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宇宙戦隊 - 海野 十三 ( うんの じゅうざ )

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  作者より読者の皆さんへ  この小説に出てくる物語は、今からだいぶん先のことだと思ってください。つまり未来小説であります。今から何年後のことであるか、それは皆さんの御想像にまかせます。しかしそれは百年も二百年も先のことではなく、あんがい近い未来に、このような事件がおこるのではないかと、私は考えています。
 それはそれとして、私たちは油断をしてはなりません。科学技術とは、国防のために、また人類幸福のために、新しい方面にむかって、どんどんきりひらいていかねばなりません。深い科学研究と、奇想天外発明を一刻も早くつみあげていかないと、私たちも私たちの国も、とつぜんおそろしい危機をむかえなければならないでしょう。
 今日航空戦隊は、やがて「宇宙戦隊」の時代にかわっていくことでしょう。数千メートルの高空を飛んで、敵機部隊のま上にとびかかる航空戦隊、さらに成層圏(せいそうけん)を征服して、数時間太平洋大西洋を横ぎり、敵の首都に達し、大爆撃を行うことになるはずの、明日航空戦隊――それをもっともっと強くりっぱなものにして、やがて「宇宙艦」をもって、大宇宙を制圧するまでに進めなければなりません。
 それはいったい誰がするのでしょうか。もちろんそれは、皆さんがた今日日本少国民たちが、大人になったときにするのです。よわい民族ではできないことです。すぐれた科学技術を、つよい民族が使うのでなくては、とてもこのむずかしい仕事、この苦しい仕事をやりとげることはできません。
 しかしその仕事がむずかしく、また苦しいだけに、それに成功したときのうれしさは、今ちょっと考えただけでも愉快なことではありませんか。日本少国民の皆さん、どうぞしっかりやってください。


   奇妙死骸(しがい)

 ここに一つの奇妙死骸が、地底七百メートル坑道の中で発見された。坑道というのは、鉱石をほりだすため、地の底へむけてほった穴の中のことだ。
 その奇妙死骸は、たしかに金属と思われるもので作られたかたい鎧(よろい)で、全身を包んでいたのだ。
 しかしその姿は、じつにふしぎな、そしてめずらしいものであった。それを見つけた人々は、なんとかしてその死骸の姿に似たようなものを、これまでに見た雑誌写真や、映画などから思い出そうとしたが、だめであった。まったく今までに、それに似かよったものが見あたらないのだ。
 だが、それが一つの死骸であることだけはわかった。首もあるし、胴も手足もあったから……。眼もちゃんと二つあるし、鼻もあった。口もあり、耳もあった。たしかに人間の持っている顔の道具はそろっていた。
 こういう風(ふう)にのべると、あたりまえの人間と、あまりかわらないように聞えるが、さてもっとくわしく全身を見て行くと、これもふしぎ、あれもへんだと、次々に奇妙なことが発見されるのであった。
 まずその死骸の色であるが、前にものべたとおり、たしかに金属で作ったと思われるかたい鎧で全身を包んでいたが、その色は、目のさめるような緑色であった。毎年五月になると、木々のこずえには若葉がしげり、それが太陽の光をうけてあざやかな緑色にかがやくが、あの若葉のような緑色であった。
 緑色金属――そんなものは、あまり見かけたことがない。私たちの知っている金属といえば、たいてい銀色に光っているとか、さびて黒くなっているとか、朱色になっているのがふつうであった。この緑色金属は、いったい何という金属であろうか。
 死骸のこの緑色にひきつけられて、じっと見つめていた人々は、やがてなんとなく嘔(は)き気をもよおしてきた。熱帯にすむ青いとかげのことを思い出したからであろう。
 しかし何よりも人々にふしぎな思いをいだかせたのは、その死骸の顔であった。顔というよりも、ふしぎな首といった方がよいかもしれない。
 三本の角(つの)が、頭の上に生(は)えていた。二本なら牛や鬼と同じであるが、それよりももう一本多い。そしてその角は前の方に二本生えていて、もう一本はすこし後にあった。後の角は半分ばかり土の中にめりこんでいた。
 その角が、牛の角や鬼の角とはちがい、奇妙な形をしていた。太鼓(たいこ)をうつ撥(ばち)という棒がある。その撥には、いろいろな種類があるが、棒のさきに丸い玉のついた撥があるのをごぞんじであろう。死骸の角は、じつにその撥のような形をしていて、角の先に丸い玉がついていた。太さは鉛筆をすこし太くしたくらいであった。
 その角は、糸をまいたように、横にしわがあった。そこに集っていた一人がおそるおそる、その角をつかんでひっぱってみた。すると、まるで鎖でもひっぱり出すように、角がずるずると長くのびてきて、一メートルほどになったので、その人は、きゃっと悲鳴をあげて手をはなした。
 すると毒蛇のようにのびた角は、ゴムがちぢまるように、するするぴちんとちぢんで、もとのように短くなった。
 目は、大きな懐中時計くらい大きく、そして厚いレンズをはめこんだように、ぎらぎら光っていた。


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