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夜寒十句 - 正岡 子規 ( まさおか しき )

  • ◆新品DVD★『NHK 名作の風景 8』森鴎外 正岡子規 夏目漱石1円
  • 即決 月刊絵手紙 2002年2月号 正岡子規の仰臥浪漫
  • 【注目品】文化人/正岡子規/8円/1951.09.19
  • ★美本,絶版 岩波文庫ワイド【仰臥漫録】正岡子規(プチソフト1)
  • 《啓美コイン》【テレカ:日本100名城】松山城 正岡子規 金箔 横
  • ◆◇額面スタート◆◇文化人シリーズ「正岡子規」◇◆
  • ◆収集家の処分品 文化人切手『正岡子規』 I-33
  • ◆新品DVD★『NHK 名作の風景 8』森鴎外 正岡子規 夏目漱石szdq
  • 『正岡子規殺人句碑』  辻真先
  • ◆本◆現代日本文学全集6 S30発行 正岡子規/伊藤左千夫/長塚節 q
 虚子猿楽町に訪ひて夜に入りて帰途に就く。小川町に出づるに男女竪にも横にも歩行(ある)きて我車ややもすれば人に行き当らんとする様なり。彼等の半は両側の夜店をあさり行くにぞある。考へて見れば今宵は五十稲荷縁日なり。我昔こゝらにさまよひし頃は見んとも思はざりし夜店なれど、此頃は斯(かか)る事さへなつかしく店々こまかに見もて行かんと思ふに実にせんなき身とはなりけり。古き雑誌書籍売る店、歯磨石鹸など売る店、根掛丈長など売る店の並びたる中に


縁日の古著屋多き夜寒かな


 それ等を離れて曲り角に小き店を出し四角な行燈を地に据ゑて片側につたやと書き片側に大きんつばと赤く書きたるも淋しげにあはれなり。


きんつば行燈暗き夜寒かな


 淡路町に来れば古画を掛け古書を並べて此たぐひの店こゝの名物なり。我もいくたびかこゝに佇み幾冊 古書を得たりし処さすがに昔忍ばる。


贋筆を掛けて灯ともす夜寒かな


 講武所を横に曲るに角の鮓屋には人四五人も群れて少し横の方の柿店は戸板の上に僅ばかりの柿を並べたる婆の顔寒さうなり。


柿店の前を過ぎ行く夜寒かな


 御成道は車少く、三橋渡れば左右飲食店建物いかめしけれど内は淋し気に見ゆ


三階の灯を消しに行く夜寒かな


 上野に上る。風無けれど咽喉ひや/\と覚えて心地善からず。


電気燈明るき山の夜寒かな


 暗き森の中をうつら/\車に揺られて少し発熱の気味なり。新坂上


見下せば灯の無き町の夜寒かな


 新坂を下れば交番所の巡査今交代とおぼしく一人戸を明けて出づれば一人戸の内に入りぬ。我今の世に正しき者小学教員巡査となりと思ひしに、此頃小学教員収賄醜聞続々世間に聞えてたのもしきは巡査ばかりとなりし心細さ。薄給にして廉なるは君子たるに庶幾(ちか)し。上下皆濁りし世の中に我只※此人を憐む。


交番の交代時の夜寒かな


 家々の門ラムプがあるは薔薇の花に映りあるは木の葉がくれにちらつく、此景根岸特色なるべし。


樫の木の中に灯ともる夜寒かな


 家に帰りつく。


暗やみに我門敲く夜寒かな




底本:「日本の名随筆72 夜」作品社
   1988(昭和63)年10月25日第1刷発行
   1999(平成11)年4月30日第7刷
底本の親本:「子規全集 第九巻」改造社
   1929(昭和4)年8月発行
入力小林繁
校正:門田裕志
2003年9月14日作成
青空文庫作成ファイル
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