永日小品 関連リンク

夏目 漱石 のオススメ作品

作家別索引

作品別索引

永日小品 - 夏目 漱石 ( なつめ そうせき )

  • 古書「名著複刻全集 鶉籠 夏目漱石」
  • 朗読CD 朗読街道38「文鳥」夏目漱石 試聴あり
  • 朗読CD 朗読街道2「夢十夜」夏目漱石 試聴あり
  • 漱石全集 夏目漱石 岩波書店 新書版 全35冊揃
  • ◆新品DVD★『NHK 名作の風景 8』森鴎外 正岡子規 夏目漱石1円
  • ★夏目漱石「草枕」「三四郎」「門」「行人」昭和33年・初版
  • 夏目漱石・坊ちゃん〈上下巻〉◇新潮カセットブック
  • 夏目漱石☆大型本上下巻セット!「ザ・漱石」大活字版(眼鏡無用)
  • ☆社長としての夏目漱石 (単行本) 富永 直久☆切手O
  • 本◎夏目漱石 著【硝子戸の中 他一編】外函付(旺文社)/JJ
次のページ
     元日  雑煮(ぞうに)を食って、書斎に引き取ると、しばらくして三四人来た。いずれも若い男である。そのうちの一人フロックを着ている。着なれないせいか、メルトンに対して妙に遠慮する傾(かたむ)きがある。あとのものは皆和服で、かつ不断着(ふだんぎ)のままだからとんと正月らしくない。この連中フロックを眺めて、やあ――やあと一ツずつ云った。みんな驚いた証拠(しょうこ)である。自分も一番あとで、やあと云った。
 フロック白い手巾(ハンケチ)を出して、用もない顔を拭(ふ)いた。そうして、しきりに屠蘇(とそ)を飲んだ。ほかの連中も大いに膳(ぜん)のものを突(つッ)ついている。ところへ虚子(きょし)が車で来た。これは黒い羽織に黒い紋付(もんつき)を着て、極(きわ)めて旧式にきまっている。あなたは黒紋付を持っていますが、やはり能(のう)をやるからその必要があるんでしょうと聞いたら、虚子が、ええそうですと答えた。そうして、一つ謡(うた)いませんかと云い出した。自分は謡ってもようござんすと応じた。
 それから二人して東北(とうぼく)と云うものを謡った。よほど以前に習っただけで、ほとんど復習と云う事をやらないから、ところどころはなはだ曖昧(あいまい)である。その上、我ながら覚束(おぼつか)ない声が出た。ようやく謡ってしまうと、聞いていた若い連中が、申し合せたように自分をまずいと云い出した。中にもフロックは、あなたの声はひょろひょろしていると云った。この連中は元来|謡(うたい)のうの字も心得ないもの共である。だから虚子自分の優劣はとても分らないだろうと思っていた。しかし、批評をされて見ると、素人(しろうと)でも理の当然なところだからやむをえない。馬鹿を云えという勇気も出なかった。
 すると虚子が近来|鼓(つづみ)を習っているという話しを始めた。謡のうの字も知らない連中が、一つ打って御覧なさい、是非御聞かせなさいと所望(しょもう)している。虚子自分に、じゃ、あなた謡って下さいと依頼した。これは囃(はやし)の何物たるを知らない自分にとっては、迷惑でもあったが、また斬新(ざんしん)という興味もあった。謡いましょうと引き受けた。虚子は車夫を走らして鼓を取り寄せた。鼓がくると、台所から七輪(しちりん)を持って来さして、かんかんいう炭火の上で鼓の皮を焙(あぶ)り始めた。みんな驚いて見ている。自分もこの猛烈な焙りかたには驚いた。大丈夫ですかと尋ねたら、ええ大丈夫ですと答えながら、指の先で張切った皮の上をかんと弾(はじ)いた。ちょっと好い音(ね)がした。もういいでしょうと、七輪からおろして、鼓の緒(お)を締(し)めにかかった。紋服(もんぷく)の男が、赤い緒をいじくっているところが何となく品(ひん)が好い。今度はみんな感心して見ている。
 虚子はやがて羽織を脱いだ。そうして鼓を抱(か)い込(こ)んだ。自分は少し待ってくれと頼んだ。第一彼がどこいらで鼓を打つか見当(けんとう)がつかないからちょっと打ち合せをしたい。虚子は、ここで掛声(かけごえ)をいくつかけて、ここで鼓をどう打つから、おやりなさいと懇(ねんごろ)に説明してくれた。自分にはとても呑(の)み込(こ)めない。けれども合点(がてん)の行くまで研究していれば、二三時間はかかる。やむをえず、好い加減に領承(りょうしょう)した。そこで羽衣(はごろも)の曲(くせ)を謡い出した。春霞(はるがすみ)たなびきにけりと半行ほど来るうちに、どうも出が好くなかったと後悔し始めた。はなはだ無勢力である。


次のページ

夏目 漱石 (なつめ そうせき) 以外のオススメ作品

永日小品 (えいじつしょうひん) のリンク元

「永日小品-夏目 漱石」の関連ページ

  • 先生 - Quizwiki - Quizwiki
    せんせい自作夏目漱石の小説『こヽろ』の書き出しは、「私はその人を常に(何)と呼んでいた。」でしょう?(2009年8月18日 『さいあんせいあん』「ウラジーミル・ナボコフ」)タグ
  • 愛媛県 - 東方ご当地wiki@ふたば - 東方ご当地wiki@ふたば
    愛媛県のページ(暫定)ここは愛媛県のページですwikipedia愛媛県有名・特徴的な所(暫定)松山城、宇和山城(どちらも天守が現存しており貴重)道後温泉夏目漱石「坊ちゃん」農業…みかん、いよ
  • 夏目 貴志 - 同期同盟 wiki - 同期同盟 wiki
    夏目 貴志 名前 コメント
  • センセイ - いまこそP4考察 @ Wiki - いまこそP4考察 @ Wiki
    せんせい公式クマが主人公を呼ぶときの愛称。不気味な商店街で主人公がペルソナを始めて召喚し、シャドウを葬ったのをみたクマが呼び始めた。非公式ネット上で主人公を呼ぶときの愛称のひとつ。→番長センセイと見ると夏目漱石のココロのセンセイが人によっては浮かぶかも知れない
  • 夏目漱石 - Quizwiki - Quizwiki
    なつめそうせき自作そのペンネームは中国の書『晋書』にある故事から名づけられた、2004年まで発行されていた1000円紙幣にその肖像が描かれていた人物で、『我輩は猫である』『坊っちゃん』などの名作で有名な文豪といえば誰でしょう?タグ:作家 学問・その他 先生 Quizwiki索引 あ~の 小川 鈴木三重吉 画像参照:http//www.jti.co.jp/Culture/museum/tokubetu/eventSep04/09.html
  • トップページ - 雑駁メモ - 雑駁メモ
    書きたいときに書いたメモの倉庫。いろいろな「死」松任谷由実オリジナルアルバム一覧 11/28夏目漱石に関しての豆知識 11/27三毛猫ホームズ全作品リスト 11/27世界最大のデータベーストップ10
  • メニュー - 雑駁メモ - 雑駁メモ
    検索 トップページ更新履歴2009-12-05メニュー2009-12-04トップページ松任谷由実オリジナルアルバム一覧いろいろな「死」2009-11-27夏目漱石
  • 夏目漱石に関しての豆知識 - 雑駁メモ - 雑駁メモ
    うに一般的な用法として定着したものもあるといわれている。「新陳代謝」、「反射」、「無意識」、「価値」、「電力」、「肩が凝る」等は夏目漱石の造語であるとも言われている。漱石が「肩が凝る」という言葉を作ったがために、多く
  • 単行本:え行-2 - 古書 吉祥寺書店 - 古書 吉祥寺書店
    遠藤 徹 姉飼角川書店 2003.11.30     Ae0071江藤 淳 夏目漱石勁草書房 1965.06.101刷1,200   Ae0072江藤 淳 夏目漱石勁草書房 1965.06.101刷1
  • 小説(日本)ナ行(中学高校) - wikiwiki2 @ ウィキ - wikiwiki2 @ ウィキ
    市(中学)第95番 夏目漱石 『坊ちゃん』 久我中第62番、椙山(中学)第62番、富山県(中学)第68番、岩国(中学)第41番、埼玉県(高校)第91番 夏目漱石 『我輩は猫である』 久我中第63番、市川

関連ページ
Web Services by Yahoo! JAPAN