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緒方氏を殺した者 - 太宰 治 ( だざい おさむ )

  • 即決 緒方恵美 インターネットラジオ 緒方の、秘宝。 
  • 写真集☆斎藤陽子写真集 モアクレエ 緒方 秀美-緒方 秀美☆
  • ◆PS2 垣野内成美≪吸血姫夕維≫川澄綾子・緒方恵美・緑川光
  • 斎藤陽子写真集「MOI-CREE」撮影・緒方秀美 〟
  • 初版●w-inds.写真集●W-inds.●橘慶太千葉涼平緒方龍一
  • 緒方恵美/希少 帯付 ライブ/LIVE(em;ou) Concert Toure 1998
  • ◆送料込・即決!【中古CD アルバム】■緒方恵美♪多重人格
  • ★ 銀河にほえろ! / 緒方恵美・西岡徳馬・大河内奈々子 ★
  • 緒方恵美 サンタクロースになりたい
  • 緒方恵美◇傷つかない愛はいらない◇邦楽8cmCDS◇新品・未開封
 緒方氏の臨終は決して平和なものではなかったと聞いている。歯ぎしりして死んでいったと聞いている。私と緒方氏とは、ほんの二三度話合っただけの間柄ではあるが、よい小説家を、懸命に努力した人間を、よほどの不幸の場所に置いたまま、そのまま死なせてしまったという事実に就いて、かなりの苦痛を感じている。
 追悼の文は、つくづく、むずかしいものである。一束の弔花を棺に投入して、そうしてハンケチで顔を覆って泣き崩れる姿は、これは気高いものであろうが、けれども、それはわかい女の姿であって、男が、いいとしをして、そんなことは、できない。真似られるものではない。へんに、しらじらしく真面目になるだけである。
 誰が緒方氏を殺したのか。乱暴言葉である。窒息するほどいやな言葉である。けれども私は、この不愉快極る疑問からのがれることができなかったのである。どうにも、かなわないので、真正面から取り組んでしまった。
 ひと一人、くらい境遇に落ち込んだ場合、その肉親のうちの気の弱い者か、または、その友人のうちの口下手の者が、その責任押しつけられ、犯しもせぬ罪を世人に謝し、なんとなく肩身のせまい思いをしているものである。それでは、いけない。
 うっとうしいことである。作家がいけないのである。作家精神がいけないのである。不幸が、そんなにこわかったら、作家をよすことである。作家精神を捨てることである。不幸にあこがれたことがなかったか。病弱美しいと思い描いたことがなかったか。敗北に享楽したことがなかったか。不遇を尊敬したことがなかったか。愚かさを愛したことがなかったか。
 全部、作家は、不幸である。誰もかれも、苦しみ苦しみ生きている。緒方氏を不幸にしたものは、緒方氏の作家である。緒方氏自身の作家精神である。たくましい、一流の作家精神である。
 人の死んだ席で、なんの用事もせず、どっかと坐ったまま仏頂づらしてぶつぶつ屁理窟(へりくつ)ならべている男の姿は、たしかに、見よいものではない。馬鹿である。気のきいたお悔みの言葉ひとつ述べることができない。許したまえ。この男は、悲しいのだ。自身の無力がくやしいのだ。息子戦死の報を聞くや、つと立って台所に行き、しゃっしゃっと米をといだという母親のぶざまと共に、この男の悲しみの顛倒(てんとう)した表現をも、苦笑してゆるしてもらいたい。
 ずいぶんたくさん書くことを用意していた筈なのに、異様にこわばって、書けなくなった。追悼文は、いやだ。死人に口がないのだから、なお、いやだ。



底本:「もの思う葦」新潮文庫新潮社
   1980(昭和55)年9月25日発
   1998(平成10)年10月15日39刷
入力:蒋龍
校正今井忠夫
2004年6月16日作成
2005年10月18日修正
青空文庫作成ファイル
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