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静物 - 十一谷 義三郎 ( じゅういちや ぎさぶろう )

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  • ★S.I.C.限定 仮面ライダー裁鬼/鋭鬼/弾鬼 3体セット 関東十一鬼
  • 中野重治全集 第二十一巻★藝術家の立場・近代日本文学史考・文
  • ■中古 鳩5銭錫貨 昭和二十一年製
  • ★十一月の男/新潮文庫/B.フリーマントル著★
  • ジェフリー・アーチャー★十一番目の戒律★新潮文庫【初版】
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     一  家を持つて間のない道助夫妻何かしら退屈を感じ出して、小犬でも飼つて見たらなどと考へてる頃だつた、遠野がお祝ひにと云つて喙(くちばし)の紅い小鳥を使ひの者に持たせて寄来(よこ)してくれた。道助はその籠を縁先に吊しながら、此の友人のことをまだ一度も妻に話してなかつたのを思ひ出した。
「古くからの親友なんだ、好い人だよ。」と彼は妻に云つた。
「では一度お招(よ)びしたらどう。」と彼女が答へた。道助はすぐに同意した。彼女はその折りに食卓に並べる珈琲(コーヒー)茶碗や小皿のことなどに就て細々(こま/\)と彼に相談し初めた。
 二三日して彼は郊外にある遠野の画室を訪ねた。明るい光線の満ちた部屋の中に、いつの間に成されたのか新しい制作が幾つも並べられてゐた。それを見てゐると道助は急に自分の影が薄れて行くやうな苛(いら)だたしさを覚えた。
「君、これは光線の具合だらうか、」と遠野が這入(はい)つて来るなり彼の顔を凝視して云つた、「どうも君の顔が変つたやうな気がする。」そして彼は画室の隅に立てかけてある、八分通り出来上つた道助の肖像画の方へ振り返つた。
「どうしてだらう、あれを描いて呉れてた時分からまだ半月も経たないよ、」と道助が微笑(ほゝゑ)みながら答へた。すると遠野は急に道助の肩を揺すつて
「あゝ君は幸福過ぎるんだ。」と叫んだ。
「君は大変な人相屋だ。」と道助は皮肉な気持ちで答へた。遠野故意(わざ)とお道化(どけ)た風に点頭(うなづ)きつゝ棚から口の短いキュラソウの壺を取り下ろした、そしてそれを道助の洋盃(グラス)へ酌(つ)ぎながら
「兎も角君も落ちついたと云ふものだ。」と云つた。それは、その頃まで道助の周囲を取り捲(ま)いてゐた空気明暗をよく呑込んだ言葉だつた。然しそれを聞くと、道助は却(かへ)つて自分の気持ちが妙に硬(こは)ばるのを感じた。で彼は窓の外へ眼をやつた。
何か感想がありさうなものだな、」と遠野は笑ひながら云つた。
「話さうと思へば無くもないさ、然しそんなことは馬鹿げてる。」と道助は呟(つぶや)くやうに答へた。
「その馬鹿げたことを訊いてるのさ。」と遠野が今度は椅子の上に反り返つてのびをしながら云つた。そしてすぐに彼は「実際、面白いことはさう沢山無いよ。」と附け足した。その調子が可笑(をか)しくて道助は思はず噴き出した。それに連れて遠野もお腹を抱へた。
 するとその彼等の声に応じるかのやうに扉を叩(ノック)する音が静かに響いて来た。道助は立ち上つた。
「いゝんだよ。」と云ひつゝ遠野はまたキュラソウの壺を取り上げた「でどうだ。あの鳥は?」
「あゝ失敬、彼女大変喜んでゐるよ。退屈なものだから。それでね、是非一度君を招待しろと云ふんだ。」
「あゝその使ひに来てくれたのか、ありがたう、ゆくよ、奥さんにも逢つとかなくちやね。」
 その時、劇(はげ)しく扉が明け放たれた。そして濃い空色のショウルを自暴(やけ)に手首に巻きつけたモデルのとみ子がつと這入(はい)つて来た。彼女は片手に持つてゐた花束を乱暴に床の上に投げ出して、どんとぶつかるやうに遠野の肩に凭(もた)れかゝつた。
「どの奥さんに逢ひにゆくのよ。」そして手を伸ばして遠野の前にある洋盃(グラス)を取り上げた。

     二

「この紳士奥さんさ。呑んだくれのトムミイ、」さう云ひつゝ遠野静か彼女の洋盃へキュラソウを酌いでやつた。
「あら、ご免なさい。」彼女はさう云つてちよつと道助の方へ頭を下げた。
「そして綺麗な方?」
「君のやうにね。


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