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桃花源記序 - 狩野 直喜 ( かの なおき )

  • 古書≪森鴎外集≫7 青年、舞姫他 【 森鴎外】河出書房 貴重 初版
  • 「森鴎外私論」吉野俊彦 森鴎外評論-批評-書籍・10冊 N21681
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桃花源記并序 桃花源の記ならびにはしがき、 晉太元中(1)。武陵人。捕魚爲業。縁溪行。忘途之遠近。忽逢(2)桃花林。夾岸數百歩。中無雜樹。芳草鮮美。落英繽紛。

晉の代、太元の頃かとよ、武陵の魚を捕ふる業なすをのこ、谷川にそひ、(舟にて上りしが)路の遠近を辨まへず、上りける程にふと見れば、桃花の林あり、兩岸を夾さみたる數百歩の中には、ひとつの雜木だになく、(其(3)下には)、かうばしき草うるはしく茂りあひ、風に吹かれ花びらのひらひらと「散るさま得も言はれぬ景色なり」

漁人甚異。復前行。欲窮其林。林(4)盡水源。便得一山。有小口。髣髴若有光。便捨舟。從口入。初極狹。纔通人。

をのこいとあやしみ、林のきはみまでと、猶上り行きしに、林の盡くる所、即ち水源なり。ふと見れば(向)に山ありて、其入り口と覺しき穴あり。かすかに日の光あると見ゆ乃ち船をば捨てつ、口より入り見るに、初めのほどは、きはめてせばく、僅かに、人ひとりを、かよはすほどなるに。

復行數十歩。割(5)然開朗。土地平曠。屋舍儼然。有良田美池桑竹之屬。阡陌相連。※犬相聞。

また數十歩ばかり行きけるが、胸すくばかりにひろ/″\と打開らきたる處へ出でつ、見ればいかめしき家居の傍に、良田よきた美池うるはしきいけ桑竹(くはたけ)のたぐひあり、東西南北に人のゆきかふ小路正しく連らなりて、※犬の此處彼處になく聲もいとのどかなり、

其中往來種作。男女衣着悉如外人。黄髮垂髫。並怡(6)然自樂。

其中を往來しつゝたがやす男女の身にまとふ衣を見るに、世のものと異なりて、外國人(とつくにびと)かと怪しまる計り也。又黄色の髮なす老人、もとどりたれたる小兒まで、打まじり、おのがじしたのしむさま、またなく心やすらげに見ゆ

漁人乃大驚。問所從來。具答之。便(7)要還家。設酒殺※作食。村中聞有此人。咸來問訊。

漁人を見つゝいたく打驚き、いづかたより來り給ひしと問ふに、くはしく答へたりしかば、いざ我家(わがや)へとて、いなむをうながし、つれ還へり、酒をまうけ、にはとりを殺し、ねんごろに、ふるまひなすうちに、村のものども、まれびとありと聞きつ、みなこの家へ尋ね來りぬ、

自(8)云。先世避秦時亂。率妻子邑人。來此絶境。不復出焉。遂與外人間隔。問今是何世。


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