将棋 関連リンク

菊池 寛 のオススメ作品

作家別索引

作品別索引

将棋 - 菊池 寛 ( きくち かん )

  • 14-605 日榮堂◆囲碁*将棋◆将棋盤*碁石*将棋駒など◆多数セット
  • 14-606 日榮堂◆囲碁*将棋◆将棋盤*碁石*将棋駒など◆多数セット
  • ♪~コンピュータ将棋世界大会3位 将棋2 最強 銀星将棋に7勝3敗
  • 【ファミコン】本将棋 内藤九段将棋秘伝
  • 12-207 日榮堂◆囲碁*将棋用品*駒台*碁石*将棋盤など◆多数
  • 14-210 日榮堂◆囲碁*将棋用品*将棋駒*碁笥など◆未使用品*多数
  • 最強将棋激指スペシャル 15回世界コンピュータ将棋選手権優勝
  • 【中古】SS 本格将棋指南 若松将棋塾
  • 将棋新理論/谷川浩司(最強将棋塾)160e
  • 将棋駒 山峯作 探山書 検黄楊駒師銘有り囲碁将棋盤
次のページ
 はとにかく愉快である。盤面の上で、この人生とは違つた別な生活と事業がやれるからである。一手一手が新しい創造である。冒険をやつて見ようか、堅実にやつて見ようかと、いろ/\自分の思ひ通りやつて見られる。而(しか)も、その結果が直ちに盤面に現はれる。その上、遊戯とは思はれぬ位、ムキになれる。昔、インドに好戦の国があつて、戦争ばかりしたがるので、侍臣が困つて、王の気持を転換させるために発明したのが、将棋だと云ふが、そんなウソの話が起る位、将棋面白い。金の無い人が、その余生の道楽として、充分楽しめるほど面白いものだと思ふ。
 将棋の上達方法は、誰人(だれ)も聴きたいところであらうと思ふが、結局|盤数(ばんかず)を指すのが一番だと思ふ。殊(こと)に、自分より二枚位強い人に、二枚から指し、飛香(ひきやう)、飛、角、香と上つて行くのが、一番たしかな上達方法だと思ふ。
 自分二十五六のときには、初段に二十段位だつた。つまり、初段に大駒二枚位だつたと思ふ。その頃京都にゐたが自分が行つてゐた床屋の主人が、将棋が強かつたので、よくこの人と指した。最初は二枚|落(おち)だつたが、飛車落までに指し込んだ。それから東京へ来た。大正八年頃から、湯島天神下の会所へ通つた。茲(こゝ)の主人は、館花浪路(たてはななみぢ)と云ふ老人で、井上八段の門下で、幸田露伴先生とは同門だつた。時々幸田さんのところへお相手に行つてゐた。この老人は、会所を開くとき、所々の将棋会に出席して賞品の駒や将棋盤を沢山かせぎためて、それで会所を開いたと云ふのだから、可なりの闘将だつたのだらう。この人に自分は、最初二枚を指した。二枚は局|半(なかば)にして相手が、駒を投じた。其後(そのご)飛香落から平手(ひらて)までに指し進んだ。この会所に、三好さんと云ふ老人がゐた。此(この)人は将棋家元大橋家最後の人たる大橋宗金(そうきん)から、初段の免状を貰つてゐると云ふ珍らしい人だつた。よく将棋の古実などを話してくれた。ものやはらかいしかし皮肉江戸つ子で、下手(したて)には殊に熱心に指してくれた。この人も飛香落から指して、平手に進んだ。この頃は、自分として、一番|棋力(きりよく)の進んだときだと思ふ。この会所で、今の萩原六段と知り合になつた。大阪から来たばかりの青年で、まだ土居さんに入門しない前だつた。香落で指して、滅茶苦茶に負けた。恐らく飛角香位違つてゐた。
 とにかく、二枚位違ふ人に、だん/\指し進んで行くことは自分棋力進歩が見えて、非常愉快なことである。しかしさう云ふ場合は、絶えず定跡(ぢやうせき)の研究が必要である。二枚落で指してゐるときは二枚落の定跡を、飛香落で指してゐるときは飛香落の定跡をと、定跡研究を進めて行くべきである。
 将棋をうまくならうと思へば、定跡は常に必要である。殊に初段近きまたはそれ以上の上手と指す場合定跡を知つてゐると云ふことは、第一条件である。定跡を知らないで上手(うはて)と指すことは、下駄履きで、日本アルプスへ登るやうなつまらない労力の浪費である。例へば、二枚落を指す場合、六五歩下手が角道(かくみち)を通すか通さないかは、山崎合戦で、天王山占領するか否か位の大事な手である。自分など下手と二枚落を指し、下手が五六歩と突いて来ないと、こりや楽だと安心するのである。語を換へて云へば、六五歩と角道を通す手を知らないで上手と二枚落を指すことは、槍の鞘を払はないで突き合つてゐるやうなものである。
 飛香落にも、角落にも、飛落にも、ゼヒとも指さなければならない手があるのである。だから、かう云ふ手を知らないで、戦つたのでは勝てるわけはないのである。しかし、もし六五歩と云つたやうな二枚落の定跡のABCを知らずに、上手と指して勝てる場合があつたら、それは上手がそれだけの力がないので、所謂手合違ひの将棋である。そんな場合は角落の違位しかないのである。語を換へて云へば、定跡を知らなかつたら、上手に向つて角一枚位は損である。定跡を知れば、飛角でも勝てるのが、定跡を知らなければ二枚でも勝てないのである。
 玄人(くろうと)と指した場合、玄人が本当に勝負をしてゐるのか、お世辞に負けたりしてゐるのではないかと云ふことは、頭のいい人なら、誰にでも気になるだらう。「若殿の将棋桂馬の先が利き」といふ川柳があるが、それと同じやうに玄人相手のときは、勝敗とも本当でないやうに考へられる。
 しかし、現今の棋士は、相当の人格を備へてゐるから、追従負(つゐしようまけ)などはしないと信じていゝと思ふ。


次のページ

菊池 寛 (きくち かん) 以外のオススメ作品

将棋 (しょうぎ) のリンク元

「将棋-菊池 寛」の関連ページ


関連ページ
Web Services by Yahoo! JAPAN