雪の女王 七つのお話でできているおとぎ物語 - アンデルセン ハンス・クリスチャン ( アンデルセン ハンス・クリスチャン )
雪の女王
SNEDRONNINGEN
七つのお話でできているおとぎ物語
ハンス・クリスティアン・アンデルセン Hans Christian Andersen
楠山正雄訳
第一のお話
鏡とそのかけらのこと
さあ、きいていらっしゃい。はじめますよ。このお話をおしまいまできくと、だんだんなにかがはっきりしてきて、つまり、それがわるい魔法使(まほうつかい)のお話であったことがわかるのです。この魔法使というのは、なかまでもいちばんいけないやつで、それこそまがいなしの「悪魔(あくま)」でした。
さて、ある日のこと、この悪魔は、たいそうなごきげんでした。というわけは、それは、鏡をいちめん作りあげたからでしたが、その鏡というのが、どんなけっこうなうつくしいものでも、それにうつると、ほとんどないもどうぜんに、ちぢこまってしまうかわり、くだらない、みっともないようすのものにかぎって、よけいはっきりと、いかにもにくにくしくうつるという、ふしぎなせいしつをもったものでした。どんなうつくしいけしきも、この鏡にうつすと、煮(に)くたらしたほうれんそうのように見え、どんなにりっぱなひとたちも、いやなかっこうになるか、どうたいのない、あたまだけで、さかだちするかしました。顔は見ちがえるほどゆがんでしまい、たった、ひとつぼっちのそばかすでも、鼻や口いっぱいに大きくひろがって、うつりました。
「こりゃおもしろいな。」と、その悪魔はいいました。ここに、たれかが、やさしい、つつましい心をおこしますと、それが鏡には、しかめっつらにうつるので、この魔法使の悪魔は、じぶんながら、こいつはうまい発明(はつめい)だわいと、ついわらいださずには、いられませんでした。
この悪魔は、魔法学校をひらいていましたが、そこにかよっている魔生徒どもは、こんどふしぎなものがあらわれたと、ほうぼうふれまわりました。
さて、この鏡ができたので、はじめて世界や人間のほんとうのすがたがわかるのだと、このれんじゅうはふいちょうしてあるきました。で、ほうぼうへその鏡をもちまわったものですから、とうとうおしまいには、どこの国でも、どの人でも、その鏡にめいめいの、ゆがんだすがたをみないものは、なくなってしまいました。こうなると、図にのった悪魔のでしどもは、天までも昇(のぼ)っていって、天使(てんし)たちや神さままで、わらいぐさにしようとおもいました。ところで、高く高くのぼって行けば、行くほど、その鏡はよけいひどく、しかめっつらをするので、さすがの悪魔も、おかしくて、もっていられなくなりました。でもかまわず、高く高くとのぼっていって、もう神さまや天使のお住居(すまい)に近くなりました。すると、鏡はあいかわらず、しかめっつらしながら、はげしくぶるぶるふるえだしたものですから、ついに悪魔どもの手から、地の上へおちて、何千万、何億万、というのではたりない、たいへんな数に、こまかくくだけて、とんでしまいました。ところが、これがため、よけい下界(げかい)のわざわいになったというわけは、鏡のかけらは、せいぜい砂つぶくらいの大きさしかないのが、世界じゅうにとびちってしまったからで、これが人の目にはいると、そのままそこにこびりついてしまいました。すると、その人たちは、なんでも物をまちがってみたり、ものごとのわるいほうだけをみるようになりました。それは、そのかけらが、どんなちいさなものでも、鏡がもっていたふしぎな力を、そのまま、まだのこしてもっていたからです。なかにはまた、人のしんぞうにはいったものがあって、そのしんぞうを、氷のかけらのように、つめたいものにしてしまいました。そのうちいくまいか大きなかけらもあって、窓ガラスに使われるほどでしたが、そんな窓ガラスのうちから、お友だちをのぞいてみようとしても、まるでだめでした。ほかのかけらで、めがねに用いられたものもありましたが、このめがねをかけて、物を正しく、まちがいのないように見ようとすると、とんださわぎがおこりました。悪魔はこんなことを、たいへんおもしろがって、おなかをゆすぶって、くすぐったがって、わらいました。ところで、ほかにもまだ、こまかいかけらは、空のなかにただよっていました。さあ、これからがお話なのですよ。
第二のお話
男の子と女の子
たくさんの家がたてこんで、おおぜい人がすんでいる大きな町では、たれでも、庭にするだけの、あき地をもつわけにはいきませんでした。ですから、たいてい、植木(うえき)ばちの花をみて、まんぞくしなければなりませんでした。
そういう町に、ふたりのまずしいこどもがすんでいて、植木ばちよりもいくらか大きな花ぞのをもっていました。そのふたりのこどもは、にいさんでも妹でもありませんでしたが、まるでほんとうのきょうだいのように、仲よくしていました。そのこどもたちの両親は、おむこうどうしで、その住んでいる屋根うらべやは、二軒の家の屋根と屋根とがくっついた所に、むかいあっていました。そのしきりの所には、一本の雨どいがとおっていて、両方から、ひとつずつ、ちいさな窓が、のぞいていました。で、といをひとまたぎしさえすれば、こちらの窓からむこうの窓へいけました。
こどもの親たちは、それぞれ木の箱を窓の外にだして、台所でつかうお野菜をうえておきました。そのほかにちょっとしたばらをひと株うえておいたのが、みごとにそだって、いきおいよくのびていました。ところで親たちのおもいつきで、その箱を、といをまたいで、横にならべておいたので、箱は窓と窓とのあいだで、むこうからこちらへと、つづいて、そっくり、生きのいい花のかべを、ふたつならべたように見えました。えんどう豆のつるは、箱から下のほうにたれさがり、ばらの木は、いきおいよく長い枝をのばして、それがまた、両方の窓にからみついて、おたがいにおじぎをしあっていました。まあ花と青葉でこしらえた、アーチのようなものでした。その箱は、高い所にありましたし、こどもたちは、その上にはいあがってはいけないのをしっていました。そこで、窓から屋根へ出て、ばらの花の下にある、ちいさなこしかけに、こしをかけるおゆるしをいただいて、そこでおもしろそうに、あそびました。
冬になると、そういうあそびもだめになりました。窓はどうかすると、まるっきりこおりついてしまいました。そんなとき、こどもたちは、だんろの上で銅貨(どうか)をあたためて、こおった窓ガラスに、この銅貨をおしつけました。すると、そこにまるい、まんまるい、きれいなのぞきあなができあがって、このあなのむこうに、両方の窓からひとつずつ、それはそれはうれしそうな、やさしい目がぴかぴか光ります、それがあの男の子と、女の子でした。男の子はカイ、女の子はゲルダといいました。夏のあいだは、ただひとまたぎで、いったりきたりしたものが、冬になると、ふたりのこどもは、いくつも、いくつも、はしごだんを、おりたりあがったりしなければ、なりませんでした。外(そと)には、雪がくるくる舞(ま)っていました。
「あれはね、白いみつばちがあつまって、とんでいるのだよ。」と、おばあさんがいいました。
さて、ある日のこと、この悪魔は、たいそうなごきげんでした。というわけは、それは、鏡をいちめん作りあげたからでしたが、その鏡というのが、どんなけっこうなうつくしいものでも、それにうつると、ほとんどないもどうぜんに、ちぢこまってしまうかわり、くだらない、みっともないようすのものにかぎって、よけいはっきりと、いかにもにくにくしくうつるという、ふしぎなせいしつをもったものでした。どんなうつくしいけしきも、この鏡にうつすと、煮(に)くたらしたほうれんそうのように見え、どんなにりっぱなひとたちも、いやなかっこうになるか、どうたいのない、あたまだけで、さかだちするかしました。顔は見ちがえるほどゆがんでしまい、たった、ひとつぼっちのそばかすでも、鼻や口いっぱいに大きくひろがって、うつりました。
「こりゃおもしろいな。」と、その悪魔はいいました。ここに、たれかが、やさしい、つつましい心をおこしますと、それが鏡には、しかめっつらにうつるので、この魔法使の悪魔は、じぶんながら、こいつはうまい発明(はつめい)だわいと、ついわらいださずには、いられませんでした。
この悪魔は、魔法学校をひらいていましたが、そこにかよっている魔生徒どもは、こんどふしぎなものがあらわれたと、ほうぼうふれまわりました。
さて、この鏡ができたので、はじめて世界や人間のほんとうのすがたがわかるのだと、このれんじゅうはふいちょうしてあるきました。で、ほうぼうへその鏡をもちまわったものですから、とうとうおしまいには、どこの国でも、どの人でも、その鏡にめいめいの、ゆがんだすがたをみないものは、なくなってしまいました。こうなると、図にのった悪魔のでしどもは、天までも昇(のぼ)っていって、天使(てんし)たちや神さままで、わらいぐさにしようとおもいました。ところで、高く高くのぼって行けば、行くほど、その鏡はよけいひどく、しかめっつらをするので、さすがの悪魔も、おかしくて、もっていられなくなりました。でもかまわず、高く高くとのぼっていって、もう神さまや天使のお住居(すまい)に近くなりました。すると、鏡はあいかわらず、しかめっつらしながら、はげしくぶるぶるふるえだしたものですから、ついに悪魔どもの手から、地の上へおちて、何千万、何億万、というのではたりない、たいへんな数に、こまかくくだけて、とんでしまいました。ところが、これがため、よけい下界(げかい)のわざわいになったというわけは、鏡のかけらは、せいぜい砂つぶくらいの大きさしかないのが、世界じゅうにとびちってしまったからで、これが人の目にはいると、そのままそこにこびりついてしまいました。すると、その人たちは、なんでも物をまちがってみたり、ものごとのわるいほうだけをみるようになりました。それは、そのかけらが、どんなちいさなものでも、鏡がもっていたふしぎな力を、そのまま、まだのこしてもっていたからです。なかにはまた、人のしんぞうにはいったものがあって、そのしんぞうを、氷のかけらのように、つめたいものにしてしまいました。そのうちいくまいか大きなかけらもあって、窓ガラスに使われるほどでしたが、そんな窓ガラスのうちから、お友だちをのぞいてみようとしても、まるでだめでした。ほかのかけらで、めがねに用いられたものもありましたが、このめがねをかけて、物を正しく、まちがいのないように見ようとすると、とんださわぎがおこりました。悪魔はこんなことを、たいへんおもしろがって、おなかをゆすぶって、くすぐったがって、わらいました。ところで、ほかにもまだ、こまかいかけらは、空のなかにただよっていました。さあ、これからがお話なのですよ。
第二のお話
男の子と女の子
たくさんの家がたてこんで、おおぜい人がすんでいる大きな町では、たれでも、庭にするだけの、あき地をもつわけにはいきませんでした。ですから、たいてい、植木(うえき)ばちの花をみて、まんぞくしなければなりませんでした。
そういう町に、ふたりのまずしいこどもがすんでいて、植木ばちよりもいくらか大きな花ぞのをもっていました。そのふたりのこどもは、にいさんでも妹でもありませんでしたが、まるでほんとうのきょうだいのように、仲よくしていました。そのこどもたちの両親は、おむこうどうしで、その住んでいる屋根うらべやは、二軒の家の屋根と屋根とがくっついた所に、むかいあっていました。そのしきりの所には、一本の雨どいがとおっていて、両方から、ひとつずつ、ちいさな窓が、のぞいていました。で、といをひとまたぎしさえすれば、こちらの窓からむこうの窓へいけました。
こどもの親たちは、それぞれ木の箱を窓の外にだして、台所でつかうお野菜をうえておきました。そのほかにちょっとしたばらをひと株うえておいたのが、みごとにそだって、いきおいよくのびていました。ところで親たちのおもいつきで、その箱を、といをまたいで、横にならべておいたので、箱は窓と窓とのあいだで、むこうからこちらへと、つづいて、そっくり、生きのいい花のかべを、ふたつならべたように見えました。えんどう豆のつるは、箱から下のほうにたれさがり、ばらの木は、いきおいよく長い枝をのばして、それがまた、両方の窓にからみついて、おたがいにおじぎをしあっていました。まあ花と青葉でこしらえた、アーチのようなものでした。その箱は、高い所にありましたし、こどもたちは、その上にはいあがってはいけないのをしっていました。そこで、窓から屋根へ出て、ばらの花の下にある、ちいさなこしかけに、こしをかけるおゆるしをいただいて、そこでおもしろそうに、あそびました。
冬になると、そういうあそびもだめになりました。窓はどうかすると、まるっきりこおりついてしまいました。そんなとき、こどもたちは、だんろの上で銅貨(どうか)をあたためて、こおった窓ガラスに、この銅貨をおしつけました。すると、そこにまるい、まんまるい、きれいなのぞきあなができあがって、このあなのむこうに、両方の窓からひとつずつ、それはそれはうれしそうな、やさしい目がぴかぴか光ります、それがあの男の子と、女の子でした。男の子はカイ、女の子はゲルダといいました。夏のあいだは、ただひとまたぎで、いったりきたりしたものが、冬になると、ふたりのこどもは、いくつも、いくつも、はしごだんを、おりたりあがったりしなければ、なりませんでした。外(そと)には、雪がくるくる舞(ま)っていました。
「あれはね、白いみつばちがあつまって、とんでいるのだよ。」と、おばあさんがいいました。
アンデルセン ハンス・クリスチャン (アンデルセン ハンス・クリスチャン) 以外のオススメ作品
雪の女王 七つのお話でできているおとぎ物語 のリンク元
「雪の女王 七つのお話でできているおとぎ物語-アンデルセン ハンス・クリスチャン」の関連ページ
-
〔ヨハン・アンデルセン〕 - 遊戯王エクスクルーダーCGI Wiki - 遊戯王エクスクルーダーCGI Wiki
ヨハン・アンデルセンGXで登場したキャラクター。世界で一組しかない宝玉獣を操る。CPUとして宝玉獣デッキを使う。宝玉獣の効果によりそれなりにアドは取ってくるが、決定打に欠ける。関連リンクヨハン・アンデルセン -
ガルダ=アンデルセン - Pixiv Treason R 【ぴくトリR】 非公式まとめwiki - Pixiv Treason R 【ぴくトリR】 非公式まとめwiki
♦『おいおい、年上を敬え年上を』このページを編集 -
◆WMc1TGFkQk - リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル - リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル
ジール・ヒューレー、クアットロ、アレクサンド・アンデルセン登場させたキャラ1回エリオ・モンディアル、シェルビー・M・ペンウッド、柊かがみ、アンジール・ヒューレー、クアットロ、アレクサンド・アンデルセン -
ハクチョウ - Quizwiki - Quizwiki
白鳥自作アンデルセンの童話『みにくいアヒルの子』で、「みにくいアヒルの子」と呼ばれていた鳥は本当は何という鳥の子供だったでしょう?(2009年8月18日 『さいあんせいあん』「ウラジーミル・ナボ -
雪の女王 - Project Revolution wiki - Project Revolution wiki
番号 MW14023 名前 雪の女王 読み ゆきのじょうおう Lv 6 スター 種別 ユニット BP 3500 SP 1000 【ちょ -
ヘルシング(HELLSING) - ぐぬコラWiki - ぐぬコラWiki
シング セラス・ヴィクトリア ウォルター01 ウォルター02 ウォルター03 ピップ・ベルナドット01 ピップ・ベルナドット02 エンリコ・マクスウェル アレクサンド・アンデルセン -
登場人物/グィード・ボルジア - ナイトウィザード The ANIMATION 超☆Wiki - ナイトウィザード The ANIMATION 超☆Wiki
はファンの推測であるが、グイードのイメージソースの1つとして漫画「HELLSING」に登場するアンデルセン神父があったのでは無いかと言われている。ちなみに、このアンデルセン神父も若本が演じたことがある。ゲー -
原作シリーズからの主催キャラ - リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル - リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル
)Burning Dark(後編) ◆9L.gxDzakI チンク、アレクサンド・アンデルセン、アンジール・ヒューレー、ルーテシア・アルピーノ 1日目午前 123 第二回放送 ◆9L.gxDzakI -
主催者キャラ追跡表 - リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル - リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル
)Burning Dark(後編) ◆9L.gxDzakI チンク、アレクサンド・アンデルセン、アンジール・ヒューレー、ルーテシア・アルピーノ 1日目午前 123 第二回放送 ◆9L.gxDzakI -
◆jiPkKgmerY - リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル - リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル
meet TYPOON アレクサンド・アンデルセン、ヴァッシュ・ザ・スタンピード 030 童子切丸は砕けない(前編)童子切丸は砕けない(後編) インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲート・ヘル
