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仙人 - 芥川 竜之介 ( あくたがわ りゅうのすけ )

  • ★新品未開封★非売品★NARUTO★仙人ナルトフィギュア★
  • 即決   甕仙人   森伊蔵村尾魔王
  • 携帯ストラップ 仙人カリン/カリン塔、ドラゴンボール
  • ■■ 九谷焼 「竹仙人」小茶器 ■■
  • ◆九谷染付山水仙人図4つ足獅子香炉◆翁けんか? 獅子 角福
  • 仙人の桜、俗人の桜 / 赤瀬川原平 [日本交通公社]
  • P823 在銘印 中国仙人図 古無垢軸先 紙本掛軸☆床の間山水扁額
  • 10011322 まくり 仙人図 ①
  • DB改 ワンピース DX 亀仙人&チョッパーサンタクロース 全2種
  • 即決!宇治野正杜氏作 旧なかむら&旧甕仙人 1800ml 中村酒造場
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芥川龍之介  皆さん。  私(わたし)は今大阪にいます、ですから大阪の話をしましょう。
 昔、大阪の町へ奉公(ほうこう)に来た男がありました。名は何と云ったかわかりません。ただ飯炊奉公(めしたきぼうこう)に来た男ですから、権助(ごんすけ)とだけ伝わっています。
 権助は口入(くちい)れ屋(や)の暖簾(のれん)をくぐると、煙管(きせる)を啣(くわ)えていた番頭に、こう口の世話を頼みました。
番頭さん。私は仙人(せんにん)になりたいのだから、そう云う所へ住みこませて下さい。」
 番頭は呆気(あっけ)にとられたように、しばらくは口も利(き)かずにいました。
番頭さん。聞えませんか? 私は仙人になりたいのだから、そう云う所へ住みこませて下さい。」
「まことに御気の毒様ですが、――」
 番頭はやっといつもの通り煙草(たばこ)をすぱすぱ吸い始めました。
手前の店ではまだ一度も、仙人なぞの口入れは引き受けた事はありませんから、どうかほかへ御出(おい)でなすって下さい。」
 すると権助(ごんすけ)は不服(ふふく)そうに、千草(ちくさ)の股引(ももひき)の膝をすすめながら、こんな理窟(りくつ)を云い出しました。
「それはちと話が違うでしょう。御前さんの店の暖簾には、何と書いてあると御思いなさる? 万口入(よろずくちい)れ所(どころ)と書いてあるじゃありませんか? 万と云うからは何事でも、口入れをするのがほんとうです。それともお前さんの店では暖簾の上に、嘘(うそ)を書いて置いたつもりなのですか?」
 なるほどこう云われて見ると、権助が怒るのももっともです。
「いえ、暖簾に嘘がある次第ではありません。何でも仙人になれるような奉公口を探せとおっしゃるのなら、明日(あした)また御出で下さい。今日(きょう)中に心当りを尋ねて置いて見ますから。」
 番頭はとにかく一時|逃(のが)れに、権助の頼みを引き受けてやりました。が、どこへ奉公させたら、仙人になる修業が出来るか、もとよりそんな事なぞはわかるはずがありません。ですから一まず権助を返すと、早速(さっそく)番頭は近所にある医者の所へ出かけて行きました。そうして権助の事を話してから、
「いかがでしょう? 先生仙人になる修業をするには、どこへ奉公するのが近路(ちかみち)でしょう?」と、心配そうに尋ねました。
 これには医者も困ったのでしょう。しばらくはぼんやり腕組みをしながら、庭の松ばかり眺めていました。が番頭の話を聞くと、直ぐに横から口を出したのは、古狐(ふるぎつね)と云う渾名(あだな)のある、狡猾(こうかつ)な医者女房です。
「それはうちへおよこしよ。うちにいれば二三年|中(うち)には、きっと仙人にして見せるから。」
「左様(さよう)ですか? それは善い事を伺いました。では何分願います。どうも仙人と御医者様とは、どこか縁が近いような心もちが致して居りましたよ。」
 何も知らない番頭は、しきりに御時宜(おじぎ)を重ねながら、大喜びで帰りました。
 医者苦い顔をしたまま、その後(あと)を見送っていましたが、やがて女房に向いながら、
「お前は何と云う莫迦(ばか)な事を云うのだ? もしその田舎者(いなかもの)が何年いても、一向(いっこう)仙術を教えてくれぬなぞと、不平でも云い出したら、どうする気だ?」と忌々(いまいま)しそうに小言(こごと)を云いました。
 しかし女房はあやまる所か、鼻の先でふふんと笑いながら、
「まあ、あなたは黙っていらっしゃい。あなたのように莫迦正直では、このせち辛(がら)い世の中に、御飯(ごはん)を食べる事も出来はしません。」と、あべこべ医者をやりこめるのです。
 さて明くる日になると約束通り田舎者の権助は番頭と一しょにやって来ました。今日はさすがに権助(ごんすけ)も、初(はつ)の御目見えだと思ったせいか、紋附(もんつき)の羽織を着ていますが、見た所はただの百姓と少しも違った容子(ようす)はありません。それが返って案外だったのでしょう。医者はまるで天竺(てんじく)から来た麝香獣(じゃこうじゅう)でも見る時のように、じろじろその顔を眺めながら、
「お前は仙人になりたいのだそうだが、一体どう云う所から、そんな望みを起したのだ?」と、不審(ふしん)そうに尋ねました。すると権助が答えるには、
「別にこれと云う訣(わけ)もございませんが、ただあの大阪の御城を見たら、太閤様(たいこうさま)のように偉い人でも、いつか一度は死んでしまう。して見れば人間と云うものは、いくら栄耀栄華(えようえいが)をしても、果(はか)ないものだと思ったのです。」
「では仙人になれさえすれば、どんな仕事でもするだろうね?」
 狡猾(こうかつ)な医者女房は、隙(す)かさず口を入れました。
「はい。仙人になれさえすれば、どんな仕事でもいたします。」
「それでは今日から私(わたし)の所に、二十年の間奉公おし。そうすればきっと二十年目に、仙人になる術を教えてやるから。」
「左様(さよう)でございますか? それは何より難有(ありがと)うございます。


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