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南瓜 - 芥川 竜之介 ( あくたがわ りゅうのすけ )

  • 栗坊 無農薬栽培 南瓜 ミニカボチャ4個入り1箱 かぼちゃ
  • 限定品☆北海道産フルーツコーン味来(みらい)南瓜、新じゃが
  • 即決●農家直送● 北海道羊蹄山麓産 南瓜 【こふき】 10kg
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  • ☆★茶道の屋・手作り・紫砂壷(急須)・南瓜図
  • ■カネコイサオ かご葡萄のトートバッグと南瓜葡萄コサージュ■
  • ☆★茶道の屋・「南瓜紫砂壷」手作り急須 
  • かぼちゃフレーク♪安全・無添加・無着色!道産南瓜1.5キロ分!
  • 【源・O】〈村上水軍末裔売立〉武者小路実篤筆「南瓜鬼灯図」軸
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芥川龍之介  何しろ(かぼちや)が人を殺す世の中なんだから、驚くよ。どう見たつて、あいつがそんな大(だい)それた真似をしようなんぞとは思はれないぢやないか。なにほんものの南瓜(かぼちや)か? 冗談(じようだん)云つちやいけない。南瓜は綽号(あだな)だよ。南瓜の市兵衛(いちべゑ)と云つてね。吉原(よしはら)ぢや下つぱの――と云ふよりや、まるで数(かず)にはいつてゐない太鼓持(たいこもち)なんだ。
 そんな事を聞く位ぢや、君はあいつを見た事がないんだらう。そりや惜しい事をしたね。もう今ぢや赤い着物を着てゐるだらうから、見たいつたつて、ちよいとは見られるもんぢやない。頭でつかちの一寸法師(いつすんぼふし)見たいなやつでね、夫(それ)がフロツクに緋天鳶絨(ひびろうど)のチヨツキと云ふ拵(こしら)へなんだから、ふるつてゐたよ。おまけにその鉢(はち)の開(ひら)いた頭へちよんと髷(まげ)をのつけてゐるんだ。それも粋な由兵衛奴(よしべゑやつこ)か何かでね。だから君、始めて遇(あ)つたお客は誰でもまあ毒気(どくき)をぬかれる。すると南瓜のやつは、扇子で一つその鉢の開いた頭をぽんとやつて、「どうでげす。新技巧派の太鼓持(たいこもち)もたまには又|乙(おつ)でげせう」つて云ふんだ。悪い洒落(しやれ)さね。
 洒落と云へば、南瓜(かぼちや)にや何一つ芸らしい芸がない。唯お客をつかまへて、洒落放題(しやれはうだい)洒落る丈(だけ)なんだ。それが又「にはかに洒落られません」つて程にも行(ゆ)かないんだから、心細いやね。尤(もつと)もそこはお客もお客で曲(まが)りなりにも洒落のめせば、それでもう多曖(たわい)なく笑つてゐる。云はば洒落のわかつたのが、うれしくつてたまらないと云ふ連中ばかりなんだ。
 あいつも始(はじめ)はそれが、味噌気(みそけ)だつたんだらう。僕が知つてからも、随分(ずゐぶん)いい気になつて、擽(くすぐ)つたもんさ。所がいくら南瓜(かぼちや)だつて、さう始終|洒落(しやれ)てばかりゐる訳にや行(ゆ)きやしない。たまには改まつて、真面目(まじめ)な事も云ふ時がある。が、お客の方ぢや南瓜は何時(いつ)でも洒落るもんだと思つてゐるから、いくらあいつが真面目(まじめ)な事を云つたつて、やつぱり腹を抱へて笑つてゐる。そこがこの頃になつて見ると、だんだんあいつの気になり出したんだ。あれで君、見かけよりや存外(ぞんぐわい)神経質な男だからね。いくらフロツクに緋天鳶絨(ひびろうど)のチヨツキを着て由兵衛奴(よしべゑやつこ)の頭を扇子(せんす)で叩いてゐたつて、云ふ事まで何時(いつ)でも冗談(じようだん)だとは限りやしない。真面目な事を云ふ時は、やつぱり真面目な事を云つてゐるんだ、事によるとお客よりや、もつと真面目な事を云つてたかも知れない――とまあ、僕は思ふんだがね。だからあいつに云はせりや「笑ふ手前が可笑(をか)しいぞ」位な気は、とうの昔からあつたんだ。今度のあいつの一件だつて、つまりはその不平が高(かう)じたやうなもんぢやないか。
 そりや新聞に出てゐた通り南瓜(かぼちや)が薄雲太夫(うすぐもだいふ)と云ふ華魁(おいらん)に惚(ほ)れてゐた事はほんたうだらう。さうしてあの奈良茂(ならも)と云ふ成金(なりきん)が、その又|太夫(たいふ)に惚れてゐたのにも違ひない。が、なんぼあいつだつてそんな鞘当筋(さやあてすぢ)だけぢや人殺しにも及ぶまいぢやないか。それよりあいつが口惜(くや)しがつたのは、誰もあいつが薄雲太夫に惚れてゐると云ふ事を、真(ま)にうける人間がゐなかつた事だ。成金のお客は勿論、当の薄雲太夫にした所で、そんな事は夢にもないと思つてゐる。尤(もつと)もさう思つたのも可愛(かはい)さうだが無理ぢやない。向うは仲(なか)の町(ちやう)でも指折りの華魁(おいらん)だし、こつちは片輪も同様な、ちんちくりんの南瓜だからね。かうならない前に聞いて見給へ。僕にしたつて嘘だと思ふ。それがあいつにやつらかつたんだ。別して惚れた相手の薄雲太夫が真にうけないのを苦に病(や)んだらしい――だからこその人殺しさ。
 何でもその晩もあいつは酔つぱらつて薄雲太夫(うすぐもだいふ)の側へ寄つちや、夫婦になつてくれとか何(なん)とか云つたんださうだ。太夫(たいふ)の方(はう)ぢや何時(いつ)もの冗談(じようだん)と思ふから、笑つてばかりゐて相手にしない。しないばかりなら、よかつたんだが、何か拍子(ひやうし)に「市兵衛(いちべゑ)さんお前|妾(わちき)に惚(ほ)れるなら、命がけで惚れなまし」つて云つたんださうだ。それがあいつの頭へぴんと来たんだらう。おまけに奈良茂(ならも)がその後(あと)から、「かうなると汝(われ)と己(おれ)とは仇(かたき)同志や。今が今でも命のやりとりしてこまそ」つて、笑つたと云ふんだから機会(きつかけ)が悪い。すると、南瓜(かぼちや)は今まではしやいでゐたやつが、急に血相(けつさう)を変へながら坐り直して――それから君、何をやつたと思ふ。


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