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国宝 - 宮本 百合子 ( みやもと ゆりこ )

  • 未使用 鉋 【金国宝(国宝)】 寸八 
  • 1[URA]韓国人間国宝/文化財「初代柳海剛」高麗青磁瓢箪花瓶売切
  • 足美 ☆真作保証☆ 人間国宝 島岡達三 縄文象嵌三角瓶
  • ◆心風館◆超逸品◆常滑◆人間国宝◆三代山田常山◆ぐい呑◆共箱
  • 本物保証!! 人間国宝 金城次郎作 ぐい呑  完品!!美品!!
  • 人間国宝 十三代酒井田柿右衛門作 錦唐人物文額皿
  • 【大型秀作品 人間国宝 徳田八十吉(正彦)作 碧彩釉小紋壷】
  • 本物保証 人間国宝 島岡達三 象嵌赤繪草花文ぐい呑 共箱 益子
  • *本物保証*人間国宝 島岡達三 灰被象嵌縄文碗 共箱 益子
  • ≪倉の美≫売切り!!人間国宝十三代太郎右衛門本人作 絵唐津鉢
 法隆寺焼けて、あの見ごとな壁画修理もきかないほどひどくなってしまった。されに新聞記事を見たとき、わたしの胸のなかで大きななみがくずれた感じがした。有名であったり、国宝であったりしても美しくない美術品もある。法隆寺壁画はそのゆたかさ、端厳さに人間らしい立派さがあふれていて、わたしたちの心のなかに親愛と尊敬をもって生きていた。あの壁画感動的であるのは、画面の素晴らしさが、わたしたちに人間のもち得る美感の高さ、深さを、まざまざとした生命感で直感させることであった。法隆寺火事壁画が滅茶滅茶にされたことは、人々に何となし生命あるものの蒙った虐待を感じさせ、ショックは大きく波紋をひろげた。更にこの法隆寺火事からは、思いがけない毒まんじゅうがころげ出し、責任者である僧は、留置場でくびをつりそこなった。古代壁画がはがれてむき出された法隆寺現代図絵である。また、あらゆる面にはびこっている日本封建的官僚主義やセクト主義が、法隆寺壁画保存にもからんでいて「法隆寺グループ」というものの存在も語られた。散々不評だった下條文相をやめさせるきっかけに、吉田首相法隆寺失火責任を負わせ、火事政治漫画をくりひろげた。政府文部委員会が、こんどの議会現実解決する能力のないこんにちの教育問題から逃げる楯として、国宝認識問題を過度に利用しないようにわれわれは監視しなければならない。
 日本の「国宝」はあわれな歴史をもっている。明治維新混沌期にもしフェノロサがいなかったら、当時の日本政府価値のある過去美術作品外国美術館でしか見ることの出来ないものにしてしまっただろう。よそから教えられた日本美術価値におどろいて、「国宝」をこしらえたのはいいが、「国宝」という封印だけがかたくされて日々の実際に適切な国家的な保護をうけていない「国宝」たちのきょうの運命こそ危機にある。「国宝」をもっていると財産税がかかり、贈りものにすれば贈与税、売れば譲渡税。その負担にたまらなくなった美術ボスたちがあれこれ細工をしているうちに、いつかは国外に消えてゆく率も多くなる。わたしたち人民は、自分たちの文化財として「国宝」をもっているのではない実状を自覚すべきである。一旦「国宝」にしたら、もう官僚機構腐敗のままに薄情きわまる扱いをして恥も知らないやりかたは、何と「赤紙一枚」を思わせるだろう。きょうの辛さに喘いでいる数十万未亡人孤児、戦傷者たちは、かつてはすべて護国の宝であったのだ。法隆寺の例にむきだされた行官僚文化に対する無責任は、二月二十一日の読売にのった高瀬荘太郎文相私立学校つけとどけ木戸御免説となって再現している。本来は人民文化の富であるはずのものが、おかしな方法で処置される例は、この間アメリカへわたった湯川秀樹博士純粋の銅塊というものにも見られる。湯川博士のその土産世界学者をおどろかしたというのであれば、純粋銅というものは科学的に珍しいものにちがいない。けれども博士は、日本にそういうものがつくられたら、それをアメリカ土産にもってゆく、とはひとこともいわなかった。こっそり運び出された。そして、あっちで学者がほめた、というようなニュースとして、わたしたち日本人民に逆輸出されてくる。これがおかしくないことだといえるだろうか。
 万葉集立派写本宮内図書寮とかにあってお歌所の長である佐佐木信綱博士しか見られないものだったそうだ。マチスやユトリロの名画は、日ごろは特定の個人に秘蔵されていて、盗まれ横領にあった騒ぎではじめてわれわれ人民の耳目にふれて来る。旧所有者たる貴族華族経済的崩壊にともなって「国宝」の人民的保管の必要は焦眉の急である。美術国宝社寺とひきはなすことも緊急である。〔一九四九三月



底本:「宮本百合子全集 第十六巻」新日本出版社
   1980(昭和55)年6月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十二巻」河出書房
   1952(昭和27)年1月発行
初出:「青年新聞
   1949(昭和24)年3月1日号
入力柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月14日作成
青空文庫作成ファイル
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