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都会で - 芥川 竜之介 ( あくたがわ りゅうのすけ )

  • 特典有! ∥ TUMIナイロン+レザー都会派ブリーフ黒 ∥ #24237
  • 須藤薫「やさしい都会」EP
  • ★井上陽水★10/27(水)京都会館★1階席ステージ前4列目ペア
  • ★井上陽水★10/27(水)京都会館★1階席ステージ前3列目連席
  • 都会的でモダンなサークル柄ストライプの遮光カーテン150×225cm
  • リン・パトリック ■ 大都会の妖精 ■ e-78
  • 【子供ドレス】都会の風ふくエレガントなドレス110cm
  • 【EP】  「影の軍団III *砂漠の都会に」真田広之/歌
  • 奥華子☆'10弾き語り~4th Letter~☆10/16京都会館第2ホール
  • ◆死者の都会◆ハーバート・リーバーマン◆角川書店
――或は千九百十六年の東京―― 芥川龍之介      一  風に靡(なび)いたマツチの炎(ほのほ)ほど無気味(ぶきみ)にも美しい青いろはない。      二  如何(いか)に都会愛するか?――過去の多い女を愛するやうに。

     三

 雪の降つた公園の枯芝(かれしば)は何よりも砂糖漬にそつくりである。

     四

 僕に中世紀を思ひ出させるのは厳(いか)めしい赤煉瓦(あかれんぐわ)の監獄である。若し看守(かんしゆ)さへゐなければ、馬に乗つたジアン・ダアクの飛び出すのに遇(あ)つても驚かないかも知れない。

     五

 或女給の言葉。――いやだわ。今夜はナイホクなんですもの。
 註。ナイホクはナイフだのフオオクだのを洗ふ番に当ることである。

     六

 並み木に多いのは篠懸(すずかけ)である。橡(とち)も三角楓(たうかへで)も極めて少ない。しかし勿論派出所巡査はこの木の古典趣味を知らずにゐる。

     七

 令嬢に近い芸者一人(ひとり)、僕の五六歩前に立ち止まると、いきなり挙手の礼をした。僕はちよつと狼狽(らうばい)した。が、後(うし)ろを振り返つたら、同じ年頃の芸者一人、やはりちやんと挙手の礼をしてゐた。

     八

 最も僕を憂鬱にするもの。――カアキイ色に塗つた煙突(えんとつ)。電車の通らない線路の錆(さ)び。屋上(をくじやう)庭園に飼(か)はれてゐる猿。……

     九

 僕は午前一時頃或町裏を通りかかつた。すると泥だらけの土工(どこう)が二人(ふたり)、瓦斯(ガス)か何か工事をしてゐた。狭い路は泥の山だつた。のみならずその又泥の山の上にはカンテラの火が一つ靡(なび)いてゐた。僕はこのカンテラの為にそこを通ることも困難だつた。すると若い土工一人(ひとり)、穴の中から半身を露(あらは)したまま、カンテラを側(わき)へのけてくれた。僕は小声に「ありがたう」と言つた。が、何か僕自身を憐(あはれ)みたい気もちもない訣(わけ)ではなかつた。

     十   

 夜半(やはん)の隅田川(すみだがは)は何度見ても、詩人S・Mの言葉を越えることは出来ない。――「羊羹(やうかん)のやうに流れてゐる。」

     十一

「××さん、遊びませう」と云う子供の声、――あれは音(おん)の高低を示せば、×× San Asobi-ma show である。あの音(おん)はいつまで残つてゐるかしら。

     十二

 火事はどこか祭礼に似てゐる。

     十三

 東京の冬は何よりも漬(つ)け菜(な)の茎の色に現(あらは)れてゐる。殊に場末(ばすゑ)の町々では。

     十四

 何かものを考へるのに善(よ)いのはカツフエの一番隅の卓子(テエブル)、それから孤独を感じるのに善(よ)いのは人通りの多い往来(わうらい)のまん中、最後静かさを味ふのに善いのは開幕中の劇場廊下(らうか)、……
昭和二年二月



底本:「芥川龍之介全集第四巻」筑摩書房
   1971(昭和46)年6月5日初版第1刷発行
   1971(昭和46)年10月5日初版第5刷発行
入力校正:j.utiyama
1999年2月15日公開
2003年10月7日修正
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