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旅なかま - アンデルセン ハンス・クリスチャン ( アンデルセン ハンス・クリスチャン )

  • WCCF 01-02/A13/白◇ クリスティアン・ゼノーニ
  • WCCF 06-07/280/白◇ クリスティアン・ブロッキ*
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REJSEKAMMERATEN ハンス・クリスティアンアンデルセン Hans Christian Andersen 楠山正雄訳  かわいそうなヨハンネスは、おとうさんがひどくわずらって、きょうあすも知れないほどでしたから、もうかなしみのなかにしずみきっていました。せまいへやのなかには、ふたりのほかに人もいません。テーブルの上のランプは、いまにも消えそうにまばたきしていて、よるももうだいぶふけていました。
「ヨハンネスや、おまえはいいむすこだった。」と、病人おとうさんはいいました。「だから、世の中へでても、神さまがきっと、なにかをよくしてくださるよ。」
 そういって、やさしい目でじっとみながら、ふかいため息をひとつつくと、それなり息をひきとりました。それはまるでねむっているようでした。でも、ヨハンネスは泣かずにいられません、この子はもう、この世の中に、父親もなければ、母親もないし、男のきょうだいも、女のきょうだいもないのです。かわいそうなヨハンネス。ヨハンネスは、寝台のまえにひざをついて、死んだおとうさんの手にほおずりして、しょっぱい涙をとめどなくながしていました。そのうち、いつか目がくっついて、寝台のかたい脚にあたまをおしつけたなり、ぐっすり寝こんでしまいました。
 寝ているうちに、ヨハンネスは、ふしぎな夢をみました。お日さまとお月さまとがおりて来て*礼拝をするところをみました。それから、なくなったおとうさんが、またげんきで、たっしゃで、いつもほんとうにうれしいときするようなわらい声をきかせました。ながい、うつくしい髪の毛の上に、金のかんむりをかぶったうつくしいむすめが、ヨハンネスに手をさしのべました。するとおとうさんが「ごらん、なんといいおよめさんをおまえはもらったのだろう。これこそ世界じゅうふたりとないうつくしいひとだ。」といいました。おや、とおもうとたん、ヨハンネスは目がさめました。うつくしい夢はかげもかたちもなくて、おとうさんは死んで、つめたくなって、寝台にねていました。たれひとりそこにはいません。なんてかわいそうなヨハンネス。

*ヨセフまたひとつ夢をみてこれをその兄弟に述べていいけるは我また夢をみたるに日と月と十一の星われを拝せりと。(創世記三七ノ九)

 次の週に、死人はお墓の下にうまりました。ヨハンネスはぴったり棺(かん)につきそって行きました。これなりもう、あれほどやさしくしてくださったおとうさんの顔をみることはできなくなるのです。棺の上にばらばら土のかたまりの落ちていく音を、ヨハンネスはききました。いよいよおしまいに、棺の片はしがちらっとみえました。そのせつな、ひとすくい土がかかると、それもふさがってしまいました。みているうち、いまにも胸がちぎれそうに、かなしみがこみあげて来ました。まわりでうたうさんび歌がいかにもうつくしくきこえました。きくうちヨハンネスは、目のなかに涙がわきだして来ました。で、泣きたいだけ泣くと、かえって心持がはっきりして来ました。お日さまが、みどりぶかい木立(こだち)の上に晴ればれとかがやいて、それは「ヨハンネス、そんなにかなしんでばかりいることはないよ。まあ、青青とうつくしい空をごらん。おまえのとうさんも、あの高い所にいて、どうかこのさきおまえがいつもしあわせでいられるよう、神さまにおねがいしているところなのだよ。」と、いっているようでした。「ああ、ぼく、あくまでいい人になろう。」と、ヨハンネスはいいました。「そうすれば、また天国おとうさんにあうことになるし、あえたら、どんなにたのしいことだろう。そのときは、どんなにたくさん、話すことがあるだろう、そうして、おとうさんからも、ずいぶんいろいろのことをおしえてもらえるだろう。天国のりっぱな所もたくさんみせてもらえるだろう。それは生きているとき、地の上の話を、たんとおとうさんはしてくださったものだった。ああ、それはどんなにたのしいことになるだろうな。」
 ヨハンネスは、こうはっきりとじぶんにむかっていってみて、ついほほえましくなりました。そのそばから、涙はまたほほをつたわってながれました。あたまの上で小鳥たちが、とちの木の木立(こだち)のなかから、ぴいちくち、ぴいちくちさえずっていました。小鳥たちはおとむらいに来ていながら、こんなにたのしそうにしているのは、この死んだ人が、いまではたかい天国にのぼっていて、じぶんたちのよりももっとうつくしい、もっと大きいつばさがはえていることや、この世で心がけのよかったおかげで、あちらへいっても、神さまのおめぐみをうけて、いまではしあわせにくらしていることをよく知っているからでした。この小鳥たちが、緑ぶかい木立をはなれて、とおくの世界へとび立っていくところを、ヨハンネスはみおくって、じぶんもいっしょにとんでいきたくなりました。


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