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火の鳥 - 太宰 治 ( だざい おさむ )

  • 映画「火の鳥」「火の鳥2772」パンフレット2冊★手塚治虫他
  • 火の鳥◇手塚治虫◇山勝◇カード◇駄玩具◇火の鳥プロ◇袋入り
  • ★火の鳥/ポスター/サイズ巾520×縦730
  • 火の鳥☆手塚治プロダクション☆未使用50度テレホンカード
  • s9-154・火の鳥 手塚治虫 テレカ
  • ■火の鳥(手塚治虫)のテレカ■
  • ★ ・・・・・ 火の鳥、2000円分、80円×25 ★
  • ■火の鳥2772 スクリーン4月号臨時増刊 【公開記念号】
  • 即決◎レコード/未開封☆中島美嘉/火の鳥
  • 7-p583 手塚治虫 火の鳥 テレカ
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序編には、女優高野幸代の女優に至る以前を記す。  昔の話である。須々木乙彦は古着屋へはひつて、君のところに黒の無地の羽織はないか、と言つた。
「セルなら、ございます。」昭和五年の十月二十日、東京街路樹の葉は、風に散りかけてゐた。
「まだセルでも、をかしくないか。」
「もつともつとお寒くなりましてからでも、黒の無地なら、をかしいことはございませぬ。」
「よし。見せて呉れ。」
「あなたさまがお召しになるので?」角帽をあみだにかぶり、袖口がぼろぼろの学生服を着てゐた。
「さうだ。」差し出されたセルの羽織をその学生服の上にさつと羽織つて、「短かくないか。」五尺七寸ほどの、痩せてひよろ長い大学生であつた。
「セルのお羽織なら、かへつて少し短かめのはうが。」
「粋(いき)か。いくらだ。」
 羽織を買つた。これで全部、身仕度は出来た。数時間のち、須々木乙彦は、内幸町帝国ホテルのまへに立つてゐた。鼠いろのこまかい縞目の袷(あはせ)に、黒無地のセルの羽織を着て立つてゐた。ドアを押して中へはひり、
部屋を貸して呉れないか。」
「は、お泊りで?」
「さうだ。」
 浴室附のシングルベツドの部屋を二晩借りることにきめた。持ちものは、籐のステツキ一本である。部屋へ通された。はひるとすぐ、窓をあけた。裏庭である。火葬場煙突のやうな大きい煙突が立つてゐた。曇天である。省線のガードが見える。
 給仕人に背を向けて窓のそとを眺めたまま、
コーヒーと、それから、――」言ひかけて、しばらくだまつてゐた。くるつと給仕人のはうへ向き直り、
「まあ、いい。外へ出て、たべる。」
「あ、君。」乙彦は、呼びとめて、「二晩、お世話になる。」十円紙幣を一枚とり出して、握らせた。
「は?」四十歳ちかいボーイは、すこし猫背で、気品があつた。
 乙彦は笑つて、「お世話になる。」
「どうも。」給仕人は、その面(めん)のやうな端正の顔に、ちらとあいそ笑ひを浮べて、お辞儀をした。
 そのまま、乙彦は外へ出た。ステツキを振つて日比谷のはうへ、ぶらぶら歩いた。たそがれである。うすら寒かつた。はき馴れぬフエルト草履で、歩きにくいやうに見えた。日比谷。すきやばし、尾張町
 こんどはステツキをずるずる引きずつて、銀座を歩いた。何も見なかつた。ぼんやり水平線を見てゐるやうな眼差(まなざし)で、ぶらぶら歩いた。


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