太郎と街 関連リンク

梶井 基次郎 のオススメ作品

作家別索引

作品別索引

太郎と街 - 梶井 基次郎 ( かじい もとじろう )

  • ゲゲゲの鬼太郎 セル画23 鬼太郎(鬼太郎の家の中)
  • ゲゲゲの鬼太郎 セル画22 鬼太郎と猫娘(鬼太郎の家の中)
  • ゲゲゲの鬼太郎 セル画E 鬼太郎と目玉おやじ(鬼太郎家)難あり
  • ゲゲゲの鬼太郎 セル画A 鬼太郎と目玉おやじ(鬼太郎の家)
  • Huカード■桃太郎伝説ターボ+桃太郎活劇+スーパー桃太郎電鉄Ⅱ
  • ゲゲゲの鬼太郎 セル画 鬼太郎とユメコ(鬼太郎の家の前)
  • 小栗虫太郎 海螺斎沿海州先占記 日本幻想文学集成 松山俊太郎
  • ■夢■mo5-9 十二代 中里太郎右衛門作 唐津作太郎茶碗揃 六客
  • 『大鉄人17』栄光社1977文字お稽古帳■石ノ森章太郎石森章太郎
  • とっとこハム太郎 こっちむいてよハム太郎 (未開封)
次のページ
 秋は洗ひたての敷布(シーツ)の樣に快かつた。太郎第一の街で夏服を質に入れ、第二の街で牛肉を食つた。微醉して街の上へ出ると正午のドンが鳴つた。
 それを振り出しに第三第四の街を歩いた。飛行機が空を飛んでゐた。新鮮な八百屋があつた。魚屋があつた。花屋があつた。菊の匂ひは街へ溢れて來た。
 呉服屋があつた。菓子屋があつた。和洋煙草屋があり、罐詰屋があつた。街は美しく、太郎の胸はわくわくした。眼は眼で樂しんだ。耳は耳で樂しんだ。鼻も敏捷な奴で、風が送つて來るものを捕へては貪り食つた。
 太郎は巨大な眼を願望した。街は定まらない繪畫であつた。幻想的なといへば幻想的な、子供だましのポンチ繪には、土瓶が鉢卷をして泳いでゐたり、日の丸の扇で踊つてゐたりするのがあるが、ブーブー唸つて走つてゐる自働車などを見れば吹き出したくなる位だ。菓子屋のドロツプやゼリビンズは點描派(ポアンチユリスト)の畫布の樣だし、洋酒瓶の竝んだ棚はバグダツドの祭の樣だ。
 飛行機がまたやつて來て、あたりは樹木に埋つた公園であつた。太郎は十錢を拂つて動物園へ入つた。此所なんぞ入場料十圓也と觸れ出せば、紳士淑女は雜鬧し、雜誌は動物園の詩で埋まるに違ひない。水族館まで見て來ると、太郎はたうとう熱い溜息を洩らした。そこを出ると知らない街へ入つた。華かな夕暮が來て、空は緋の衣で埋まつた。それを目がけて太郎は歩いた。後ろから月が昇つたらまたその方へ歩く積りだ。いよいよ夜がやつて來て、先づ全市の電燈をつけた。三日月があがつたと思つたら直ぐ沈んだ。星が出て來ては挨拶をし、出て來ては挨拶を交した。太郎帽子が振りたくなつた。
 洋館の三階の窓。そこからは何がみえるのだらう。若い男が思ひに沈んだハモニカを吹いてゐた。塗料の匂ひがする、醫療器具屋の前だ。女の兒が群れて輪になり、歌を歌つては空へ手を伸した。子守娘が竝んでゆく。燒鳥屋は店を持ち出した。その下へはもう尨犬がやつて來てゐる。
 太郎は巨大な脚を願望した。また思つた。凡そこの地球面白い星はあるまい。鞠をかゞる青い絲や赤い絲の樣に、地球をぐるぐる歩いてゆき度い。廻轉して朝と晝と夜を見せて呉れ、航海しては春・夏・秋・冬を送つてくれる地球だ。圓い臺(うてな)の上になり下になり、下になつても頭へ血が寄るといふことなく、大地を踏めばいつも健康だ。杳かな創世の日から勞働爭議の今日に至るまで、積みかさね積みかさねられたものがそこにある。偉大な精神は將星で、私はオノコロ島に産れて來た志願兵だ。オ一二、オ一二、太郎は歩いた。昂奮して。


次のページ

梶井 基次郎 (かじい もとじろう) 以外のオススメ作品

太郎と街 (たろうとまち) のリンク元

「太郎と街-梶井 基次郎」の関連ページ


関連ページ
Web Services by Yahoo! JAPAN