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五月のことば - 宮本 百合子 ( みやもと ゆりこ )

  • ●飯窪五月写真集<五月の温もり>/斉木弘吉撮影/2001年
  • 五月人形 五月晴れ 真多呂人形・木目込み人形材料キット
  • 鹿角鍬形五月人形 源氏兜飾り 鎧武者/五月人形/端午の節句/甲冑
  • 船戸与一 『虹の谷の五月』 直木賞 元帯 初版 
  •   ★☆★ 虹の谷の五月 船戸 与一 (単行本 - 2000/5)
  • 昭和35年 5月号 国際文化画報 五月の顔 エノケンサン
  • メガハウス EXモデル BLEACH/ブリーチ 1/8 四楓院夜一(雪野五月)
  • 兜・五月人形用 道具単品 両旗飾り 金彩昇竜20号
  • 兜・五月人形用 道具 かがり火 木製桑塗り10号 電気有
  • 署名本・戸板康二「五月のリサイタル」初版・帯付・サイン本
 去年の暮、福田恆存は、一九四九年を通観して、「知識人敗北」の年と概括をした。これは、評論家としての氏にとって、きわめて意味のふかい一つの刻みめを印した発言となった。なぜならば、一九四九年の日本現実は、混乱しながらもそこを縫って、本質的には氏の概括とは反対の性格をもつ流れがつよく自覚されはじめた年であったのだから。
 福田恆存にとっては、中国人民革命勝利したこともどこまでがほんとかわからないこと(群像二号)であったし、日本の国内で、日本学者たち二十七名が非日委員会に反対の声明を行い、ひきつづき広汎な層をふくむ学者、有識人の全国的な「平和を守る会」を組織した画期的事実も無視されている。加盟団体あわせて一千万人の組織員をもつ民主主義擁護同盟は、組織の大きさだけの活力を発揮しにくい事情におかれていたが、それでも各地におこっている人権蹂躙問題具体的に働いた。
 同氏が、「平和を守る会」に参加しないことや「知識人の会」に関係をもたないでいたことは、もとより氏の自由である。けれども、川端康成三月号の『文学界』に発表している「天授の子」をよめば、現代文学者が、その理性人間的な感覚とを日本人運命とその文学運命とについて、どのように働かせはじめているかということは明瞭である。世界平和のために戦争挑発とたたかい、戦争誘いそれを暗示する思想と言論のカナライゼーションに抗してわれわれ自身を恥辱から救おうとする決意と行動は、こんにち、フランス抵抗レジスタンス)をまねる範囲をぬけている。一九五〇年は、日本理性が試練される年である。このきびしくて人間らしい美しい事実はすでにわれわれの前にあらわれている。

 河盛好蔵がこんにちのジャーナリズムの有様を「小説時代」と云った。そしてひろい同感をひきおこしている。巨大資本にしたがえられた商業ジャーナリズム商品文学の氾濫を批判してすべての作家たちと読者とは、「小説病」は防がれ治癒されなければならないと考えている。そのための必要な文学行動はとりもなおさずジャーナリズム支配しようとしているのと本質においてはひとしい巨大資本による挑発とたたかって理性防衛する行動であるという実質を理解して来ている。生物学者である天皇細菌戦に特別命令を与えたという事実明らかになったことは、あらゆる人を深く考えさせる。その沈潜するこころもちをまぎらすように、わやわやとした声でかつて軍部に扈従(こじゅう)して政治文学を語った作家が、こんどは、軍事基地施設拒むことは出来ないという吉田首相をとりまいて文学政治を談じている。
 これらの現実にかかわらず、地球は、今日も、あすもまわっている。地球の廻転がじかにそのこととして体に感じられないように、いつの間にか日本現代文学歴史の扉をひらかれて、アジアと世界の前に価値評価をうけようとしている。



底本:「宮本百合子全集 第十三巻」新日本出版社
   1979(昭和54)年11月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十一巻」河出書房
   1952(昭和27)年5月発行
初出:不詳
   1950(昭和25)年4月執筆
入力柴田卓治
校正:米田進
2003年4月23日作成
青空文庫作成ファイル
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