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秋風記 - 太宰 治 ( だざい おさむ )

  • 藤沢周平★隠し剣孤影抄&隠し剣秋風抄(新装版)★ 文春文庫
  • 中野晃嗣 秋風景 陶板(陶額)飾額 美術家名鑑1990年
  • ★秋風に吹かれて!★サントリーモルツ★ビールジョッキー5個
  • 福永武彦 秋風日記 新潮社
  • 藤沢周平 ★ 隠し剣孤影抄 ★ 隠し剣秋風抄
  • 福永武彦 「随筆集 秋風日記」 新潮社
  • 水野あおい 8㎝シングル10枚 秋風の午睡 ピンクのたんぽぽ
  • 9310-Im003◆ELLE エル◆秋風フレアースカート★売切り品 お得
  • 随筆集 秋風日記 福永武彦 昭和53年 初版 帯付き
  • 206野上弥生子『秋風帖』昭和12初版
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立ちつくし、 ものを思へば、 ものみなの物語めき、  (生田長江)  あの、私は、どんな小説を書いたらいいのだろう。私は、物語洪水の中に住んでいる。役者になれば、よかった。私は、私の寝顔をさえスケッチできる。
 私が死んでも、私の死顔を、きれいにお化粧してくれる、かなしいひとだって在るのだ。Kが、それをしてくれるであろう。
 Kは、私より二つ年上なのだから、ことし三十二歳の女性である。
 Kを、語ろうか。
 Kは、私とは別段、血のつながりは無いのだけれど、それでも小さいころから私の家と往復して、家族同様になっている。そうして、いまはKも、私と同じ様に、「生れて来なければよかった。」と思っている。生れて、十年たたぬうちに、この世の、いちばん美しいものを見てしまった。いつ死んでも、悔いがない。けれども、Kは、生きている。子供のために生きている。それから、私のために、生きている。
「K、僕を、憎いだろうね。」
「ああ、」Kは、厳粛にうなずく。「死んでくれたらいいと思うことさえあるの。」
 ずいぶん、たくさんの身内が死んだ。いちばん上の姉は、二十六で死んだ。父は、五十三で死んだ。末の弟は、十六で死んだ。三ばん目の兄は、二十七で死んだ。ことしになって、そのすぐ次の姉が、三十四で死んだ。甥(おい)は、二十五で、従弟(いとこ)は、二十一で、どちらも私になついていたのに、やはり、ことし、相ついで死んだ。
 どうしても、死ななければならぬわけがあるのなら、打ち明けておくれ、私には、何もできないだろうけれど、二人で語ろう。一日に、一語ずつでもよい。ひとつきかかっても、ふたつきかかってもよい。私と一緒に、遊んでいておくれ。それでも、なお生きてゆくあてがつかなかったときには、いいえ、そのときになっても、君ひとりで死んではいけない。そのときには、私たち、みんな一緒に死のう。残されたものが、可哀そうです。君よ、知るや、あきらめの民の愛情の深さを。
 Kは、そうして、生きている。
 ことしの晩秋、私は、格子縞(こうしじま)の鳥打帽をまぶかにかぶって、Kを訪れた。口笛を三度すると、Kは、裏木戸をそっとあけて、出て来る。
「いくら?」
お金じゃない。」
 Kは、私の顔を覗(のぞ)きこむ。
「死にたくなった?」
「うん。」
 Kは、かるく下唇噛む
「いまごろになると、毎年きまって、いけなくなるらしいのね。寒さが、こたえるのかしら。羽織(はおり)ないの? おや、おや、素足で。」
「こういうのが、粋(いき)なんだそうだ。」
「誰が、そう教えたの?」
 私は溜息(ためいき)をついて、「誰も教えやしない。」
 Kも小さい溜息をつく。
「誰か、いいひとがないものかねえ。」
 私は、微笑する。
「Kとふたりで、旅行したいのだけれど。


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