水鳥亭 関連リンク

坂口 安吾 のオススメ作品

作家別索引

作品別索引

水鳥亭 - 坂口 安吾 ( さかぐち あんご )

  • VILBOCARD/V&B/ビレロイ&ボッホ★陶板はがき★水鳥★Used
  • T773 大仙作 水鳥波文蒔絵 二段重箱 共箱☆弁当箱茶懐石盆和食
  • ◆平安 橘吉◆青華水鳥 お茶呑茶碗 五客組◆たち吉/湯呑み
  • PETIT JUNKO 水鳥羽毛入りナイロンジャンバー サイズ120
  • ビックリマンシール 水鳥法王
  • 有田焼★弥左衛門窯★色絵染付大鉢★水鳥花鳥★検)ボウル菓子鉢
  • ■米子水鳥公園・伯耆古代の丘公園・定江ゆめ温泉☆利用券
  • ナイスクラップ☆水鳥羽毛 ダウンジャケット M(2m21)
  • ナイスクラップ☆水鳥羽毛 ダウンジャケット M(2m21)
  • ★城山古墳 大阪府藤井寺市「水鳥形埴輪」箱&台付★
次のページ
     一匹のイワシ  日曜の夜になると、梅村亮作の女房信子はさッさとフトンをかぶって、ねてしもう。娘の克子もそれにならって、フトンをひっかぶって、ねるのであった。
 九時半か十時ごろ、
「梅村さん。起きてますか」
 裏口から、こう声がかかる。
 火のない火鉢にかがみこんで、タバコの屑をさがしだしてキセルにつめて吸っていた亮作は、その声に活気づいて立ち上る。
 いそいそと裏戸をあけて、
「ヤア、おかえりですか。さア、どうぞ、おあがり下さい」
 声もうわずり、ふるえをおびている。
 野口は亮作の喜ぶさまを見るだけで満足らしく、インギンな物腰の中に社長らしい落付きがこもってくる。彼は包みをといて、
「ハイ。タマゴ。それから、今朝はイワシが大漁でしてね」
 タマゴ三個と十匹足らずのイワシの紙包みをとりだしてくれる。
「これはウチの畑の大根ニンジン
 それらの品々は亮作の目には宝石に見まごうほどの品々であった。彼は茫然とうけとっているのである。その目には、涙が流れさえするのであった。
「もう、みなさんは、おやすみですか」
「いえ、かまいませんよ。どうぞ、あがって下さい」
「いま伊東からの帰り路ですよ。まだウチへ行ってないのです。おやすみ」
 野口笑顔を残して、静かに立去る。
 日曜の夜の習慣であった。信子と克子は、これが見たくないので、早々にフトンをひッかぶって、ねてしもうのである。
 そのくせ信子も克子も野口のくれた物を存分に食う。さかんにくれた人と貰った人の悪口をわめきながら食うのである。
「そんなに厭な人から貰った物なら、お前たち、食うな」
 亮作は怒りにぶるぶるふるえるが、二人の女はとりあわない。そして益々悪口叫びつづける。
「なんですね。あの男は。この子の生れたころは、あなたの同僚ですよ。ひところは失敗つづきで、乞食のような様子をして、ウチへ借金に来たことだってありましたよ。それになんですか。いくらか出世したと思って、たかが戦争成金のくせに、威張りかえって」
「威張っておらんじゃないか」
「威張ってますよ。昔はキミボク、イケぞんざいに話し合っていたくせに、いくらか出世したかと思って、あなた、私。おお、イヤだ。以前なら、いま伊東の帰りだよ、といったところを、いま伊東別荘からの帰り路なんですよ。なんてイヤらしい」
「バカな。へりくだっているんじゃないか」
「ウソですよ。へりくだると見せて威張るのよ。悪質の成金趣味よ。ねえ、克子」
「そうよ。無学文盲悪趣味よ。裏長屋貴族趣味ね」
「バカな。お前らのハラワタが汚いから、汚い見方しか出来ないのだ。だいいち、野口君は、伊東別荘などと言いはせん。いつも、ただ、伊東の、という。つとめて成金らしい口吻をさけているのが分らんか」
「つまんない。裏長屋のザアマス趣味をひッくりかえしただけよ」
 女子大生の克子は投げすてるように言う。
伊東別荘と言いたいのを、伊東で切らなきゃならないからイヤらしいのよ。使用人に届けさしゃいいものを、今、帰り路ですなんて、恩にもきせたいし、伊東別荘も言いたいからよ。わざと、へりくだることないじゃないの。いつもタマゴは三ツなのね。不自然ね。


次のページ

坂口 安吾 (さかぐち あんご) 以外のオススメ作品

水鳥亭 (みずとりてい) のリンク元

「水鳥亭-坂口 安吾」の関連ページ


関連ページ
Web Services by Yahoo! JAPAN