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一九二五年より一九二七年一月まで - 宮本 百合子 ( みやもと ゆりこ )

  • ★十一月の男/新潮文庫/B.フリーマントル著★
  • 流花 【レプリカントは夢を見る】 宇都宮探偵団/御巫一月様 7冊
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  • 【貴重】大相撲一月場所(初場所)14日目溜席
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 ○パオリのこと  ○父と娘との散策  ○武藤のこと  ○貴婦人御あいての若い女  ○夢(二)  ○隣の職工の会話  ○夜の大雨の心持。  ○小野、山岡、島野、(態度(竹の島人) 言葉 顔)  ○十月一日(十四夜月)  ○日々草(十月)  ×柳やの女中のこと。巡査、おかみ、円覚寺の寺男。
 ○肝癪のいろいろ
 ※十月百花園
 ○部屋をかりに行った中野近くの医者

     パオリ

 オランダ人。伊太利らしいパオリという名をつけて。よせ芸人
一、神田辺の日本下宿
一、彼の部屋の雑然さ
一、下宿女中、片ことの日本語 英語会話女中たちのエクサイトメン
一、パオリの幸福

     父娘の散策

 人のよい気の小さい若い好奇心のある父、(田舎からでもよい)
 娘、タイピスト何か、始めて自分の小使を父のために使う その心持、
 娘、あの職業婦人タイプ

     武藤のこと

 彼女の体
 眼つき
 押しのつよさ
 独占
 子供や同輩を皆手下あつかいにする。淋しさから来るそういう癖。

     老貴婦人のお相手の若い女の哀れさ

 ○老婦人趣味着物をきる。
 ○絶間ない我ままと小言
  (悪意のない、然し勝手な、例、)
「さあ、一寸これをよんでおくれ、まあ何て下らないんだろう、すぐピーターに御礼を云ってかえして下さい、――おや、お前さん、まだ着かえがすまないの、仕様のない人だこと、いつでも私はまたされる うんざりですよ my dear.」
今日のお天気はどう?」
「よろしゅうございます」
「そうじゃあないだろう、風が出たらしいじゃあないか、窓をあけて御覧 ホラ、もう出かけるのはおやめですよ、大層おめかし出来たね」

 In society, she played the most pitiable role. Everybody knew her, and nobody paid her any attention.
 She was very self-conscious, and she looked about her with impatience for a deliverer to come to her rescue.

     或夢(父上の見た)

 崖の上を歩いて居た。下は海だ。ふと見ると、牛が二匹泳いで来る。一匹は真直に来るが、もう一匹の方はつかれたと見えて、三角州のようになって居る彼方にそれてゆく。こんどは人間流れて来た、三人で皆長髪だ。ああいやだなと人を呼びにゆくところで、目がさめた。
 その三人が長髪であったので、さめたあとまでいやな心持がして仕様がないから、電報を打とうかと思ったよ、そしてこんな馬鹿想像をしたのさ、スエ子が居るから、若し海岸でも散歩しようときかないで出て、何かあやまちでもあったかと思ってね。
母「だってすえ子はもう土曜にかえしてあったじゃあありませんか」
「ハハハハ本当にそうだったな」
私「一寸お忘れになったのね、そのとき」
「ふーうむ」
 これは母コウヅに女中ととまり かえって、その日帝劇で父と会ったとき、父上の話されたこと。

     夢

 デンマークだ。氷原の上を、タンクのようなものや何かが通る、停車場のようなところに自分多勢白衣少女と居る。自分英語で、劬りながら話した。
 How old are you?
など。少女一寸英語で返事するがうまく云えず困って居る。

     隣の職工の会話

「おはぎとぼたもち違うんですか?」
「違いますよ、ただところによって名が違うと云うけれどそうじゃあありませんよ、ぼたもちは半殺しさ」
「へえ? 半殺しって?」
もち米を飯にたいて、それを、あたり棒か何かでつぶすのさ」
「臼でぶったたくんだね」
「あらいやだ臼だって。杵でしょう?」
「――杵でさ」
「おはぎはじゃあどういうんです」
「おはぎは、飯のまま握ってきなこやなんかでまぶしたのをおはぎというんさ」
「そうかね、やっぱりもち米でしょう?」
「みな殺しってえのは」
「餅さね」
「ハハハハ」

女の声
「ねえーさん、労働組合ってあるんだってね、それに入ると、毎月二十銭ずつだか会費をおさめるんですってね」
「はあ」
「そいで何だってえじゃあないの、どっかの工場ストライキでもすると、皆でお金を出し合ってすけてやるんだってね」
「へえ」
「いくらでも出さなくちゃあならないんじゃあ困っちゃうね」
「ええ」

     夜の大雨の心持

 一九二五年九月二十九日より三十日まる一日降りつづいた大雨についての経験
 大抵一昼夜経てば天候は変るのに、その雨は三十日になってもやまず、一日同じひどさ、同じ沛然さで、天から降り落ちた。雨の音がひどいので、自分の入って居る家以外皆家も人も存在を消されたように感じた。床についてから、洗い流すような水の音、二階の下は、そのザーザーいう水が走って流れて居そうな気がした。

〔欄外に〕五十年来という大雨




小野 酒をのむ、色白、一寸腰のかがめかたなどくにゃりとし「おやかましゅう」という。
○山岡 皮膚のうすい黒い肥り、髪濃く、まつ毛も黒く濃い。動物、舌たるいような口のききよう。発句、釣、低利資金で米松の家を作ろうという。しきりに建築について研究し、

「あの柱の破れなんか、震災影響です」又
「あの中廊下地震のとき役に立ったですな、つっぱりますからね」等。


 島野 古の物語絵巻にありそうに貧相でプルルルとしたしなび鼻、うすい髭、うすい卑屈な唇、「――でございます」という。
○竹の島人 大きな酒やけのした鼻、光った、鋭く動そうとする眼。古い記者生活時代のくせで、人を呼びすてに話し、野田大塊、釈宗演のおたいこ。


     十四夜月

 二階のてすりに顎をもたせかけて、月を眺める。雲が出て段々月に迫り薄雲が輝く月面をかすめ、むらむら迫り、月は、雲にかくれては現れ、現れてはかくれる。ごく子供のとき、台所のよこの高窓に顎をもたせ、そうやって、やっぱりこのように雲に浮ぶ月を眺めたことを思い出した。雲が動くのではない。月が――円い銀色の月が同じ速さでスーっと雲の裂け目や真黒ななかや、もっと薄い、月が白くほの見えるところなどを遊行して居るように思う。自分も一緒にすーすーと。下へすーすーゆくようなのに決して地面近くはならない。やっぱり高い高い空にある。変な、ぼんやりした悲しいような心持。いくつ位だったろう、八つか九つか?

     日々草

 日々草から、キハツ性のゼラニウムの葉から立つと同じような香いがした。根を熱湯につけてさすと一日一日、新しい花がさくと云ったが咲かず、二日目に、葉ばかりになった。

     柳やの女中

 薄馬鹿色情狂
 甚兵衛の家に肴をとどけて来て、かえりになかなか柳やへ戻らず。女房丁度雨がふり出したので傘をもって迎いに来る。行き違いになったのだろうと云ってかえる。その間に女は、線路のどこかで、人足に――土方に会い、お嫁に来ないか、女房にならないかと云われ、そのまま一緒に夕暮二三時間すごす。すぐどうかなったのなり。


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