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高知がえり - 寺田 寅彦 ( てらだ とらひこ )

  • 【高知市】*高知市中心部へ車で15分の住宅地
  • 新作♪高知限定♪高知城♪コスチュームキューピー
  • 昭和9年 陸地測量部 『高知』 高知縣 50000/1
  • 高知の研究1 地質・考古篇 高知に興味のある方いかがですか?
  • 5万分1地形図 高知県【高知】昭和61年
  • 昭和14年 高知県 戦前の古い地図+市町村名索引 高知鉄道
  • 高知県 地図 昭和14年 戦前 高知鉄道 省営バス 予土線 大栃線
  • ◎D-64960 国民休暇県・高知 オオムラサキ他 ゆうペーン 2点
  • 高知 地方自治60周年千円銀貨プルーフ+記念切手[Bセット]
  • 特別採集の新蜜★高知県産 百花蜂蜜 はちみつ 1.2キロ 数限定
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 明後日自分誕生日。久々で国にいるから祝の御萩(おはぎ)を食いに帰れとの事であった。今日天気もよし、二、三日前のようにいやな風もない。船も丁度あると来たので帰る事と定める。朝飯の時勘定をこしらえるようにと竹さんに云い付ける。こんどはいつ御出(おい)でかと例の幡多訛(はたなま)りで問う。おれの事だからいつだかわからんと云ったような事を云うてザブ/\とすまし、机の上をザット片付けて革鞄(かばん)へ入れるものは入れ、これでよしとヴァイオリンを出して second position の処(ところ)を開けてヘ調の「アンダンテ」をやる。1st とちがって何処(どこ)かに艶があってよい。袷(あわせ)を綿入に着かえて重くるしいのに裾(すそ)が開きたがって仕方がない。縁側へ日が強くさして何だか逆上する。鼻の工合が変だが、昨日写生で風でも引きやしなかったかしらん。東の間では御ばあさんの声で菊尾さんを呼んでいる。定勝を尋ねて来いといいつけている。着物の寸法も取らねばならんのに朝から何処へいったのかとブツブツ。間もなく菊尾は帰ったが、安田にも学校にも居ませんと云うので、御ばあさんまたブツブツ。そのうち定勝さんが帰った。着物の寸法を取らねばならぬに何処へ行っていたか。この忙しいのにどんなに世話を焼かすか知れぬと頭ごなし。帰って来たとて宅(うち)に片時居るでもなし。おまけに世話ばかり焼かして……。もうそう時々帰って来るには及ばぬ……とカンカン。誰れか余所(よそ)の伯母さんが来て寸を取っているらしい。勘定を持って来た。十五円で御釣りが三円なにがし。その中の銀一枚はこれで蕎麦(そば)をおごろうと御竹さんの帯の間へ。残りは巾着(きんちゃく)へ、チャラ/\と云うも冬の音なり。今日は少し御早くと昼飯が来て、これでまたしばらくと云うような事を云い合うて手早くすます。しばらくすると二階で「汽船が見えました」と御竹の声。奥からは「汽船が見えました。今日御帰りで御ざいますそうな」と御八重(おやえ)が来る。これはちと話の順序がちがっているようだ。料理人篠村宇三郎、かご入りの青海苔(あおのり)を持って来て、「これは今年始めて取れましたので差上げます。御尊父様へよろしく」と改まったる御挨拶で。そのうち汽船の碇(いかり)を下ろす音が聞えて汽笛一声。「サアそろそろ出掛けようか。」「御荷物はこれだけで。」「イヤコレハ私が持って行こう。サヨーナラ。」「また御早うに……。」定勝さんも今日の船で帰校するとて、背嚢(はいのう)へ毛布を付けている。今日は船がよほどいつもよりは西へついている。何処の学校か行軍に来たらしい。生徒浜辺に大勢居る。女生の海老茶袴(えびちゃばかま)が目立って見える。船にのるのだか見送りだか二十前後の蝶々髷(ちょうちょうまげ)が大勢居る。端艇へ飛びのってしゃがんで唾(つば)をすると波の上で開く。浜を見るとまぶしい。甲板へ上がってボーイに上等はあいているかと問うとあいているとの事、荷物と帽を投げ込んで浜を見ると、今端艇にのり移ったマントの一行五、六人、さきの蝶々髷の連中とサヨーナラといっているのが聞える。蚕種(さんしゅ)検査の御役人が帰るのだなと合点がいった。宿の定さんも、二階で泊った女づれのハイカラも来る。


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