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大捕物仙人壺 - 国枝 史郎 ( くにえだ しろう )

  • ★新品未開封★非売品★NARUTO★仙人ナルトフィギュア★
  • 即決   甕仙人   森伊蔵村尾魔王
  • 携帯ストラップ 仙人カリン/カリン塔、ドラゴンボール
  • ■■ 九谷焼 「竹仙人」小茶器 ■■
  • ◆九谷染付山水仙人図4つ足獅子香炉◆翁けんか? 獅子 角福
  • 仙人の桜、俗人の桜 / 赤瀬川原平 [日本交通公社]
  • P823 在銘印 中国仙人図 古無垢軸先 紙本掛軸☆床の間山水扁額
  • 10011322 まくり 仙人図 ①
  • DB改 ワンピース DX 亀仙人&チョッパーサンタクロース 全2種
  • 即決!宇治野正杜氏作 旧なかむら&旧甕仙人 1800ml 中村酒造場
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1  女軽業の大一座が、高島城下小屋掛けをした。  慶応末年の夏の初であった。
 別荘の門をフラリと出ると、伊太郎(いたろう)は其方(そっち)へ足を向けた。
「いらはいいらはい! 始まり始まり!」と、木戸番の爺(おやじ)が招いていた。
「面白そうだな。入って見よう」
 それで伊太郎木戸を潜った。
 今、舞台では一人の娘が、派手やかな友禅振袖姿で、一本の綱を渡っていた。手に日傘をかざしていた。
浮雲(あぶな)い浮雲い」と冷々しながら、伊太郎は娘を見守った。
綺麗太夫(たゆう)じゃありませんか」
「それに莫迦上品ですね」
「あれはね、座頭の娘なんですよ。ええと紫錦(しきん)とか云いましたっけ」
 これは見物の噂であった。
 小屋を出ると伊太郎は、自分の家へ帰って来た。いつも物憂そうな彼ではあったがこの日は別(わ)けても物憂そうであった。
 翌日|復(また)も家を出ると、女軽業の小屋を潜った。そうして紫錦の綱渡りとなると彼は夢中で見守った。
 こういうことが五日続くと、楽屋の方でも目を付けた。
「オイ、紫錦さん、お芽出度(めでと)う」源太夫皮肉に冷かした。「エヘ、お前|魅(みい)られたぜ」
「ヘン、有難い仕合せさ」紫錦の方でも負けてはいない。「だがチョイと好男子(いいおとこ)だね」
「求型(もとめがた)という所さ」
「一体どこの人だろう?」
「お前そいつを知らねえのか。――伊丹屋(いたみや)の若旦那だよ」
「え、伊丹屋? じゃ日本橋の?」
「ああそうだよ、酒問屋(さかどんや)の」
「だって源ちゃん変じゃないか、ここはお前江戸じゃないよ」
信州諏訪でございます」
「それだのにお前伊丹屋の……」
「ハイ、別荘がございます」
「おやおやお前さん、よく知ってるね」
ちょっと心配になったから、実はそれとなく探ったやつさ」
「おや相変らずの甚助(じんすけ)かえ」紫錦ははすっぱに笑ったが「苦労性だね、お前さんは」
「何を云いやがるんでえ、箆棒(べらぼう)め、誰のための苦労だと思う」
「アラアラお前さん怒ったの」
 面白そうに笑い出した。
「おい紫錦、気を付けろよ、いつも道化じゃいねえからな」
「紋切型さね、珍らしくもない」
 紫錦はすっかり嘗めていた。
 ところでその晩のことであるが、桔梗屋(ききょうや)という土地茶屋から、紫錦へお座敷がかかって来た。
「きっとあの人に相違(ちがい)ないよ」こう思いながら行って見ると、果して座敷に伊太郎がいた。
 さすがに大家若旦那だけに、万事|鷹様(おうよう)に出来ていた。
 酒を飲んで、世間話をして――いやらしいことなどは一言も云わず、初夜前に別れたのである。
 ホロ酔い機嫌で茶屋を出ると、ぱったり源太夫と邂逅(でっくわ)した。待ち伏せをしていたらしい。
「源ちゃんじゃないか、どうしたのさ」
「うん」と彼イライラしそうに「彼奴(あいつ)だったろう? え、客は?」
言葉が悪いね、気をお付けよ。彼奴だろうは酷(ひど)かろう」紫錦は爪楊枝(つまようじ)を噛みしめた。
「いつお前お姫様になったえ」源太夫皮肉に出た。
「たった今さ。悪いかえ」
小屋者からお姫様か」
「そういきたいね、心掛けだけは」
 小屋の方へ二人は歩いて行った。
 源太夫というのは通名(とおりな)で、彼の実名は熊五郎であった。親方には実の甥で、紫錦とは従兄弟にあたっていた。
 その翌晩のことであるが、また同じ桔梗屋から紫錦にお座敷がかかって来た。
「行っちゃ不可(いけ)ねえ、断っちめえ」
 熊五郎は止めにかかった。
「いい加減におしよ、芸人じゃないか」
 紫錦は衣裳を着換えると、念入りにお化粧をし、熊五郎に構(かま)わず出かけて行った。
 気を悪くしたのは熊五郎であった。
「へん、どうするか見やアがれ」
 恐ろしい見幕(けんまく)で怒鳴(どな)り声をあげた。



 同じ一座の道化役、巾着(きんちゃく)頭のトン公(こう)は、夜中にフイと眼を覚ました。
 ヒューヒューヒューヒューヒューヒューと、口笛の音が聞こえてきた。
「はアてね、こいつアおかしいぞ」
 首を擡(もた)げて聞き澄ましたが、にわかにムックリ起き上った。周囲(まわり)を見ると女太夫共が、昼の劇(はげ)しい労働疲労(つかれ)、姿態(なりふり)構わぬ有様で、大|鼾(いびき)で睡っていた。
 それを跨(また)ぐとトン公は、楽屋梯子(ばしご)を下へ下りた。
 暗い舞台の隅の方から、黄色い灯(ひ)の光がボウと射し、そこから口笛聞こえてきた。
 誰か片手に蝋燭を持ち、檻の前に立っていた。と、檻の戸が開いて、細長黄色生物が、颯(さっ)と外へ飛び出して来た。
「おお可(よ)し可し、おお可し可し、ネロちゃんかや、ネロちゃんかや、おお可(い)い子だ、おお可い子だ……」
 口笛が止むとあやなす声が、こう密々(ひそひそ)と聞こえてきた。フッと蝋燭の火が消えた。しばらく森然(しん)と静かであった。


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