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夢十夜 - 夏目 漱石 ( なつめ そうせき )

  • ●同人誌●KOF●楽園/日本一/夢十夜/京(教師)×庵(女子高生)50P
  • 朗読CD 朗読街道2「夢十夜」夏目漱石 試聴あり
  • \100~★西村知美/夢十夜
  • ③写真集【夢十夜◇西村知美】武藤義/ぶんか社
  • CD【夢十夜】 夏目漱石・新潮CD
  • 初版 夏目漱石 吾輩は猫である 倫敦塔 夢十夜 山本健吉 学研切手
  • 125●(CD)夏目漱石 夢十夜 朗読・佐藤慶
  • 夏目漱石・『四篇』・初版函・明治43年・春陽堂・「夢十夜」他
  • 【文庫】悪夢十夜-現代ホラー傑作選第4集/夏樹静子編/角川文庫
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     第一夜  こんな夢を見た。  腕組をして枕元に坐(すわ)っていると、仰向(あおむき)に寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。女は長い髪を枕に敷いて、輪郭(りんかく)の柔(やわ)らかな瓜実(うりざね)顔(がお)をその中に横たえている。真白な頬の底に温かい血の色がほどよく差して、唇(くちびる)の色は無論赤い。とうてい死にそうには見えない。しかし女は静かな声で、もう死にますと判然(はっきり)云った。自分も確(たしか)にこれは死ぬなと思った。そこで、そうかね、もう死ぬのかね、と上から覗(のぞ)き込むようにして聞いて見た。死にますとも、と云いながら、女はぱっちりと眼を開(あ)けた。大きな潤(うるおい)のある眼で、長い睫(まつげ)に包まれた中は、ただ一面に真黒であった。その真黒な眸(ひとみ)の奥に、自分の姿が鮮(あざやか)に浮かんでいる。
 自分は透(す)き徹(とお)るほど深く見えるこの黒眼の色沢(つや)を眺めて、これでも死ぬのかと思った。それで、ねんごろに枕の傍(そば)へ口を付けて、死ぬんじゃなかろうね、大丈夫だろうね、とまた聞き返した。すると女は黒い眼を眠そうに※(みはっ)たまま、やっぱり静かな声で、でも、死ぬんですもの、仕方がないわと云った。
 じゃ、私(わたし)の顔が見えるかいと一心(いっしん)に聞くと、見えるかいって、そら、そこに、写ってるじゃありませんかと、にこりと笑って見せた。自分は黙って、顔を枕から離した。腕組をしながら、どうしても死ぬのかなと思った。
 しばらくして、女がまたこう云った。
「死んだら、埋(う)めて下さい。大きな真珠貝で穴を掘って。そうして天から落ちて来る星の破片(かけ)を墓標(はかじるし)に置いて下さい。そうして墓の傍に待っていて下さい。また逢(あ)いに来ますから」
 自分は、いつ逢いに来るかねと聞いた。
「日が出るでしょう。それから日が沈むでしょう。それからまた出るでしょう、そうしてまた沈むでしょう。――赤い日が東から西へ、東から西へと落ちて行くうちに、――あなた、待っていられますか」
 自分は黙って首肯(うなず)いた。女は静かな調子を一段張り上げて、
「百年待っていて下さい」と思い切った声で云った。
「百年、私の墓の傍(そば)に坐って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから」
 自分はただ待っていると答えた。すると、黒い眸(ひとみ)のなかに鮮(あざやか)に見えた自分の姿が、ぼうっと崩(くず)れて来た。静かな水が動いて写る影を乱したように、流れ出したと思ったら、女の眼がぱちりと閉じた。長い睫(まつげ)の間から涙が頬へ垂れた。――もう死んでいた。
 自分それから庭へ下りて、真珠貝で穴を掘った。真珠貝は大きな滑(なめら)かな縁(ふち)の鋭(する)どい貝であった。土をすくうたびに、貝の裏に月の光差しきらきらした。湿(しめ)った土の匂(におい)もした。穴はしばらくして掘れた。女をその中に入れた。そうして柔らかい土を、上からそっと掛けた。掛けるたびに真珠貝の裏に月の光差した。
 それから星の破片(かけ)の落ちたのを拾って来て、かろく土の上へ乗せた。星の破片は丸かった。長い間大空を落ちている間(ま)に、角(かど)が取れて滑(なめら)かになったんだろうと思った。抱(だ)き上(あ)げて土の上へ置くうちに、自分の胸と手が少し暖くなった。
 自分は苔(こけ)の上に坐った。これから百年の間こうして待っているんだなと考えながら、腕組をして、丸い墓石(はかいし)を眺めていた。そのうちに、女の云った通り日が東から出た。大きな赤い日であった。


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