錦染滝白糸 ――其一幕―― 関連リンク

泉 鏡花 のオススメ作品

作家別索引

作品別索引

錦染滝白糸 ――其一幕―― - 泉 鏡花 ( いずみ きょうか )

  • em【送込】唐版 滝の白糸パンフ◎松坂慶子岡本健一
  • ★圖團 鬨★Bw-22f★時計ベルトナイロンファイバー青22mm白糸
  • 1円★倒産未使用品/絹糸【シルク白糸】1215g西陣織物★手芸(1)5
  • ★圖團 鬨★Kw-20h★時計バンド ナイロンファイバー黒 20mm 白糸
  • ◆アガベ 白糸の王妃 黄覆輪◆サボテン・多肉・観葉
  • 送料込 自筆稿本 泉鏡花/[義血侠血] [滝の白糸]初稿 複製 和綴本
  • 切手可未開封/長崎県・島原/手延そうめん/波の白糸/600g/12束
次のページ
錦染滝白糸 ――其一幕―― 場所。   信州松本、村越の家 人物
  村越欣弥(新任検事
  滝の白糸水芸太夫
  撫子南京出刃打の娘)
  高原七左衛門(旧藩士
  おその、おりく(ともに近所の娘)




撫子(なでしこ)。円髷(まるまげ)、前垂(まえだれ)がけ、床の間花籠(はなかご)に、黄の小菊と白菊の大輪なるを莟(つぼみ)まじり投入れにしたるを視(なが)め、手に三本(みもと)ばかり常夏(とこなつ)の花を持つ。
傍(かたわら)におりく。車屋の娘。


撫子 今日は――お客様がいらっしゃるッて事だから、籠も貸して頂けば、お庭の花まで御無心して、ほんとうに済みませんのね。
りく 内の背戸にありますと、ただの草ッ葉なんですけれど、奥さんがそうしてお活(い)けなさいますと、お祭礼(まつり)の時の余所行(よそゆき)のお曠衣(はれ)のように綺麗(きれい)ですわ。
撫子 この細(ほっそ)りした、(一輪を指(ゆびさ)す)絹糸のような白いのは、これは、何と云う名の菊なんですえ。
りく 何ですか、あの……糸咲(いとざき)々々ってお父(とっ)さんがそう云いますよ。
撫子 ああ、糸咲……の白菊……そうですか。
りく そして、あのその撫子はお活けなさいませんの。
撫子 おお、この花は撫子ですか。(手なる常夏を見る。)
りく ええ、返り咲の花なんですよ。枯れた薄(すすき)の根に咲いて、珍しいから、と内でそう申しましてね。
撫子 その返り咲が嬉(うれし)いから、どうせお流儀があるんじゃなし、綺麗でさえあれば可(い)い、去嫌(さりぎら)い構わずに、根〆(ねじめ)にしましょうと思ったけれど、白菊が糸咲で、私、常夏と覚えた花が、撫子と云うのでしたら、あの……ちょっと台所の隅へでも、瓶に挿しましょう。
りく そう、見つけて来ましょう。(起(た)つ。)
撫子 (熟(じっ)と籠なると手の撫子とを見較(みくら)ぶ。)
りく これじゃいかが。
撫子 ああ結構よ。(瓶にさす時水なし)あら水がない。
りく 汲(く)んで来ましょう。
撫子 いいえ、撫子なんか、水がなくって沢山なの。
りく まあ、どうして?
撫子 それはね、南京流(なんきんりゅう)の秘伝なの。ほほほ。(寂しく笑う。)


おその、蓮葉(はすは)に裏口より入る。駄菓子屋の娘。


その 奥様。
撫子 おや、おそのさん。
その あの、奥様。お客様の御馳走(ごちそう)だって、先刻(さっき)、お台所(だいどこ)で、魚のお料理をなさるのに、小刀(ナイフ)でこしらえていらしった事を、私、帰ってお饒舌(しゃべり)をしましたら、お母(っか)さんが、まあ、何というお嬢様なんだろう。どんな御身分の方が、お慰みに、お飯事(ままごと)をなさるんでも、それでは御不自由、これを持って行って差上げな、とそう言いましてね。(言いつつ、古手拭(ふるてぬぐい)を解(ほど)く)いま研いだのを持って来ました。よく切れます……お使いなさいまし、お間に合せに。……(無遠慮に庖丁を目前(めのさき)に突出す。)
撫子 (ゾッと肩をすくめ、瞳(ひとみ)を見据え、顔色かわる)おそのさん、その庖丁は借(かり)ません。
その ええ。
撫子 出刃は私に祟(たた)るんです。早く、しまって下さいな。
その 何でございますか、田舎もので、飛んだことをしましたわ。御免なさい、おりくさん、お詫(わび)をして頂戴な。
りく お気に障りましたら、御勘弁下さいまし。
撫子 飛んでもない。お辞儀なんかしちゃあ不可(いけ)ません。おそのさん、おりくさん。
りく いいえ、奥様、私たちを、そんな、様づけになんかなさらないで、奉公人同様に、りくや。
その その、と呼棄てに、お目を掛けて下さいまし。


次のページ

泉 鏡花 (いずみ きょうか) 以外のオススメ作品

錦染滝白糸 ――其一幕―― のリンク元

「錦染滝白糸 ――其一幕――-泉 鏡花」の関連ページ


関連ページ
Web Services by Yahoo! JAPAN