織田信長 関連リンク

坂口 安吾 のオススメ作品

作家別索引

作品別索引

織田信長 - 坂口 安吾 ( さかぐち あんご )

  • 【即決】大佛次郎☆ 炎の柱 織田信長 上下2巻 ☆ 徳間文庫
  • VHS【その時歴史が動いた・戦国編/全5巻】NHK/織田信長/豊臣秀吉
  • 戦国無双3、武将フィギュア、織田信長、D
  • ★本物浮世絵★豊宣・織田信長・柴田勝家・佐久間信盛・秀吉
  • 講談社 織田信長 全5巻 山岡荘八 B6ハードカバー
  • 即決 徳川家康・慶喜 織田信長 全巻セット 山岡荘八全集
  • 【諏訪工芸】 鉄扇 八寸 織田信長、豊臣秀吉、徳川家康
  • GS美神 カラーフィルムブック 劇場版 織田信長
  • ★即決★武将織田信長半袖Tカラバリ8色【Mサイズ】nv0067ht
  • ★即決★武将織田信長半袖Tカラバリ8色【Lサイズ】nv0067ht
次のページ
死のふは一定(いちじよう)、しのび草には何をしよぞ、一定かたりをこすよの ――信長の好きな小唄――  立入左京亮(たてりさきょうのすけ)が綸旨二通と女房奉書をたずさえて信長をたずねてきたとき、信長鷹狩に出ていた。  朝廷からの使者は案内役の磯貝新右衛門久次と使者の立入とたった二人だけ、表向きの名目は熱田神宮参拝というのである。
 信長綸旨女房奉書をだしては、と立入左京亮から話を持ちかけられた万里小路(までのこうじ)大納言|惟房(これふさ)は、おまえ大変なことを言う、さても、困った、困った、と言った。
 信長という半キチガイの荒れ武者がどれほど腕ッ節が強くて、先の見込みのある大将だか知らないけれども、目下天下の権を握っている三好一党と、その又上に松永弾正(だんじょう)という蛇とも妖怪ともつかないような冷酷無慙なジイサンの睨みが怖しい。まったく弾正久秀という奴は蛇も妖怪も及びがたいジジイだけれども、たまには米もたらふく食いたいし、冬には温いフトンも慾しいじゃないか。雲の上人とは、よく言った。雲の上へまつりあげられて、薄いフトンで寒風をしのぎ、あるなしの米をすすって細々とその日のイノチをつないでいるのである。大納言のみならんや。上皇も、天皇も、そうなのである。
 これは後日の話であるが、信長天下を握って、御所修理したり、お金を献上したり、色々と忠勤をつくして朝廷の衰微を救ったという。このとき、信長京都の町民に米を貸して、その利息米を朝廷経済に当てる方法を施した。この利息米のアガリが大体一ヶ月に十三石ぐらいであった。十三石の半分を朝廷で細々とたべる。半分を副食物や調味料にかえる。信長が衰微を救ったという。救われて、ようやく、これぐらいのもので、雲の上人は、まったく悲惨な生活であった。
 天皇皇子皇女をたいがい寺へ入れる。皇女の方は尼だ。関白大納言も、そうだ。足利将軍もそうだ。子供坊主や尼にする。門跡寺、宮門跡などと云って、その寺格取引にして、お寺から月々年々の扶持(ふち)を受けるという仕組であった。そのほかには暮しの手だてがなかった。
 万里小路大納言惟房も、松永弾正という老|蝮(まむし)の目玉は怖しい。然し、お米をたらふく食べてみたい。だから、こまった。大変なことになった、困った、困った、と言った。
 けれども、煩悶しながらも、筆をとって、二通の綸旨をかいた。上※(じょうろう)房子が女房奉書をかいた。これを立入左京亮渡しながら、あゝ、大変なことになった、こまったこまった、と、まだ大納言はつぶやいていた。だから、その晩は一睡もできない。立入左京亮と、道案内の磯貝まで、心痛になって、やっぱり一晩ねむれない始末であった。
 翌日早朝天皇は惟房を召して、上※やおまえ方の心づくし、うれしく思う、この上は念を入れ、分別の上にも分別して、あくまで隠密専一にはからうようにと言って、信長へ手ミヤゲの品をあれこれお考えになる、あんまりクドイのはいけないでしょう、道服はいかゞ、よかろう、ときまって、使者はひそかに出発した。
 清洲の城へ直接信長を訪ねるわけには行かないから、磯貝の知音の者で、信長の目附をしている道家尾張守をたずねて行った。そのとき、信長鷹狩に出ていたのである。
 鷹狩の帰りに、信長道家の邸で休息して一風呂あびて帰城するのが習慣であった。おっつけ信長も参るでしょうから、まずお風呂でも召して旅の疲れを落して下さい、と、二名は入浴する。そのとき左京亮綸旨と奉書の包み道家に手渡した。道家包みをおしいたゞいて、手を拍(う)って、あゝ、ありがたいことだ、天下信長公のものとなった、信長公も満足であろう、と、それから急いで女房部屋へとんで行った。
 彼の女房安井と云って、信長大変目をかけてくれる才女だ。女房のおかげで、亭主の方も信長の覚えがめでたいようなことでもあるから、コレコレ、すぐに髪を結い拵え衣服をとゝのえて、殿のお帰りを待ちなさい、これこれこういうことで、いよいよ天下信長公のものとなった、この包みが、ありがたい綸旨二通と奉書なのだ、こうしては、おられん、さあ、いそいで、支度々々、めでたい、ありがたい、と云って、むやみに一人でテンテコ舞いをしている。
 信長が戻ってきた。いつもの通りさッさと湯殿へ行く。道家がそれを追いながら、実はこれこれにて、朝廷の使者が見えております、アヽ、そうか、と云って、信長風呂の中へとびこんで、湯ブネから首をだして、勅使のことを色々質問し、新しい小袖の用意はあるか、ございますとも、それはもう用意に手ぬかりはございません、せっかく天皇様が日本国を下さると仰有(おっしゃ)るのですから、と、道家日本国をもらった、もらった、とウワゴトみたいに言っている。それで信長もお風呂でバチャバチャ水をはねちらして、上キゲンであった。
 然し、別に日本国支配を命じるというような、たいした綸旨ではなかった。
 お前も近頃武運のほまれ高く、天下名将だとその名も隠れなく請人の崇拝をうけているそうであるから、ついては朝廷に忠義をつくし、皇太子元服費用を上納し、御所修理し、御料所を恢復してくれ、こういう意味綸旨であった。
 皇室の暮しむきの窮状をなんとかしてくれ、というだけのことだ。まア、借金の依頼を一とまわり大きくしたゞけのようなものだが、これだけのことでも、朝廷から、頼みをうける、頼まれるだけの実力貫禄というものが具わったからのことで、いわば実力の判定を得たようなものだ。
 信長はミヤゲにもらった道服をきて、左京亮と盃をいたゞき、二通の綸旨をいたゞいて元気百倍、これから近隣を片づけて、それから天下平定いたしますから御安心下さい、まず、三日五日ほどユックリ泊って行って下さい。


次のページ

坂口 安吾 (さかぐち あんご) 以外のオススメ作品

織田信長 (おだのぶなが) のリンク元

「織田信長-坂口 安吾」の関連ページ


関連ページ
Web Services by Yahoo! JAPAN