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幸坊の猫と鶏 - 宮原 晃一郎 ( みやはら こういちろう )

  • f5/復原国宝仏画/宮原柳僊/佼成出版社/1969年/宮原柳僊新作仏画
  • SCRAMBLE / 宮原 学
  • 宮原学 FLASH BACK KAI FIVE シュガー・ベイブ 廃盤CD
  • CDミニアルバム 宮原学 COOL DOWN
  • も?っと!おジャ魔女どれみ★こむろゆいMAHO堂(宍戸留美/宮原永海
  • BABY’S BREATH/SUN GOES DOWNベイビーズブレス宮原学/小田原豊
  • BABY'S BREATH II ~ROCK ALIVE~★ベイビーズ・ブレス★宮原学
  • LP 宮原学 『READY STEADY GO』
  • 宮原学 ready steady go 15ah-2133
  • 土橋安騎夫廃盤CD「クロニクルズ」レベッカ・宮原芽映
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    一  幸坊(かうばう)のうちは、ゐなかの百姓でしたから、鶏を飼つてゐました。そのうちに、をんどりはもう六年もゐるので、鶏としては、たいへんおぢいさんのはずですが、どういふものか、この鳥にかぎつて、わか/\しくしてゐました。まつ白な羽はいつも生えたてのやうに、つや/\して、とさかは赤いカンナの花のやうにまつ赤で、くちばしや足は、バタのやうに黄いろでした。
 幸坊が餌(ゑ)をもつていくと、このをんどりがまつ先きにかけて来ます。幸坊がわざと、ぢらして餌をやらないと、をんどりは片足をあげながら、首をかしげて、ふしぎさうに餌箱を見上げますが、幸坊が笑ひながら、やつぱり餌をくれないでゐると、とう/\たまらなくなつてクウ/\と小さな声で鳴きます。
「幸ちやん、幸ちやん。ちやうだいな。そんな、いぢわるをしないで……」
 さう言つてゐるやうに聞えます。
「やるよ、やるよ。さア/\。」
 幸坊は、かはいさうになつて、餌をまいてやると、そこへ、いきなり、まつ黒な猫(ねこ)が一ぴきとび出してきます。ほかの鶏はびつくりして、クワツ/\と叫んでにげますけれど、をんどりだけはなか/\勇気があつて、ちよつと首をあげて、グウとのどをならして、猫をにらみます。猫は面白がつて、飛びつきさうにしますと、をんどりは頭を下げ、首の毛をさかだてゝ、猫がそばに来たら、目をつゝいてやらうと、まちかまへてゐます。
「黒や、もうおよしよ。とうとがきらふからね。」
 幸坊はさう言つて、黒をだきあげて、そのつめたい鼻の先をじぶんの頬(ほ)つぺたにぴつたりとつけ、ビロードのやうなその背をなでてやります。黒は甘えて、のどをゴロ/\音させながら、するどい爪(つめ)で、しつかり幸坊の着物にすがりついてゐるのです。


    二

 或日(あるひ)、幸坊(かうばう)が学校の当番で、おそくうちへかへりました。すると、お母さんが、困つた顔をしてかう言ひました。
「幸や、あのね。をんどりが見えなくなつたよ。そこらの藪(やぶ)にでも入つてゐないか見ておいで。悪い狐(きつね)が出るけれど、まさか昼だから、狐がとつたんでもあるまい。」
 幸坊はほんとにびつくりしました。あのうつくしい、かはいゝをんどりがゐなくなつたのか。それは大へんなことだ。どうしてもさがし出して来なければならないと思つて、肩からかばんをおろすとすぐ一本の竹切れをとつて、出かけようとしますと、どこからか黒(くろ)が出て来て、にやあんと鳴きながら、あとをついて来ます。
「黒や、いけないよ。おかへり。ぼくはね、をんどりのとうとをさがしにいくんだからね。おまいが犬だとつれていつて、さがす手つだひをさせるんだけれど、猫(ねこ)ぢやだめだ。」
 幸坊はしきりに黒を追ひかへさうとしますけれど黒はなか/\かへりません。仕方がないから、ほうつておくと、黒はさつさと先にいつて、畑の向うにある大きな森の中にはいつてしまひました。幸坊はをんどりばかりでなく、黒までゐなくしては大へんだと思つて、
「黒や、黒や。」と大きな声を出してよびますけれどどこへ行つたものやら、わかりません。
 森の中は、木の葉や、下草のために、昼でもまつ暗なのに、もう夕方が近いので、なほさら暗かつたのです。
「とうと、とうと、とうと。」
 幸坊は一しやうけんめいに声を出して、森の中を歩いてゐますけれど、をんどりは出て来ません。そのうち、どうしたことか、いつも馴(な)れきつてゐる森の中で、すつかり路(みち)をまよつて、どうしても出られなくなりました。
 今は、もう鶏や猫などにかまつてをれません。じぶんがどうしてこの森をぬけ出さうかと、困つてゐるとき、ふと向うに小さなうちを見つけました。
「まアよかつた。」と、幸坊は胸をなでおろして、そこへいきかけますと、その小さなうちの、かたくしめてある窓の下に、一ぴきの狐が、はうきのやうな大きな尾を地べたにひいて、おしりをすゑて、しきりにその窓を見てゐます。さて変だなと思つて、幸坊は立どまつて、ぢつと狐のすることに気をつけてゐました。すると、狐はやさしい、やさしい声を出して、かううたひました。――

カツカコー、かはいゝ鶏(とり)ちやん、
金の冠をもつたかはいゝ鶏(とり)ちやん、
つや/\光つた、かはいゝ小頭、
絹のおひげをたらした鶏(とり)ちやん、
窓をごらんな、小さな窓を、
こゝに、りつはな人が来て、
おいしいお豆をまいてゐる、
それでもだれもひろやせぬ。

 すると、小さな窓があいて、ひよつこり小さな頭を出したのは、幸坊のをんどりでした。
「あらツ! とうとがゐる!」
 幸坊が声をあげて、走り出したときには、もうおそかつたのです。狐はすぐとうとにとびついて、とうとをとつて、じぶんの巣へくはへて走りました。
「あれ、黒ちやん、狐がわたしをとつてまつ暗な森へ、私(わたし)の知らないところへつれて行く。


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