右門捕物帖 37 血の降るへや 関連リンク

佐々木 味津三 のオススメ作品

作家別索引

作品別索引

右門捕物帖 37 血の降るへや - 佐々木 味津三 ( ささき みつぞう )

  • ◆新品DVD★『右門捕物帖 BOX』杉良太郎 伊東四朗★1円
  • ◆新品DVD★『右門捕物帖 BOX』杉良太郎 伊東四朗★1円
  • ◆新品DVD★『右門捕物帖 BOX』杉良太郎 伊東四朗★1円
  • 同光社版『右門捕物帖1』佐々木味津三/昭和28年
  • ◆新品DVD★『右門捕物帖 BOX』杉良太郎 伊東四朗★1円
  • 春陽堂捕物小説全集『右門捕物帖』佐々木味津三/昭和25年
  • ◆新品DVD★『右門捕物帖 BOX』杉良太郎 伊東四朗★1円
  • ◆新品DVD★『右門捕物帖 BOX』杉良太郎 伊東四朗★1円
次のページ
右門捕物帖 血の降るへや      1  その第三十七番てがらです。  二月の末でした。あさごとにぬくみがまして江戸二月の声をきくと、もう春が近い。
 初午(はつうま)に雛市(ひないち)、梅見に天神祭り、二月行事といえばまずこの四つです。
 初午はいうまでもなく稲荷(いなり)まつり、雛市は雛の市、梅見は梅見、天神祭りは二十五日の菅公祭(かんこうさい)、湯島亀戸(かめいど)、天神と名のつくほどのところはむろんのことだが、お社でなくとも天神さまに縁のあるところは、この二十五日、それぞれ思い思いの天神祭りをするのが例でした。
 寺小屋がそうです。
 書道指南所がそうです。
 それから私塾(しじゅく)。
 およそ、文字と筆にかかわりのあるところは、それぞれ菅公の徳をたたえ、その能筆にあやかろうという祈念から、筆子、門人、弟子(でし)一統残らずを招いて、盛大なところは盛大に、さびれているところはさびれたなりに、それぞれおもいおもいの趣向をこらしながら、ともかくにも、この日一日を楽しむのがそのならわしでした。
「だからいうんだ。理のねえことをいうんじゃねえんですよ。あっしゃ無筆だから、先生師匠和尚(おしょう)もねえが、だんなはそうはいかねえ、物がお違いあそばすんだからね。それをいうんですよ! それを!」
 やっているのです。
 ご番所をさがって帰っての夕ぐれのしっぽりどき……伝六、でんでん名人、むっつり、ふたりの、これは初午であろうと二十五日であろうと、年じゅう行事であるから……ここをせんどと伝六のやっているのに不思議はないが、やられている名人はとみると、あかりもないへやのまんなかに長々となって、忍びよる夕ぐれを楽しんでいるかのようでした。つまり、それがよくないというのです。
「きのうやきょうのお約束じゃねえ、もう十日もまえからたびたびそういってきているんですよ。牛込守屋(もりや)先生下谷(したや)の高島先生、いの字を習ったか、ろの字を習ったかしらねえが、両方から二度も三度もお使いをいただいているんだ。去年も来なかった。おととしもみえなかった。古いむかしの筆子ほどなつかしい。今度の天神まつりにはぜひ来いと、わざわざねんごろなお使いをくだすったんじゃねえですか。のっぴきならねえ用でもあるなら格別、そうしてごろごろしている暇がありゃ、両方へ二、三べんいってこられるんですよ。じれってえっちゃありゃしねえ。日ぐれをみていたら、何がいってえおもしれえんです」
「…………」
「え! だんな! ばくちにいってらっしゃい、女狂いにいってらっしゃいというんじゃねえですよ。親は子のはじまり、師匠は後生のはじまり、ごきげん伺いに行きゃ先生がたがよぼよぼのしわをのばしてお喜びなさるから、いっておせじを使っていらっしゃいというんだ。世話のやけるっちゃありゃしねえ。そんな顔をして障子にらめっこをしていたら、何がおもしれえんですかよ。障子には棧(さん)はあるが、棧は棧でも女郎屋の格子(こうし)たア違いますぜ。それをいうんだ。それを!」
「…………」
「じれじれするだんなだな。なんとかいいなさいよ」
 ことり、とそのとき、何か玄関先へ止まったらしいけはいでした。どうやら、駕籠(かご)らしいのです。と思われるといっしょに、呼ぶ声がきこえました。
「お待ちどうさま。お迎えでござんす……」
「そうれ、ごらんなせえ。だから、いわねえこっちゃねえんだ。牛込下谷か、どっちかの先生が待ちかねて、お迎えの駕籠をよこしたんですよ。はええところおしたくなせえまし!」
「…………?」
「なにを考えているんです。首なぞひねるところはねえんですよ。しびれをきらして、どっちかの先生がわざわざお迎えをよこしたんだ。行くなら行く、よすならよすと、はきはき決めたらいいじゃねえですかよ!」
「あの、お待ちかねですから、お早く願います……」
 せきたてるようにまた呼んだ表の声をききながら、不審そうに首をかしげて、しきりと鼻をくんくん鳴らしていたが、不意に名人がおどろくべきことをいって立ちあがりました。
医者駕籠だな! たしかに煎薬(せんやく)のにおいだ。どこかで何か何かになったかもしれねえ。ぱちくりしている暇があったら、十手でもみがいて出かけるしたくでもしろい。うるせえやつだ……」
 のぞいてみると、まさしくそのことばのとおり医者駕籠です。それもよほど繁盛している医者とみえて、りっぱな乗用駕籠でした。
 しかし、ちょうちんはない。それがまず不審の種でした。あかりも持たずにいきなり玄関先へ駕籠をすえて、しきりとせきたてているところをみると、急用も急用にちがいないが、それよりも人目にかかることを恐れている秘密の用に相違ないのです。
「人違いではあるまいな」
「ござんせぬ。


次のページ

佐々木 味津三 (ささき みつぞう) 以外のオススメ作品

右門捕物帖 37 血の降るへや のリンク元

「右門捕物帖 37 血の降るへや-佐々木 味津三」の関連ページ


関連ページ
Web Services by Yahoo! JAPAN