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文学好きの家庭から - 芥川 竜之介 ( あくたがわ りゅうのすけ )

  • ■ 『日本の文学 中野重治』 近代文学日本文学文学評論 ■
  • 清水義範★日本文学全集第1集/世界文学全集第Ⅰ・Ⅱ期/+おまけ
  • *柄谷行人 日本近代文学の起源 講談社文芸文庫版 文学史 即決
  • 貴重文献「九州文学」・第16・第17号・地方文学 レア・絶版
  • 昭和2年発行 日本文学29 佐藤春夫 里見 改造社 文学
  • q/脇田勇 ある英文学徒の遍歴 英文学者/大学教授の回想記 即決
  • 島尾敏雄 死の棘 日本文学大賞・読売文学賞
  • 片岡良一著作集 第八巻『大正文学研究・昭和文学序説』 中央公論
  • 日本児童文学別冊・過度期の児童文学・昭和55年7月10日発行
  • アメリカ文学思潮史―社会と文学 (増補版)
芥川龍之介  私の家は代々お奥坊主(おくぼうず)だったのですが、父も母もはなはだ特徴のない平凡人間です。父には一中節(いっちゅうぶし)、囲碁盆栽俳句などの道楽がありますが、いずれもものになっていそうもありません。母は津藤(つとう)の姪(めい)で、昔の話をたくさん知っています。そのほかに伯母(おば)が一人いて、それが特に私のめんどうをみてくれました。今でもみてくれています。家(うち)じゅうで顔がいちばん私に似ているのもこの伯母なら、心もちの上で共通点のいちばん多いのもこの伯母です。伯母がいなかったら、今日(こんにち)のような私ができたかどうかわかりません。
 文学をやることは、誰(だれ)も全然反対しませんでした。父母をはじめ伯母もかなり文学好きだからです。その代わり実業家になるとか、工学士になるとか言ったらかえって反対されたかもしれません。
 芝居小説はずいぶん小さい時から見ました。先(せん)の団十郎(だんじゅうろう)、菊五郎(きくごろう)、秀調(しゅうちょう)なぞも覚えています。私がはじめて芝居を見たのは、団十郎斎藤内蔵之助(さいとうくらのすけ)をやった時だそうですが、これはよく覚えていません。なんでもこの時は内蔵之助が馬をひいて花道(はなみち)へかかると、桟敷(さじき)の後ろで母におぶさっていた私が、うれしがって、大きな声で「ああうまえん」と言ったそうです。二つか三つくらいの時でしょう。小説らしい小説は、泉鏡花(いずみきょうか)氏の「化銀杏(ばけいちょう)」が始めだったかと思います。もっともその前に「倭文庫(やまとぶんこ)」や「妙々車(みょうみょうぐるま)」のようなものは卒業していました。これはもう高等小学校へはいってからです。



底本:「羅生門・鼻・芋粥」角川文庫角川書店
   1950(昭和25)年10月20日初版発行
   1985(昭和60)年11月10日改版38版発行
入力:j.utiyama
校正:かとうかおり
1999年1月12日公開
2004年3月7日修正
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