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渦巻ける烏の群 - 黒島 伝治 ( くろしま でんじ )

  • 【桃】瀬戸:色絵渦巻き文様小皿
  • ◆◇【渦巻の玉かんざし】18㎜ SD対応 和布堂 ◇◆
  • No.568A 大奥 華の乱…入るは地獄。陰謀渦巻く伏魔殿と化して
  • ◇ポストペット・テレカ◇Momo・渦巻き飴②
  • ●即決価格 ブラス(真鍮)渦巻きウォレットチェーン[az-50uz]
  • ★926 萬古焼 味のある渦巻文 寸胴花瓶 花入 未使用
  • 【永田や】総額1000万セール♪芳輪堀川 渦巻きタイプ◆60巻 ①
  • 【永田や】総額1000万セール♪芳輪堀川 渦巻きタイプ◆60巻 ②
  • 【永田や】総額1000万セール♪芳輪二条 渦巻きタイプ◆60巻 ②
  • ■朝鮮唐津 平皿 水石原 渦巻き 骨董■
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   一 「アナタア、ザンパン、頂だい。」  子供達は青い眼を持っていた。そして、毛のすり切れてしまった破れ外套(がいとう)にくるまって、頭を襟の中に埋(うず)めるようにすくんでいた。娘もいた。少年もいた。靴が破れていた。そこへ、針のような雪がはみこんでいる。
 松木は、防寒靴をはき、ズボンのポケット両手を突きこんで、炊事場の入口に立っていた。
 風に吹きつけられた雪が、窓硝子(まどガラス)を押し破りそうに積りかかっていた。谷間の泉から湧き出る水は、その周囲に凍(い)てついて、氷の岩が出来ていた。それが、丁度、地下から突き出て来るように、一昨日よりは昨日昨日よりは今日の方がより高くもれ上って来た。彼は、やはり西伯利亜(シベリア)だと思った。氷が次第に地上にもれ上って来ることなどは、内地では見られない現象だ。
 子供達は、言葉がうまく通じないなりに、松木憐れみを求め、こびるような顔つきと態度とを五人が五人までしてみせた。
 彼等が口にする「アナタア」には、露骨にこびたアクセントがあった。
「ザンパンない?」子供達は繰かえした。「……アナタア! 頂だい、頂だい!」
「あるよ。持って行け。」
 松木は、残飯桶(ざんぱんおけ)のふちを操(と)って、それを入口の方へころばし出した。
 そこには、中隊で食い残した麦飯が入っていた。パンの切れが放りこまれてあった。その上から、味噌汁の残りをぶちかけてあった。
 子供達は、喜び、うめき声を出したりしながら、互いに手をかきむしり合って、携えて来た琺瑯引(ほうろうび)きの洗面器残飯をかきこんだ。
 炊事場は、古い腐った漬物臭いがした。それにバターと、南京袋(なんきんぶくろ)の臭いがまざった。
 調理台で、牛蒡(ごぼう)を切っていた吉永が、南京袋の前掛けをかけたまま入口へやって来た。
 武石は、ぺーチカに白樺の薪を放りこんでいた。ぺーチカの中で、白樺の皮が、火にパチパチはぜった。彼も入口へやって来た。
「コーリヤ。」
 松木が云った。
「何?」
 コーリヤは眼が鈴のように丸くって大きく、常にくるくる動めいている、そして顔にどっか尖(とが)ったところのある少年だった。
「ガーリヤはいるかね?」
「いるよ。」
「どうしてるんだ。」
「用をしてる。」
 コーリヤは、その場で、汁につかったパン切れをむしゃむしゃ頬張っていた。
ほかの子供達も、或はパンを、或は汁づけの飯を手に掴(つか)んでむしゃむしゃ食っていた。
「うまいかい?」
「うむ。」
「つめたいだろう。」
 彼等は、残飯桶の最後の一粒まで洗面器に拾いこむと、それを脇にかかえて、家の方へ雪の丘を馳(は)せ登(のぼ)った。
「有がとう。」
「有がとう。」
「有がとう。」
 子供達の外套や、袴(はかま)の裾が風にひらひらひるがえった。
 三人は、炊事場の入口からそれを見送っていた。
 彼等の細くって長い脚は、強いバネのように、勢いよくぴんぴん雪を蹴って、丘を登っていた。
「ナーシヤ!」
「リーザ!」
 武石と吉永とが呼んだ。
「なアに?」
 丘の上から答えた。
 子供達は、皆な、一時に立止まって、谷間の炊事場を見下した。
「飯をこぼすぞ。


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