月世界競争探検 関連リンク

押川 春浪 のオススメ作品

作家別索引

作品別索引

月世界競争探検 - 押川 春浪 ( おしかわ しゅんろう )

  • 大正3年 ポケット世界地図 古い世界地図帳 第一次世界大戦勃発前
  • 世界六大宗教101の常識/世界六大宗教の盛衰と謎 大沢正道
  • ★即決 角川世界名事典 ラルース 世界ことわざ名言辞典付き
  • 世界おとぎ話 カラー版世界の幼年文学18
  • 神秘の世界エルハザードCD★陣内の世界エルハザード★置鮎龍太郎
  • VHS7本組☆新世界紀行「世界七不思議の旅編」巨石像モアイ他 TBS
  • ●世界一わかりやすい世界の宗教/ブランドン トロポフ/
  • 日本の世界遺産歩ける地図帳 日本の世界遺産を、詳細な地図 写真
  • ☆世界遺産~世界遺産をめぐる旅へVol2☆シャンポール城☆
  • 岩波講座・世界文学 【世界文学論】 茅野簫々 昭和8年
次のページ
    博士捜索隊の出発  明治四十十月十日東京新聞は、いずれを見てもまず読者の目を惹いたのは、一号活字で「恋の競争飛行船の月界探検」と表題(みだし)をだし、本文にも二号沢山の次のごとき、空前の記事であった。 「今より凡(およ)そ半年以前即ち今年五月一日を以て、東京大学教授篠山博士が月界探検のため自ら発明せる飛行船に乗じ助手一名とともに吾が地球出発せる事は読者未だ記憶せらるる処ならんが、その後博士よりは今日まで杳(よう)として一片の消息だになく、あるいは飛行船の不完全のため中途その目的を達せずして、研究のためその一命を捧げしには非ずやと伝うものさえありて、飛説紛々として生じ、氏の知己は日夜憂慮しつつあるが、ここに最も哀れなるは、氏の愛子月子(つきこ)嬢の身の上にして、幼にして母を失いたる嬢は、ただ天にも地にも博士一人を力としいたりしに計らずも今回の不幸に際し、悲歎やる方なく、日は日もすがら、夜は夜もすがら父の身を配慮(きづか)いて泣き明かせるほどにて、そのあまり花をも欺く麗容もあたら夜半の嵐に散り失せぬべきほどの容体となりぬ。その様を黙視するに忍びず、一身を賭して博士の生死を探らんその報酬として運よく探りあてたる方へは、嬢の一身を托せらるべしと嬢に申込みたる二人の青年紳士あり。その一人秋山男爵にして、一人博士の遠縁に当る雲井文彦という青年紳士なるが、いずれも博士が、まだ出発せざる以前より深くも嬢に心をよせ己(おの)が胸中のありたけを打ち明けしも、嬢は二人の情に絆(ほだ)されていずれとも答えかねしが、今二人のこの申込に対し、親を思うに厚き嬢は遂にその言を容れたり。されば二人はいよいよ死を決して、嬢が悲を除き、日頃の思を遂げんと、いよいよ今日十二時を期し、日比谷公園より、各自の飛行船に乗じて出発の途につくべしと。云々(うんぬん)と……………」

と、このような小説的の記事を読んで、満都の人々は非常好奇心同情を持って、今日の二勇士の首途(かどで)を見んと、四方から雪崩(なだれ)のごとく押しよせて、すでにその日の九時頃には、さしもに広き公園も、これらの人々を持って埋まって終(しま)った。
 十一時頃に至って、秋山男爵と、雲井文彦は各従者一名を従え馬車を駆って、徐々(しずしず)と入り来った。
 一通り自分飛行船の各部を詳細に検査して、見送りの人々に一礼してその中に這入って、静かに号砲の鳴るのを待ち構えている。
 観衆はいずれも息を潜めて瞻視(みつめ)ている。
 やがて時計の長短針が一つになって十二時を指すと、音楽堂の上から一発の砲声が轟(とどろ)いた。と思うと大鷲(おおわし)のごとく両翼を拡げた飛行船は徐々に上昇し初める。
万歳※」
秋山男爵成功を祝す。」
「雲井文彦君万歳※」
と一時に破れるばかりの拍手万歳の声が起って、いずれも帽を投げ、手布(ハンケチ)を振ってその首途を祝した。
 飛行船は始めその両翼を静かに動かしながら徐々に上昇しつつあったが、次第にその速力を早めて来た、秋山男爵は東の方へ、雲井文彦は西の方へと針路を取って進んで行く。
 刻一刻地上の者は次第に小くなって遂には、一番高い山の頂さえ見えなくなって終った後は、四面ただ漠々として、いずれを見てもただ雲ばかり、両方の飛行船すら如何なる距離を以て進んでいるやら、形も姿も見えない。
 ただ雲の間を潜って、舳(へさき)に据えた羅針盤を頼りに、どこをそれという的(あて)もなく昇って行くのである。

    月界の到着

 雲井文彦の飛行船は、地球出発してからもう一週間になる。しかしまだ月らしい影も見えない。毎日毎日見る物は相も変らず、真白な雲ばかり、従者の東助はそろそろ心配し始めて、
若旦那様、今日でもう一週間になりますがまだ何も見えませんのは、もしや方角でも取り違えたのじゃありありましねえか。」
「そんな事はあるまい。確かにこの方角に向って行きさえすれば決して間違うはずはない。」
「それにしても秋山様はどうなさりましただか是非この勝負には若旦那様をお勝たせ申しましねえでは、私の気が済みましねえ。それに第一あの秋山様は世間の噂では、随分|性質(たち)の悪いお方だそうでおざりまするで、どうぞ貴方のお身に万一の事がなければよろしいがと老爺(おやじ)はそればかりを案じておりまする。」
「そんな心配はない。先方(むこう)も爵位を持っているほどの人物だから……」
と話しあっている中に文彦は雲の間から何やら認めて、
「おや、」
と早速双眼鏡を取り出して見たが、
「月だ!……月だ!」
「え? 月でございますか。」
「そうだ。難有い。もう数時間の後には着けるぞ。」
「左様でござりますか、どうぞ篠山の大旦那様がお無事でお出で下さればよろしゅうござりますが。」
という程なく飛行船速度は次第に増して、月へ月へと吸い付けられるようにと下降し初める。文彦は、
ブレーキを悉皆(しっかい)かけてくれ。」
と東助に命じて、自分注意して電圧器を加減しながら、一心に梶を取っている。
 やがて船は次第に間近くなって、二人は無事に月界の上に下り立った。
若旦那様これが月の世界というでござりますか。」
「そうだ。」
「それじゃいよいよ篠山のお旦那様もここにいらっしゃるでがすね、もしあの秋山様に探し出されねえ中に少しも早く……」
「そうお前のように急々(せかせか)したって仕方がないじゃないか、それよりも第一にどこか適当場所を探して一まず落着く場所を拵えなければならん。」
「成程。それも御|道理(もっとも)でがす。」
と再び二人は飛行船に乗じて、今度は地と擦れ擦れに進みながら、そこここと見下すとある山の麓にこんもりとした林があってその間に一筋の小川流れている。
「あそこがよかろう。」
とそこに飛行船を降し、その中から予(かね)て用意の天幕を取り出し、力を合せてその森のほとりに建て、飛行船解剖して小さく畳んでその中に入れて、これで一まず仕度は整うた。

    月宮号の惨状

 雲井文彦と従者の東助は各自ライフル銃を肩にして篠山博士捜索に出かけた。
 野を越え山を越え処々方々を探し求めたが、更に手懸りがない。五日となり一週間となってもまだ一向方角が判らぬ。
 二人ながら落胆(がっかり)して、とある木蔭に腰を卸(おろ)して、
「どうしたんだろう。それとも途中方角を取り違えて他の星へ行かれたのではないかしら。」
「左様でござります。場合によりましてはそんな事でもありましたかも知れましねえ。しかし折角ここまで来たものでござりますれば、今少し辛抱してお捜しなされて……」
「そりゃ勿論死ぬまでも捜す決心だ。」と奮然として答えて、
「少し寒けがして来たが何か焚火をするものはないか。


次のページ

押川 春浪 (おしかわ しゅんろう) 以外のオススメ作品

月世界競争探検 (げっせかいきょうそうたんけん) のリンク元

「月世界競争探検-押川 春浪」の関連ページ


関連ページ
Web Services by Yahoo! JAPAN