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一つの約束 - 太宰 治 ( だざい おさむ )

  • 佐野元春[8cmCD]約束の橋(二十歳の約束主題歌)*まひなjpc
  • No.617A 約束の冬 上・下(2冊)運命の転変の中で、はたして約束は
  • 山口百恵*4曲シングル盤「愛に走って/白い約束/ありがとうあなた
  • ◆CD◆Bluem of Youth「ラストツアー~約束の場所へ」帯付 良好
  • ちばてつや・あしたのジョー/約束の橋・限定
  • ★未開封 ONE2 永遠の約束 トレカ 8パック★ 美少女
  • 【SE】ふたり翼を広げて・・・愛の約束☆ペアリング☆【即買】
  • ときめきメモリアル3~約束のあの場所で~ポスター&ポップ
  • ☆限定特価★爆乳 篠崎愛★約束☆中古DVD良品
  • EP シカゴ 長い夜/約束の地へ
 難破して、わが身は怒濤に巻き込まれ、海岸にたたきつけられ、必死にしがみついた所は、燈台の窓縁である。やれ、嬉しや、たすけを求めて叫ぼうとして、窓の内を見ると、今しも燈台守の夫婦とその幼き女児とが、つつましくも仕合せな夕食最中である。ああ、いけねえ、と思った。おれの凄惨な一声で、この団欒(だんらん)が滅茶々々になるのだ、と思ったら喉(のど)まで出かかった「助けて!」の声がほんの一瞬戸惑った。ほんの一瞬である。たちまち、ざぶりと大波が押し寄せ、その内気な遭難者のからだを一呑みにして、沖遠く拉(らっ)し去った。
 もはや、たすかる道理は無い。
 この遭難者の美しい行為を、一体、誰が見ていたのだろう。誰も見てやしない。燈台守は何も知らずに一家団欒食事を続けていたに違いないし、遭難者は怒濤にもまれて(或いは吹雪の夜であったかも知れぬ)ひとりで死んでいったのだ。月も星も、それを見ていなかった。しかも、その美しい行為は厳然たる事実として、語られている。
 言いかえれば、これは作者の一夜の幻想に端を発しているのである。
 けれども、その美談は決して嘘ではない。たしかに、そのような事実が、この世に在ったのである。
 ここに作者幻想不思議存在する。事実は、小説よりも奇なり、と言う。しかし誰も見ていない事実だって世の中には、あるのだ。そうして、そのような事実にこそ、高貴な宝玉が光っている場合が多いのだ、それをこそ書きたいというのが、作者の生甲斐になっている。
 第一線に於いて、戦って居られる諸君。意を安んじ給え。誰にも知られぬ或る日、或る一隅に於ける諸君美しい行為は、かならず一群の作者たちに依って、あやまたず、のこりくまなく、子々孫々に語り伝えられるであろう。日本文学歴史は、三千年来それを行い、今後もまた、変る事なく、その伝統継承する。



底本:「道化精神大和出版
   1969(昭和44)年2月28日初版発行
   1992(平成4)年6月30日新装1刷発行
初出:青森県某誌
   1944(昭和19)年頃
入力:番 裕子
校正:土屋隆
2005年1月15日作成
青空文庫作成ファイル
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