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死者の書 ――初稿版―― - 折口 信夫 ( おりくち しのぶ )

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死者の書 ――初稿版―― 死者の書 戊寅天子東狃于沢中。逢寒疾。天子舎于沢中。盛姫告病。天子憐之。□沢曰寒氏。盛姫求飲。天子命人取漿而給。是曰壺※。天子西至于重壁之台。盛姫告病。□天子哀之。是曰哀次。天子乃殯盛姫于轂丘之廟。□壬寅天子命哭。(略)……癸卯、大哭。殤祀而載。甲辰天子南、葬盛姫於楽池之南。天子乃命盛姫□之喪。視皇后之葬法。亦不拝後于諸候。(略)……甲申天子北、升大北之※。而降休于両栢之下。天子永念傷心、乃思淑人盛姫。於是流涕。七萃之士※予上諫天子曰、自古有死有生、豈独淑人。天子不楽出於永思。永思有益、莫忘其新。天子哀之。乃又流涕。是日輟。己未乙酉天子西絶※※。乃遂西南戊子、至于塩己丑天子南登于薄山※※之※。乃宿于虞。庚申天子南征。吉日辛卯天子入于南※。

天子


       一

鄭門にはひると、俄かに松風が吹きあてるやうに響いた。
一町も先に、堂伽藍が固まつて見える。――そこまで、ずつと砂地である。白い地面に、広い葉が青いまゝでちらばつて居るのは、朴の葉だ。
まともに、寺を圧してつき立つてゐるのが、二上山(ふたかみやま)である。其真下に、涅槃仏のやうな姿に寝てゐるのが、麻呂子山だ。其頂がやつと、講堂の屋の棟に乗つてゐるやうにしか見えない。
こんな事を、女の身で知つて居る訳はない。だが俊敏な此旅びとの胸には、其に似たほのかな綜合が出来あがつて居たに違ひない。暫らくの間、懐しさうに薄緑の山色を仰いで居る。


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