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鬼の話 - 折口 信夫 ( おりくち しのぶ )

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  • 死者の書,春のことぶれ 他「折口信夫集」日本近代文学大系46
  • ●歌舞伎●『仮名手本忠臣蔵』演劇界増刊●折口信夫 木村荘八 他
  • ◆:折口信夫全集 第13巻 國文學篇7 中公文庫 初版
  • 「折口信夫全集 第一五巻 民俗学篇1」中央公論社 昭和30
  • 「折口信夫全集 第一巻古代研究(國文学篇)」中央公論社 昭和29
  • ◆:折口信夫全集 第14巻 國文學篇8 中公文庫 初版
  • ◆:折口信夫全集 第12巻 國文學篇6 中公文庫 初版
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     一 おにと神と 「おに」と言ふ語(ことば)にも、昔から諸説があつて、今は外来語だとするのが最勢力があるが、おには正確に「鬼」でなければならないと言ふ用語例はないのだから、わたしは外来語ではないと思うてゐる。さて、日本古代信仰の方面では、かみ(神)と、おに(鬼)と、たま(霊)と、ものとの四つが、代表的なものであつたから、此等に就て、総括的に述べたいと思ふのである。
鬼は怖いもの、神も現今の様に抽象的なものではなくて、もつと畏しいものであつた。今日の様に考へられ出したのは、神自身の向上した為である。たまは眼に見え、輝くもので、形はまるいのである。ものは、極抽象的で、姿は考へないのが普通であつた。此は、平安朝に入つてから、勢力が現れたのである。
おには「鬼」といふ漢字に飜された為に、意味固定して、人の死んだものが鬼である、と考へられる様になつて了うたのであるが、もとは、どんなものを斥(サ)しておにと称したのであらうか。
現今の神々は、初めは低い地位のものだつたのが、次第に高くなつて行つたので、朝廷から神に位を授けられたことを見ても、此は、明らかである。即、神社の神は階級の低いものであつた。土地精霊は、土地関係することが深くなるに連れて、位を授けられる様になつて行つたので、其以前の神と言へば即、常世神だつたのである。
常世神とは――此はわたしが仮りに命(ナヅ)けた名であるが――海の彼方の常世の国から、年に一度或は数度此国に来る神である。常世神が来る時は、其前提として、祓へをする。後に、陰陽道の様式が這入つてから、祓への前提として、神が現れる様にもなつた。が、常世神は、海の彼方から来るのがほんとうで、此信仰変化して、山から来る神、空から来る神と言ふ風に、形も変つて行つた。此処に、高天原から降りる神の観念が形づくられて来たのである。今も民間では、神は山の上から来ると考へてゐる処が多い。此等の神は、実は其性質が鬼に近づいて来てゐるのである。

     二 祭りに出るおに

春の祭りには、一年中の農作を祝福するのが、普通であつた。其には、其年の農作の豊けさを、仮りに眼前に髣髴させようとした。かうした春の農作物祝福の祭りの系統を、はなまつりと言ふ。新・旧正月に通じて、今年の農作はかくの如くある様に、と具体的に示す。此春の祭りには、おにが出て来るのだ。
おには、実に訣らぬ怪物である。出雲杵築の春祭りにも「番内(バンナイ)」といふおにが出て来る。此は、追儺と一緒になつて了うてゐる。歩射(ホシヤ)の神事には、節分の日昏れ、或は大晦日の日昏れに、馬場などに的を造つて、射ることがある。此を鬼矢来の式と称するが、此は逆で、神の来る式におにやらひの式が混入し、村人のおにの信仰変化して結びつき、こんな矛盾した形が出来たのであらう。
社々で行はれてゐる神楽には、鬼が現れてする問答がある。鬼が言ひまかされて逃げて行く処が、神楽の大事な部分である。此考へは、追儺の式と同じであるが、これにも矛盾が沢山ある。歳神と言ふのは、毎年春の初めに、空か山の上かゝら来る神で、年の暮れに村人が歳神迎へに行く。其時には、山の中の神の宿る木を見つけて、其木に神の魂を載せて帰る。かうした意味で、門松行事の行はれてゐる地方が、沢山ある。此時神は、門松に唯一人で載つて来るのではなくて、大勢眷属を率ゐて来るのである。かうした神を祀る処は歳棚で、歳棚の供物には、鏡餅・粢(シトギ)・握り飯等があるが、皆魂の象徴であつたのだ。其数は、平年には十二、閏年には十三である。此は、神の眷属は大勢あるが、一个月に一人づゝ来るものと見て、此習慣出来たのであらう。
信州下伊那郡新野(ニヒノ)では、正月十三日か十四日に、門松と一緒に立てかけておいたにうぎを、をがみ場所に配つて歩く。此をおにきと言ふ。其頃はちようど、歳神を送る日に当るが、其日には鬼が来ると称し、針為事を控へる。此処では歳神は鬼と似た性質を持つてゐて、やはり、眷属を連れて来る。
此と同様な事は、盆にもする。盆棚は事実歳神の棚と同じ意味でする地方がある。精霊・わき・ともと、それ/″\区別して、棚を拵へることもする。盆の変つた行事としては、生御霊行事がある。其は、大きな家の子方に当る人々は、盆の間に其親方の家に挨拶に行く。大きな鯖(サバ)を携へて行き、親方の為におめでたごとを述べるのである。
此式は室町頃から続いたことで、田舎から京へ出たのだらうと思ふ。正月に朝覲行幸をせられるのも、実は此生御霊と同様な行事である。


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