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幸運の黒子 - 海野 十三 ( うんの じゅうざ )

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  • 【訳あり】ティッシュケース*ふくろう和柄ワイン地 幸運 縁起物
  • A7S030香る聖油ファーストラック すぐに幸運を手に入れる
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  • ◎太16mm幸運の石!水晶パワーストーン男の黒ロンデルS45
  • ジャックヒギンズ ルチアノの幸運 初版帯 冒険小説 マフィア即決
  • 幸運◆天然石ラピスラズリ8ミリ6ミリペンダントネックレスC904
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「どうして、おれはこう不運なんだろう」  病院の門を出ると、怺(こら)えこらえた鬱憤(うっぷん)をアスファルトの路面に叩(たた)きつけた月田半平(つきだはんぺい)だった。  院長は、なーに大丈夫ですよ、こんな病気なら注射五十本もやれば造作なく治りますよ。ただし五十本が一本欠けても駄目ですよ、それをお忘れのないように――と言った。一回三円として、百五十円の金がいるわけだ。ああ、これがたった一度の代償なんだ。
 たった一度――というのは、すこし説明を要するが、この半平は元来、貞操堅固の男だったのを友人達が引っ張り出して、東都名物私娼窟(ししょうくつ)玉(たま)の井(い)へ連れていったのだった。これは友人にも多少の悪巧みはあったにしても、主たる動機は半平という男が細君に死別してからまる二年この方、空閨(くうけい)を貞淑に守りつづけているのを見ちゃいられなかったせいだった。そして半平は、あくまでも亡妻への貞操を死守するつもりだったのである。彼のエネルギッシュな敵娼(あいかた)の理解を得ることができず、ついに暴力をもって征服されちまったのである。
 そして、数日後に半平は身体(からだ)の一部異常発見したのだった。彼にとって、それは踏んだり蹴(け)ったりの不運だった。
 いや、それよりも差し当たり問題なのは、あと四十九回の治療代をどうして捻出(ねんしゅつ)すべきかということだった。
 これが五年前なら五千円の貯金があった。その年の暮れ三千円というものを費(つか)って新妻を持った。その細君はさらに次の年に慢性病になり、転地療養をすることになって残額の二千円はばたばたとなくなってしまった。そして貯金通帳から、最後五十銭までが奇麗に払い出されると、間もなく細君の寿命も、天国に回収されてしまった。彼はまったく無一文になったのだった。
四十九回の注射をやらなければ、この身がだんだん腐っていく!)
 こうなると、半平は泣いてばかりもいられなかった。
 三日三晩考え抜いた揚句、やっとの思いで彼は案外手近に一つの案を発見したのだった。

「どうだったね。貸してくれたかい」
 半平は下宿の二階に待っていてくれた友人、川原剛太郎(かわはらごうたろう)の顔を見るが早いか、こう声をかけたのだった。その友人は××生命へ出ている男だった。
「うん、貸してくれたがね」
 友人煙草(たばこ)の煙を忙(せわ)しそうに喫(す)った。
「きみの言うほどは駄目だったよ」
「じゃ、いくら貸したい。二百円か」
「うんにゃ、その半分。百円だあ」
「ちぇっ、百円ぽっちか、それじゃ治療代にも足りゃしない」
 半平は川原の××生命へ、一万円の保険を掛けているのだった。この際、払込金の一部を低利で貸してもらおうと思って川原に交渉を頼んだのだったが、それが最高百円ではすっかり予想を裏切ってしまった。
「どうも気の毒だがね、どうにも仕様がないよ。これがきみの細君の保険だったら、ここんとこできみは一万円の紙幣束(さつたば)を掴(つか)んでいるはずだった」
「そういえば、なるほど。どうしておれはこう不運なんだろう!」
不運といえば、思い出したがね」
 友人の川原は改まった口調で語りだした。
神龍子(しんりゅうし)という観相家の話を聞いたんだが、きみ、幸運黒子(ほくろ)というのがあるんだ。顔にできている黒子といえば普通鼻筋中心として左側にあるに決まっていて、右側にあるのは非常に稀(まれ)なんだそうだ。そう言われて気をつけて人の顔を見ていると、なるほど顔の黒子はみな左側にあるね。ところで、右側に黒子のある人間全然いないかというと、そうでもないのだ。極めて稀だが、あるにはある。そして右側に黒子のある人はたいへん幸運なんだそうだよ。きみもいつまでも鰥夫(やもめ)でいずに、今度は幸運黒子のある若い女でも探し当てて再婚してはどうかね」
 たいへん耳寄りな話だった。
 自分の顔に幸運黒子を植えつけるわけにはいかないが、鮮やかな幸運黒子を持つ若い女を女房に持てば相当運が向いてくるだろう。
「そりゃ本当かい」
 半平は問い返さずにはいられなかった。
神龍子の言うことだもの、絶対に信用が置けるさ」
 友人は半平の懐疑を嘲(あざけ)るように言った。

「それでも、五分間ほどこのまま安静にしていてください」
 院長は注射器とアンプルの殻とを、看護婦に手渡しながら言った。
「最初のうちは、どうしても注射反応は強いですよ。まだ二回目だからな。では、お静かに」
 そう言って、院長は部屋を出ていった。あとには看護婦が残って、手術器械をカチャカチャと片づけているばかりだった。
「あ、そんなに――」
 頓狂(とんきょう)な声を上げて、看護婦が飛んできた。
「お動きになってはいけません。痛みますか。もし……」
 目を閉じていた半平の顔のあたりに、若い女の体臭がむんむん匂(にお)ってきた。彼は昂奮(こうふん)で締めつけられるようだった。


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