 ソヴェト同盟の労働者はどんな文化設備をもっているか - 宮本 百合子 ( みやもと ゆりこ )

  • 8円炭坑夫2枚 櫛型印
  • 5円炭坑夫  D欄文字入櫛型印 陸前中村27.6.23
  • 5円炭坑夫 縦書ローラー黒印 落合長崎24年
  • 5円炭坑夫 定常変種「郵」欠け
  • 5円炭坑夫横ペア 欧文櫛型印 OSAKAHIGASHI 1.12.51
  • 5円炭坑夫 定常変種「郵」欠け 欠け位置違い
  • 5円炭坑夫 機械印 鎌倉27.4.5
  • 5円炭坑夫 鉄郵印 東京直江津間26.12.15
  • 『炭坑読本四 保安編第21輯 自然発火とガス突出』 昭和28年 
  • 切手◆昭和すかしなし切手◆印刷女工、炭坑夫、NH◆M-86
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ドン・バス炭坑区の「労働宮」 ――ソヴェト同盟労働者はどんな文化設備をもっているか――  世界経済恐慌につれて、日本でも種々の生産(製糸、紡績化学運輸等)が低下し、それにつれて燃料原料となる石炭は二割七分の生産減を見た。北九州地方炭坑労働者生活などはこの頃以前にましてひどい有様になって来ている。(賃銀は一日平均時間労働で一円五六十銭やっとだ。恐慌前から見ると二十銭以上引下げ)
 これは北九州の或る坑山で実際にあった話であるが、或る坑山が所謂事業不振で閉鎖されることになった。会社の方では儲がうすくなったから、これ以上損をすまいと勝手に閉めるのだが、その日から女房子供抱えて路頭に迷わなければならない数百人の労働者達は、黙ってそうですかと引込んではおれない。かたまって事務所押しかけ、閉めるのは勝手だが、俺たちの命がつなげる方法を講じろと迫った。会社ではあわてて、一策を案じ出した。それは、失業させられた労働者中の希望者は県当局がいくらかと会社がいくらかと旅費補助して「満州国」へ移住させるというのだ。
 会社事務員は「満州国」へ行きさえすれば仕事は山ほどあり、物価はやすいし仕合わせずくめの話をする。ブル新聞では「新天地満州国」とか、日本の「大衆幸福の鍵満州国」という風な太鼓をたたいているから、失業させられ、食う道を求めて焦っている労働者たちは到頭心を動かされた。僅かの旅費補助土台とし遠い満州国移住するのだからと家財道具をも売り払って、女房子供を引きつれ数百人が一団となって幸福を求め旅立って行った。
 長春新京と名を改め、今は「満州国」の首府である。着いて見て、北九州労働者達は拳を握って口惜しがった。会社と県当局とに、一杯くわされたことがわかった。「満州国」の役人職業の世話をしてくれないばかりか、テンから邪魔者扱いである。「こっちにはお前らよりもっとやすい賃銀で働く中国労働者がいくらでもいるから用はない」そう云って放り出された、とり合ってくれぬ。
満州国」がわれわれ大衆の暮しをよくする役に立つというようなブルジョア地主政府の云い草は嘘である。中国植民地として、中国労働者を一層やすい賃銀で搾り、ブルジョア地主大衆抑圧する力を強めようとしているばかりである。そういう事実労働者たちに分った。人間なみの生活を求めて行った「満州国」でも労働者が得たものは「飢餓」と失業とである。
 困り切った北九州労働者大部分は故郷へ又戻って来た。出立の時よりもっともっと無一文になり、殆ど乞食姿で戻った。「満州国」から帰る旅費はどこからも補助されなかったのである。
 この話をきいた時、私の心にきつく浮んだ一つの活々した絵がある。それはソヴェト同盟炭坑労働者生活の有様である。
 一九二八年の初秋(五ヵ年計画の始る前年であった)私はドン・バス炭坑区の中心ゴルロフカを見学した。五ヵ年計画によってウラル地方にも大きい炭坑区が出来たが、それまではドン・バス炭坑ソヴェト同盟最大石炭宝庫であった。ソヴェト同盟では、諸君も知っているとおり、世界労働者農民見学団を心から歓迎している。石炭の町ゴルロフカにも、ドイツ、アメリカイギリスなどの工場農村職場大衆から選ばれて見学に来たもののために、また作家技術家が見学研究に来た時のために、特別な「訪問者の家」というのがある。
 このゴルロフカ炭坑革命までの主人はフランスブルジョアであった。が、今はソヴェト同盟革命的なプロレタリアが主人で、社会主義社会建設するために日夜努力をしている。炭坑事務所の壁には赤い布に「工業化! 電化! プロレタリア勝利はこれだ!」と白字で書いたプラカートが貼られ、一週間ずつの採炭高と生産計画とを対照した興味ある統計図がかかげられている。経営主任責任ある位置にいるひとはやっと三十そこそこで、その辺にいる誰彼一向違わない鳶色ルバーシカを着、元気仕事をやっている。鞄を小脇に抱え連中が盛に出入りする、青い技師制帽をかぶったのも来る。主任日本の女がモスクワから遠い炭坑見学に来たのを珍しがって忙しいにもかかわらず、
「あなたはどうしてドン・バスを見学する気になったんですか?」
私に向って訊いた。私はありのまま答えた。
「私は石炭について専門的なことはちっとも知らないのです。けれども、私はソヴェト同盟へ来てからいろいろな工場見学して、社会主義の国の工場とはどういうものか、そこで労働者はどんなに生活しているかということを見た。成程、人間社会の仕組みによってはこうも暮せるのだということが分った。日本ブルジョア国だから工場もひどいが、炭坑は話のほかです。危険の中で獣のように搾られている。ソヴェト同盟炭坑労働者生活はどんなか、それが見たかったのです」と云った。すると、
 主任は、
「それは結構だ! すっかり見て下さい。ドミトロフ君、君このひとを案内してあげてくれ給え」
 そう云ったが、急に私の方を振りかえり、
「ああ君、坑内へ入りますか?」
と云った。
「よかったら入れて下さい」
 念のために断っておくがソヴェト同盟では、婦人地下労働は一切禁じている。ドン・バスに何千と婦人労働者がいるがそれは選炭その他みんな地面の上での仕事をやっているのだ。
 私は同志ドミトロフにつれられて、先ず大仕掛の動力発電所へ入って行った。坑内の換気のため、エレベーターやトロを動すために、動力室では五人の熟練工が絶えず働いているが、感服したのはその安全装置である。唸って震えている、巨大なモーターの周囲は油さしやその他にごく必要な部分だけを露出して強い金網で覆ってある。調帯も、万一はずれた時下で働いている者に怪我させそうな場所鉄板の覆いがかかっている。


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