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一利己主義者と友人との対話 - 石川 啄木 ( いしかわ たくぼく )

  • 古書≪森鴎外集≫7 青年、舞姫他 【 森鴎外】河出書房 貴重 初版
  • 「森鴎外私論」吉野俊彦 森鴎外評論-批評-書籍・10冊 N21681
  • 岩波文庫1675昭和41年/阿部一族他二編森鴎外 岩波書店
  • 600円~ 岩波文庫【青年】森鴎外 (プチソフト1)
  • ◆◇森鴎外著「舞姫・山椒大夫  他四篇」(旺文社文庫)◇◆
  • ◆◇ 森鴎外著「青年」(新潮文庫) ◇◆  名著! 
  • ◆◇森鴎外著「舞姫・うたかたの記  他三篇」(岩波文庫)◇◆
  • ◆新品DVD★『NHK 名作の風景 8』森鴎外 正岡子規 夏目漱石1円
  • 森鴎外 高瀬舟・高瀬舟縁起・寒山捨得・寒山捨得縁起 CD 未開封
  • 森鴎外 舞姫 雁 井上靖 訳編 明治の古典8 初版
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B おい、おれは今度また引越しをしたぜ。 A そうか。君は来るたんび引越しの披露(ひろう)をして行くね。
B それは僕には引越し位の外に何もわざわざ披露するような事件が無いからだ。
A 葉書でも済むよ。
B しかし今度のは葉書では済まん。
A どうしたんだ。何日(いつ)かの話の下宿の娘から縁談でも申込まれて逃げ出したのか。
B 莫迦(ばか)なことを言え。女の事なんか近頃もうちっとも僕の目にうつらなくなった。女より食物(くいもの)だね。好きな物を食ってさえいれあ僕には不平はない。
A 殊勝な事を言う。それでは今度の下宿はうまい物を食わせるのか。
B 三度三度うまい物ばかり食わせる下宿が何処(どこ)にあるもんか。
A 安下宿ばかりころがり歩いた癖に。
B 皮肉るない。今度のは下宿じゃないんだよ。僕はもう下宿生活には飽き飽きしちゃった。
A よく自分に飽きないね。
B 自分にも飽きたさ。飽きたから今度の新生活を始めたんだ。室(へや)だけ借りて置いて、飯は三度とも外へ出て食うことにしたんだよ。
A 君のやりそうなこったね。
B そうかね。僕はまた君のやりそうなこったと思っていた。
A 何故(なぜ)。
B 何故ってそうじゃないか。第一こんな自由生活はないね。居処(いどころ)って奴は案外人間を束縛するもんだ。何処かへ出ていても、飯時になれあ直ぐ家のことを考える。あれだけでも僕みたいな者にゃ一種の重荷だよ。それよりは何処でも構わず腹の空(す)いた時に飛び込んで、自分の好きな物を食った方が可(い)じゃないか。(間)何でも好きなものが食えるんだからなあ。初めの間(うち)は腹のへって来るのが楽みで、一日に五回ずつ食ってやった。出掛けて行って食って来て、煙草でも喫(の)んでるとまた直ぐ食いたくなるんだ。
A 飯の事をそう言えや眠る場所だってそうじゃないか。毎晩毎晩同じ夜具を着て寝るってのも余り有難いことじゃないね。
B それはそうさ。しかしそれは仕方がない。身体(からだ)一つならどうでも可いが、机もあるし本もある。あんな荷物をどっさり持って、毎日毎日引越して歩かなくちゃならないとなったら、それこそ苦痛じゃないか。
A 飯のたんびに外に出なくちゃならないというのと同じだ。
B 飯を食いに行くには荷物はない。身体だけで済むよ。食いたいなあと思った時、ひょいと立って帽子を冠(かぶ)って出掛けるだけだ。財布さえ忘れなけや可い。ひと足ひと足うまい物に近づいて行くって気持は実に可いね。
A ひと足ひと足新しい眠りに近づいて行く気持はどうだね。ああ眠くなったと思った時、てくてく寝床を探しに出かけるんだ。


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