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火星探険 - 海野 十三 ( うんの じゅうざ )

  • 火星の大元帥カーター 火星シリーズ3 創元推理文庫
  • 火星の女神イサス 火星シリーズ E・R・バロウズ創元推理文庫
  • ★火星シリーズ11 火星の巨人ジョーグ バローズ 創元推理文庫
  • ★火星シリーズ4 火星の幻兵団 バローズ 創元推理文庫
  • ★火星シリーズ3 火星の大元師カーター バローズ 創元推理文
  • ★火星シリーズ6 火星の交換頭脳 バローズ 創元推理文庫
  • 「火星甲殻団」川又千秋横山宏SF火星改造機械生物
  • 火星年代記/レイ・ブラッドベリ/HPB3047
  • ☆ フレドリック・ブラウン『火星人ゴーホーム』文庫本 ☆
  • 筒井百々子「火星に捧げるデュエット」
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   すばらしい計画  夏休みになる日を、指折りかぞえて待っている山木|健(けん)と河合二郎だった。  夏休みが来ると二人はコロラド大|峡谷(きょうこく)一周の自動車旅行に出る計画だった。もちろん自動車は二人がかわるがわる運転するのだ。往復に五週間日数があててあった。これだけ日数があれば、憧(あこが)れの大峡谷で十分にキャンプ生活が楽しめるはずだった。
 二人は、この大旅行に出ることが非常にうれしかったので、前々から近所の友だちにもふれまわっておいた。友だちはそれを聞いてうらやましがらない者はなかった。そしてぜひいっしょに連れて行ってくれと頼まれるのだった。しかし二人はそれを断りつづけた。というのは、二人が使うことになっている自動車にいささかわけがあったのである。何しろ二人とも親許(おやもと)をはなれている少年だったので、おこづかいは十分というわけには行かなかった。そこで学業のひまに新聞を売ったり薪(まき)を割ったりして働いて得た金を積立てて自動車を買うわけであるから、あまり立派なものは手に入らなかった。今二人が頼んであるのは、牧場(ぼくじょう)で不用になった牛乳配達車であり、しかもエンジンが動かなくなって一年も放りだしてあったというたいへんな代物(しろもの)で、二人にはキャンプ材料食糧を積むのがせいいっぱいであると思われた。
 しかし友だちには、その大旅行自動車がそんなひどい車である事を知らせず、非常に大きな車で、中で寝泊(ねとま)りから炊事(すいじ)から何から何まで出来るりっぱなものだと吹いておいたものだから、さてこそわれもわれもと、連れて行くことをねだられるのだった。
 そういう友だちの中で、とりわけ熱心にねだる者が二人あった。ひとりは中国人少年の張(チャン)であり、もう一人黒人のネッドであった。山木も河合も、張とネッドなら連れていってやりたかったけれど、何をいうにも自動車のがたがたなことを考えると、やっぱり心を鬼にして断るしかなかった。それでも張とネッドはあきらめようとはせず、毎日のように校庭で山木と河合とにねだるのだった。
 或る日ネッドは、山木と河合とが修理のため牧場自動車小屋へ行くと後からついて来て、ぜひ連れて行けとねだるのだった。二人はおんぼろ自動車を見られてはたいへんだと思い、道の途中でネッドをおいかえすのに骨を折らねばならなかった。
「山木に河合よ」
 ネッドはいつになくかたちを改めて二人を見つめた。
「なんだ、ネッド」
 二人は道のまん中に立ちふさがって、ネッドのかたい顔をにらみつけた。
「あのね、張がほんとうに心配していることがあるんだよ。二人が自動車旅行に出て行くと二日とたたないうちに、君たちはたいへんな苦労を背負(せお)いこむことになるんだってよ」
「へん、おどかすない」
「おどしじゃないよ。張がね、君たちの旅行の安全のために、ご先祖(せんぞ)さまから伝えられている水晶の珠(たま)を拝んで占ってみたんだとさ、すると今いったとおり、二日以内によくないことが起ると分ったんだ。そればかりではない。この旅行は先へ行くほどたいへんな苦労が重なって君たち二人はいつこの村へ帰れるか分らないといっているぜ」
 かねて、張が水晶の珠で占いをすることは山木も河合も知っていたので、そういわれると何だか前途が不安になって二人の顔色は曇った。それを見ていたネッドは、ここぞとばかりつっこんでいった。
「ねえ。いやな話だからさ、用心のために張と僕をいっしょに連れていけばいいだろう。そうすれば張は道々で水晶の珠で占いをして、この先にどんな危険があるかをいいあてるよ。それが分れば、難をのがれることができるじゃないか」
「だめだよ、そんなうまいこといったって……それに、第一その話は、張を連れて行くのはいいと分っても、君まで連れていかねばならないわけにはならんじゃないか」
「僕は絶対に入用だよ。だって張が占いをするときには、僕が手つだってやらないと、仏さまが彼にのりうつらないんだもの」
「だめ、だめ、何といってもどっちも連れて行きやしないよ、これからいうだけ損だよ」
「……」
「この次のときまで、待つんだね」
「どうしても今度はだめなんだね」
「そうさ。張にもよくいっておくんだよ」
「……じゃあ、もう頼まないや」
 ネッドは気の毒なほど悄気(しょげ)て、田舎道を村の方へ引きかえしていった。それを見送る山木と河合とは、あまりいい気持ではなかった。だがこれまで吹きまくった手前、今更がたがたのおんぼろ自動車のことをぶちまけるわけにもいかなかった。


   愉快なる出発


 はなばなしい自動車旅行出発明日にひかえて、山木と河合とは泣き出さんばかりの有様だった。それというのは、自動車修理一向にはかどらなかったからだ。いや、はかどらないどころか、修理の手をつければつけるほど、あっちもこっちも悪くなって、一個所を直すたびに、更に他の何個所かががたがたしてくるのであった。これでは自動車直しているのか、壊しているのか分らなかった。
「困ったねえ。これじゃあ明日出発に間にあいそうもないぜ」
 山木はとうとう悲観して、スパナーを放りだした。
「でも、明日はどうしても出発しないと、日程がくるってしまうよ。それにあのとおり友だちも大さわぎしているんだから、僕たちの出発がおくれると、またひどい悪口をあびなければならないよ」
「それは分っているけれど、この有様じゃあねえ。こんな車を買わないで、もっといい車を見つけりゃよかった」
「仕方がないよ、さあ、元気を出して、どうしても修理をやっちまおう、今夜は徹夜でやらなくちゃね」
「うん」
 河合にはげまされて、山木はふたたびスパナーを取上げた。
 ほんとうに、その夜は修理にかかってしまった。二人は油だらけになって一睡もとらず暁を迎えた。しかしまだ修理はすんでいなかった。フェンダー直しイグナイターをやりかえねばならなかった。その上に車体をペンキで塗りかえる予定であった。


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