銀河鉄道の夜 関連リンク

宮沢 賢治 のオススメ作品

作家別索引

作品別索引

銀河鉄道の夜 - 宮沢 賢治 ( みやざわ けんじ )

  • 銀河鉄道物語絵コンテ01(検:松本零士セル画銀河鉄道999)
  • 【同人誌】FINAL FLOWER 銀河英雄伝説 銀河英雄帝国同盟自治領
  • 【同人誌】LA VIE EN ROSE 銀河英雄伝説 銀河英雄帝国同盟自治領
  • 絶版/B.チャンドラー[銀河私掠船団]銀河辺境12/ハヤカワ文庫初版
  • [銀河鉄道物語]告知用ポスター 松本零士 メーテル 銀河鉄道999
  • 【即決】銀河の覇者 下 銀河戦記エヴァージェンス〈3〉
  • PCE2本set/銀河お嬢様伝説ユナ 銀河お嬢様伝説ユナ2
  • A.バートラム チャンドラー[銀河辺境の彼方] 銀河辺境 外伝8
  • 銀河鉄道999 アニマックス オリジナル絵皿 【銀河鉄道車両】
  • ●切10 銀河鉄道999 メーテルが銀河に ポスターB2★必見
次のページ
銀河鐵道の夜        一 午後授業 「ではみなさん、さういふふうに川だと云はれたり、乳の流れたあとだと云はれたりしてゐた、このぼんやり白いものが何かご承知ですか。」  先生は、黒板に吊した大きな黒い星座の圖の、上から下へ白くけぶつた銀河帶のやうなところを指しながら、みんなに問ひをかけました。
 カムパネルラが手をあげました。それから四五人手をあげました。ジヨバンニも手をあげようとして、急いでそのままやめました。
 たしかにあれがみんな星だと、いつか雜誌で讀んだのでしたが、このごろはジヨバンニはまるで毎日教室でもねむく、本を讀むひまも讀む本もないので、なんだかどんなこともよくわからないといふ氣持がするのでした。
 ところが先生は早くもそれを見附けたのでした。
「ジヨバンニさん。あなたはわかつてゐるのでせう。」
 ジヨバンニは勢よく立ちあがりましたが、立つて見るともうはつきりとそれを答へることができないのでした。ザネリが前の席から、ふりかへつて、ジヨバンニを見てくすつとわらひました。ジヨバンニはもうどぎまぎしてまつ赤になつてしまひました。
 先生がまた云ひました。
「大きな望遠鏡銀河をよつく調べると銀河は大體何でせう。」
 やつぱり星だとジヨバンニは思ひましたが、こんどもすぐに答へることができませんでした。
 先生はしばらく困つたやうすでしたが、眼をカムパネルラの方へ向けて、
「ではカムパネルラさん。」と名指しました。
 するとあんなに元氣に手をあげたカムパネルラが、もぢもぢ立ち上つたままやはり答へができませんでした。
 先生は意外のやうにしばらくぢつとカムパネルラを見てゐましたが、急いで、
「では。よし。」と云ひながら、自分で星圖を指しました。
「このぼんやり白い銀河を大きないい望遠鏡で見ますと、もうたくさん小さな星に見えるのです。ジヨバンニさんさうでせう。」
 ジヨバンニはまつ赤になつてうなづきました。けれどもいつかジヨバンニの眼のなかには涙がいつぱいになりました。さうだ僕は知つてゐたのだ、勿論カムパネルラも知つてゐる、それはいつかカムパネルラのお父さん博士のうちでカムパネルラといつしよに讀んだ雜誌のなかにあつたのだ。それどこでなくカムパネルラは、その雜誌を讀むと、すぐお父さんの書齋から巨きな本をもつてきて、ぎんがといふところをひろげ、まつ黒な頁いつぱいに白い點々のある美しい寫眞を二人でいつまでも見たのでした。
 それをカムパネルラが忘れる筈もなかつたのに、すぐ返事をしなかつたのは、このごろぼくが、朝にも午後にも仕事がつらく、學校に出てももうみんなともはきはき遊ばず、カムパネルラともあんまり物を云はないやうになつたので、カムパネルラがそれを知つて氣の毒がつてわざと返事をしなかつたのだ。
 さう考へるとたまらないほど、じぶんもカムパネルラもあはれなやうな氣がするのでした。
 先生はまた云ひました。
「ですからもしもこの天の川がほんたうに川だと考へるなら、その一つ一つの小さな星はみんなその川のそこの砂や砂利の粒にもあたるわけです。またこれを巨きな乳の流れと考へるなら、もつと天の川とよく似てゐます。つまりその星はみな、乳のなかにまるで細かにうかんでゐる脂油の球にもあたるのです。そんなら何がその川の水にあたるかと云ひますと、それは眞空といふ光をある速さで傳へるもので、太陽地球もやつぱりそのなかに浮んでゐるのです。
 つまりは私どもも天の川の水のなかに棲んでゐるわけです。そしてその天の川の水のなかから四方を見ると、ちやうど水が深いほど青く見えるやうに、天の川の底の深く遠いところほど星がたくさん集つて見え、したがつて白くぼんやり見えるのです。この模型をごらんなさい。」
 先生は中にたくさん光る砂のつぶの入つた大きな兩面の凸レンズを指しました。
天の川の形はちやうどこんななのです。このいちいちの光るつぶがみんな私どもの太陽と同じやうにじぶんで光つてゐる星だと考へます。私どもの太陽がこのほぼ中ごろにあつて地球がそのすぐ近くにあるとします。みなさんは夜にこのまん中に立つてこのレンズの中を見まはすとしてごらんなさい。こつちの方はレンズが薄いのでわずかの光る粒即ち星しか見えないのでせう。こつちやこつちの方はガラスが厚いので、光る粒即ち星がたくさん見え、その遠いのはぼうつと白く見えるといふ、これがつまり今日銀河の説なのです。そんならこのレンズの大きさがどれ位あるか、またその中のさまざまの星についてはもう時間ですから、この次の理科時間にお話します。では今日はその銀河お祭なのですから、みなさんは外へでてよくそらをごらんなさい。ではここまでです。本やノートをおしまひなさい。」
 そして教室中はしばらく机の蓋をあけたりしめたり本を重ねたりする音がいつぱいでしたが、まもなくみんなはきちんと立つて禮をすると教室を出ました。

       二 活版

 ジヨバンニが學校の門を出るとき、同じ組の七八人は家へ歸らずカムパネルラをまん中にして校庭の隅の櫻の木のところに集まつてゐました。


次のページ

宮沢 賢治 (みやざわ けんじ) 以外のオススメ作品

銀河鉄道の夜 (ぎんがてつどうのよる) のリンク元

「銀河鉄道の夜-宮沢 賢治」の関連ページ


関連ページ
Web Services by Yahoo! JAPAN